私の「認識台湾」

個人的な旅行(写真)の記録を主眼としつつも、実態は単なる「電子落書き帳」・・・・

中国の軍事力に関する年次報告2008:米国防総省(その2)

2008年03月07日 | 極東情勢(日本とその周辺)

「ビジョンがある人・ない人」(閣下の憂鬱様)というエントリーで、麻生前外相と福田首相の言動が痛烈に対比されています。そういえば、共和党の大統領候補のマケイン氏は<自由と繁栄の弧~価値観外交>への共感を示していたんですよね。一方、政権交代で、同構想から完全に脱落しちゃったオーストラ(コ)リア。新首相は初外遊先に中国を選んでも、東京はスルーですか、そうですか・・・・

◆China Military Report 08(U.S.DEPARTMENT OF DEFENCE)

<Current trends in China’s military capabilities are a major factor in changing East Asian military balances, and could provide China with a force capable of prosecuting a range of military operations in Asia – well beyond Taiwan. Given the apparent absence of direct threats from other nations, the purposes to which China’s current and future military power will be applied remain unknown.>
(近年の中国の軍事力の動向は、東アジアの軍事バランスに変化をもたらす大きな要因となっており、台湾統一はおろか、アジアにおける広範囲な軍事作戦の展開が可能な域にも達しかねない。近隣諸国からの明白な脅威に晒されていない中国が、現在そして将来にわたり、軍事力を背景に何を意図しているのかについては、未だ明らかでない)

冒頭の〝Executive Summary〟(忙しいあなたのための要約)に〝improvements in China’s strategic capabilities have implications beyond the Asia-Pacific region〟と、その思惑をずばり記していながら、何故29頁目で「未だ明らかでない」とうそぶいているのか・・・・むしろ気になるのはペンタゴンの意図の方だわなと苦笑した次第。(単に分担制の連携ミスで、一人がついうっかり真実を書いてしまったか?)
05年の年次報告では、中国が、
(1)〝responsible stakeholder〟として平和的発展を遂げる、
(2)政治・経済・軍事強国化を進め(国威発揚を目的に)膨張主義に走る、
(3)中共の統治能力が綻ぶ局面で(失政そらしの)膨張主義に走る、
──という三つの岐路に差し掛かっていると述べられていました。合衆国は、中国が(1)の道を辿るよう促すのを当面の目標に据えていますが、「中国を平和的に導くという希望は、日米の海防協力によりもたらされる」(ジェームズ・アワー元国防総省日本部長)側面もあるわけですから、中国が道を踏み外す誘惑に駆られないようなヘッジ戦略の再構築、具体的には、法体制の整備等を含め、日本が果たすべき役割の拡大等が求められるのではないでしょうか。(マケイン氏が次期大統領になったら、ここら辺は確実に要求してくるでしょうが、米軍再編や基地移転問題の遅れ等が響きそうだ・・・・)

レポートの終わりでは、中台両軍の戦力比が図表で示されていますが、中国が危険な一歩を踏み出すきっかけとして、
(ア)台湾の正式な独立宣言
(イ)独立へ向けた台湾側の動き
(ウ)台湾の内政に対する他国の介入
(エ)両岸対話が再開する見込みの喪失
(オ)台湾の核武装
(カ)台湾の内政混乱
を挙げ、判断する主体である中国の裁量の余地が広い点を指摘しています。確かに、その時の北京次第といった面もあり、例えば、国連加盟に関する台湾の国民投票を、北京は(イ)とみなして非難していますが、軍事手段に訴えてこれを阻止する可能性は今のところ低い・・・・

中国が軍の近代化に本腰を入れ始めた端緒は、湾岸戦争時に米軍のハイテク兵器を目の当たりにしたことだそうですが、直接的な契機となったのは、やはり96年の台湾海峡危機だと思います。中華帝国主義者にとって、米軍の二隻の空母に前途を阻まれた屈辱は相当なものだったでしょうし、機が熟するまで臥薪嘗胆(日本人なら、こやつらの執念深さがよく解る筈・・・・)といったところなのでしょう。
したがって、(2)こそが北京が目論む筋書きであり、合衆国にとって代わる太平洋の覇者を志向しているが故に、台湾併合に見合う規模を凌駕する異常なペースの軍拡に勤しんでいる何よりの証だと思います。

