作家の誰かが、「他人に貸した本・CD・金は返ってこないことを覚悟せよ」と言っていました。けだし名言だなと思う次第で、私自身以前購入したCDが見当たらず、買い直したことも度々あるのですが、半年位前に知人に貸して戻ってきた本(引越しの荷造りの最中に発見したらしい)が戻ってきました。
片倉佳史/著・まどか出版 (ISBN:978-4-9442-3534-6)
著者の片倉佳史氏は在台のフリーライターで、元は写真家なんですかね?政治関係にはコミットせず観光系で活躍されているようですが、ちょくちょくお名前は見かけますので、それなりに「営業」が上手いのではないでしょうか。
いつだか桃園機場で購入した『台湾土地。日本表情―日治時代遺跡紀行』(玉山社)という本も氏の著作でしたが、日治時代の遺跡、鉄道、原住民集落がお好みのようですね。
台湾新幹線開業直後の一年前に刊行された本著ですが、台中以南の沿線を中心に、墾丁国家公園や小琉球、南廻線もカバーしています。『地球の歩き方・台湾』で紹介されていないスポットも数多く、旅情をそそられる魅惑的な写真が多数掲載されているのは著者の真骨頂かと思います。
「本書は台湾高鉄を利用して台南や高雄、そして台湾南部をくまなく旅してもらうことを目的に書きました」と前書きにありますが、実際に携行して沿線観光に活かせる一冊かというと、残念ながらそうした実用性には乏しいですね。
各スポットは写真と著者の紹介文から構成されているのですが、地図の類は全く掲載されていません。したがって「バスは町外れに到着します。まずは○○路を目指しましょう」などと言われても??となるのは必至です。不案内な旅行者はそもそも台湾高鉄の最寄り駅や、拠点となるターミナル駅からのアクセスの時点で迷うでしょう(駅前のバス乗り場もあちこち点在してるしなぁ)し、例えば「竹田」「傍寮」「三地門」「萬巒」といったスポットの、最寄りの宿泊拠点が屏東であることを知らなければ計画の立てようがありません。(拠点駅を中心に、周辺のスポットをグルーピングして標準所要時間等のモデルプランを提示しないと、初心者はワケわからんと思います)
取り上げられているスポットは多いのですが、逆にその「欲張りすぎ」が仇となっており、「写真付き紀行文」ともつかない中途半端な仕上がりとなっている感は否めないですね。
実用性という観点に立てば、著者の冗長な解説文より地図等が掲載されている方が遥かに有難い。申し分程度にアクセスも掲載されていますが、あちらのバスはちょくちょくダイヤが変更されます。(パッと見でも何箇所か変更点に気づきました)欄外には「サポーターズボイス」なる著者の取り巻きのコメントが記されています(これがまた押し付けがましい・・・・)が、各交通事業者や行政機関のウェブサイトのURL等(○○郷公所等のHPが結構役立つような)を記載しておく方が有益でしょうね。
台湾といえども中々広く、『地球の歩き方・台湾』に掲載されているスポットを制覇するのも中々難儀です。現地で携行するガイド本を一冊決めて、それをベースにネットであれこれ検索するのが一番かもしれません。何処の国に限らず、こういう〝作業〟がメンドクサイという人もいますが、私的にはこの手の調べ物は楽しいですし、90年代の半ば頃を思えば、画像やら動画やらといった今日のネット環境は天国です。(時間の自由こそ格段に制限されましたが、大概の社会人はそうですね)
自身は何処へ行くのも「自由第一、自分優先」で、緻密な予定を立てないアバウト派ですが、昭和四十年頃のハワイ旅行みたいな一世一代の大投資というわけでもありませんので、まぁ適当でいいかと割り切っております。(弟などは、「そう何回も行かずに、もう少し効率的に回れないの?」と呆れていますが・・・・)
より詳細な地図やガイド本を所望するのであれば、現地の本屋に足を運ぶのが一番でしょうね。
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