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今年の殿野入春日神社春祭りから 中編

2025-04-13 23:14:09 | 民俗学

今年の殿野入春日神社春祭りから 前編より

 「とりさし」については昨年の殿野入の祭りを報告した際に詳しく触れたが、そのあと気がついたが浦山佳恵氏によって長野県内の同様の舞が報告されている。令和元年に発行された『長野県民俗の会会報』42号へ「 飯山市西大滝のサイトロメン」と題して報告されたもので、当時目にしていたが昨年記した際に扱うことができなかった。昨年の夏に久しぶりに桑名川の祭りを訪れて、その際の報告「飯山市桑名川名立神社例祭へ⑥」に桑名川の「サイトロメン」について記したが、桑名川を久しぶりに訪れようと考えた発端には、その後気がついた浦山氏の報告をあらためて読んだことがあった。浦山氏は西大滝の例について報告しているが、栄村一帯のさいとろさしについても訪問したいという思いはある。

 さて、浦山氏はその中で下記に示したような一覧を示している(今回一覧を編集して掲載させていただいている)。まず全国の鳥刺舞を一覧した上で、長野県内の鳥刺舞を一覧化している。浦山氏は報告の中で「元来は本州から沖縄まで各地に分布していたが、現在は見付けるのに苦労するほど稀になっている」と述べている。確かにネット上で検索しても事例はあまり登場しない。昨年も触れた通り、鳥取県における例は文化財指定されていて目立つが、ほかには目立ったものがない。あらためてネット上で検索してみると、浦山氏の一覧にはない鳥刺舞(踊り)として

新潟県岩船郡神林村大山祇神社の鳥刺し舞
伊東市葛見神社の鳥刺し
福井県越前市越前万歳の鳥刺し
伊勢伊雑宮御田植神事のさい鳥刺し
鹿児島県南種子町鳥さし舞

といったところだろうか。かつて各地に分布していたとはいうものの、現状を見る限り稀な舞(踊り)になっている。

 

 

 

 浦山氏の一覧でわかるように長野県内のものは「獅子舞の余興芸」といった主旨のものが多い。ただし、獅子舞の余興芸と言い切って良いのかについてはなかなか難しい。例えば殿野入の例でもわかるように、獅子舞と絡むことはなく、まったく別物として演じられている。ようは獅子舞の余興という設定で良いのか、ということになる。桑名川の祭りでも述べたように、桑名川の祭りでの獅子舞の存在は大きいが、芸能として捉えた際に、サイトロメンはもちろんだが、剣の舞にしてもそれだけで一芸能として存在感が大きい。もちろん桑名川の例では地元の方たちも「余興である」と言われており、舞台芸の余興という捉え方は正しいかもしれない。総合芸能祭化した中で、それぞれは既に単独の芸能として確立しており、「獅子舞の余興」という捉え方は容易にはできない。むしろこの祭りは獅子舞を中心にした祭りなのか、と問いたくなるわけで、とくに殿野入の祭りには囃子も舞台も登場し、それらが練り物として奉納されれば、全体は風流の祭りとも捉えられる。

 さて、「とりさし」については長野県内をみてもこれ以外にもかつてはあったと思われる、あるいは獅子舞の余興という捉え方をすると現在も残っているものがいくつかあると思われる。そのあたりを今後も注意深く探っていきたいと思っている。

続く


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