私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

馬政権の対日関係には努力の余地あり:池田前交流協会台北事務所長

2008年07月14日 | 台湾

「8年ぶりの政権交代で掌を返すように対日姿勢を変えた台湾」(産経)といったように、聨合号沈没事件を機に日本のマスコミの台湾に向ける視線は明らかに変質したと感じます。先頃退任した池田維・交流協会前台北事務所長に対する自由時報紙のインタビュー記事の邦文訳が掲載されていましたが、氏の本音がうかがえる箇所もあり興味深いですね。

◆日台代表、同時に交代 今後の関係に不安の声も(共同)
◆池田維代表に対する自由時報インタビュー(交流協会)
◆《星期專訪》日本駐台代表池田維:馬政權對日關係 還有努力空間(自由時報)
◆【グローバルインタビュー】政権交代で揺れる対日姿勢 許世楷・台北駐日経済文化代表処前代表(産経)
◆船舶衝突で「政権の危機」 台湾総統(共同) 

(問)貴代表は民進党政権時代に着任し、離任するのは国民党政権となって2ヶ月近く後ですが、この変化、特に台日関係における変化をどう見ますか。
(代表)日本政府は、如何なる政権であろうと、日本と友好関係を築けるのであれば、喜んで協力したいと考えています。台湾は日本にとって重要なパートナーです。しかしながら、一つ言えることは、今回の聯合号事件が発生したのは、新政権となってわずか3週間後であり、我々が難しく感じたことは、台湾のどの部門と話をすれば比較的順調にこの問題を解決できるか分からなかったということです。私は、外交部及び関係部門のそれぞれと会談し意見交換を行いましたが、数日経ってからようやく、うまく協力できるようになりました。3年前、李傑・国防部長と王金平・立法院長が軍艦で尖閣諸島海域に向かった事件を処理したことがあります。当時、我々は多くの水面下の連絡を行うことができましたが、今回は、海釣り船の沈没ということが初めてのことであり、また、新政権発足直後ということもあってか、問題が大きくなりました。
事件発生直後の池田前所長の<孤軍奮闘>ぶりには驚きましたが、DPP政権から一転、対話のチャンネルの不在に相当苦慮された節がうかがえます。 退任の挨拶に訪れた同氏に、馬英九先生は「政権の危機だった」と述懐していたようですが、あの程度の事態の収拾に手間取るようであれば、確かに「政権の危機」かもしれません。池田代表が欧外交部長に述べたように「雨降って、地固まる」結果となれば幸いですが、現時点では何とも言い難いように思います。
(問)聯合号事件では、日本の各主要メディアが馬政府を批判し、中には「中華帝国」、「仇日」といった表現も見られましたが。
(代表)台湾の新政権に対する日本人の見方は確かに多種多様なものがありますし、私は彼らの考え方を理解することができます。しかし、私は現在の馬政権は決して反日ではないと思います。馬総統自身も、自分は決して反日ではなく、知日派、友日派になりたいと述べられました。しかしながら、我々が注意すべきことは、台湾政界の一部には確かに反日的傾向があり、もしもこの問題の解決が遅くなると、台湾の日本に対する世論がますます悪くなるかもしれない、そこで、我々は本件をできるだけ早く処理し幕引きする方法を採り、時間がかかることにより他の問題が発生することを防ぎました。
聨合号事件の最中に何故か大前研一氏と対談していた馬先生ですが、訪台する議員と対談を持つ機会は皆無のようですね。蕭万長副総統が相手しているのがほとんどであり、地方自治体の首長レベルにも時間を割いた陳水扁氏とは対照的です。
先頃訪台した愛知和男衆議院議員の義父にあたる故・愛知揆一元外相が、国連における<中国代表権問題>で最後までROCの立場を擁護した件について林金茎元駐日参事官は、「愛知外相が退場する中華民国の周書楷部長を追いかけ、周部長の右の肩に手をかけて握手を求め、長い廊下のじゅうたんの上を去っていく周部長をいつまでも見送ったことは、佐藤内閣が誠意を持って中華民国の議席を護ろうとした現われであり、ニューヨークにいた日本代表団の綿密な作戦と不眠不休の動きと相まって、戦後の日華関係を論ずるときには特筆すべき事項である」(『梅と桜 戦後の日華関係』)と述懐されていますが、馬先生はその辺の歴史感覚が鈍いのか、そもそも対日関係はどうでもいいのか──国民党ニュースネットワーク(日本語)はたまに更新されているようですが、政権奪還後の対日関係構築の意欲はあまり感じられないですね。 
(問)過去米国及び日本は陳水扁政権に対して挑発しないように要求することで、地域の安定を維持してきました。現在、反対に馬英九政権の中国への進み方が早すぎて地域のバランスを損なっていることを心配していませんか。
(代表)両岸チャーター便や、大陸観光客の開放については、中国と台湾の双方にとって有利であれば、我々には特に意見はありません。しかしながら、中国側はWHO(世界保健機関)においていかなる実質的な妥協を行うのでしょうか。中国は台湾の国交国に対して以前と異なる措置をとるのでしょうか。更に重要なことは、中国の軍拡につき将来変化があるか否かです。中国の軍拡は台湾だけの問題ではなく、日本もその不透明性に対して懸念を表明し続けています。(中略)
民進党政権は、日米安保条約に依拠して、台湾の安全保障問題を考えてきました。現在の国民党政権は、中国との改善を求めるとともに、日本及び米国との関係も重視していますが、私個人としては、現政権がどちらを優先としているのかはっきり分かりません。私が強調したいのは、この地域の安定のための公共財はやはり日米安保条約であるということです。
馬英九の台湾の舵取りが判然としないという懸念が、日米両国の関係者の間で高まっているのは間違いないと思います。台湾への武器パッケージ輸出差し止めの件にしても、北京のロビー活動による<経美制台>の一環でもあります。民用機購入でボーイングに圧力をかけ台北支店閉鎖に追い込むなど、〝微笑外交〟の裏でも北京は詰め将棋で着々と歩を進めているわけですが、台北側の警戒感はあまりうかがえないようです。
(問)中国人観光客の増加は日本人観光客の動向に影響を及ぼすでしょうか。
(代表)その影響については、今後の状況を観察する必要があります。
聨合号事件が日本人観光客の動向に直接的に影響するとは思いませんでしたが、燃油サーチャージの高騰と景気減速懸念で夏場の出足は鈍るでしょう。返還後、中国人観光客が大挙して押し寄せ、日本人向けの二重価格が発覚するなどして渡航客が減少し、SARSで止めを刺された香港という前例がありますが、デスティネーションとしての台湾が<第二の香港>になるかどうかはしばし経過観察が必要だろうと思います。「日本人は中国人観光客との〝呉越同舟〟を嫌う」と懸念を示している業界関係者の声もあるようですが、調子こいて値上げに走ったり、宿の確保が難しくなったりするようだと退潮傾向は続くかもしれませんね。

まぁ、総じて海外旅行には厳しい昨今ではありますが・・・・

    


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