<China’s near-term focus on preparing for contingencies in the Taiwan Strait, including the possibility of U.S. intervention, is an important driver of its modernization. However, analysis of China’s military acquisitions and strategic thinking suggests Beijing is also developing capabilities for use in other contingencies, such as conflict over resources or disputed territories.>
(中国は、短期的には、米国の介入も含めた台湾海峡での偶発的な事態を想定した軍の近代化を主眼としている。しかしながら、中国の軍事・戦略問題の専門家は、同時に中国が、海洋資源や領海問題を巡る紛争も視野に入れた近代化を推進している点を示唆している)

レポートでは、南シナ海や東シナ海の海洋権益や領海問題を巡る動向についても詳述されており、(近年の外交紛争も含め)日中の対立点についてもかなりの行数が割かれています。「・・・・アメリカはこの報告書の中で、中国の国防費の増大に懸念を示していま~す」といった報道が如何に能天気で、当事者意識を欠くものか・・・・〝information〟の域にすら達していない浅薄な報道内容は、戦前の大本営発表と何ら変わりません。

中国の軍拡を、台湾海峡における対立という域に矮小化するのは、現状から明らかに乖離しています。しっかりとした現状認識に立ち、問題点を変革する積極的な意志を見せないのであれば、日本は第二次ポエニ戦争以降のカルタゴと同じ運命を辿るのではないでしょうか・・・・


中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団



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4 コメント

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そこ、重要ですよね (tsubamerailstar)
2008-03-09 15:51:54
>通りすがり?様

モンデール駐日大使が「尖閣は日米安保の対象外」と発言して大問題になったことがありましたが、ここら辺の紛争に関しては、「領土問題」であるとして、米国が介入しない可能性を考えておかねばならないのは当然必要だと考えます。

そのためにも日本独自の抑止力を持たねばならないと思うのですが。
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Unknown (通りすがり?)
2008-03-08 22:44:03
台湾とか対外侵略の意図がなければ、軍事費の明細をもっとクリアにしろということなのでしょうね。
尖閣も中国は自国領と主張しています。東シナ海の紛争にアメリカが加勢してくれるかどうかは疑問です。いつも質問ばかりですみませんが、ここらへんはどうお考えですか?
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悪乗りが過ぎるか? (tsubamerailstar)
2008-03-08 13:24:54
>A/T様

>ご、ご無沙汰しております~~~。
花粉症とかになってらっしゃいませんか?

こちらこそでございます!
花粉症はおかげさまで平気なんですが、花粉症になったらコンタクトもダメだし、黄砂襲来でたまったもんじゃないでしょうね。(汗)

>小浜市が名前の読みが一緒だからと無責任にオバマ氏を応援しているのも、何だかなあと思います。

長崎の小浜町はいつの間にか雲仙市となっておりましたが。(爆)
まぁ、本選に至っても相変わらずだと、流石に「日本の一自治体がメリケンの特定政党を応援するのはどうよ?」という話にもなるかもしれませんね。
二年後辺りに、ヒラリーが「オバマじゃなくて悪いけど・・・・」とか言いながら、大統領としてやってきたらひっくり返りそうですが。(汗)

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総理が一番大事なのは支那 (A/T)
2008-03-08 12:49:35
日本人の見方が、今やすっかり統一されましたね。
ご、ご無沙汰しております~~~。
花粉症とかになってらっしゃいませんか?

小さい話になりますが。
小浜市が名前の読みが一緒だからと無責任にオバマ氏を応援しているのも、何だかなあと思います。
「一つの中国」を公言している民主の候補を、無邪気に応援する日本人…。
こういうノリ、本当に平和ボケだなと思ってしまいます。
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