ハリソンさんはカノ紳士 ーフランス通過編 ー(後半)

今は昔の18世紀欧州が舞台の歴史大河ロマン。

ジョン・セルデンって、どんな人だったのだろう?

2021年12月05日 | 各話末エッセイ



【各話末エッセイ③−1】


 ジョン・セルデン(1584〜1654)という人物、
「トリストラム・シャンディ」4巻29章で、ただ一度だけ
名前が出て来ます。

 シャンディ家滅亡の要因が付け足されて行く中、
取り消せる知恵は無いのか?
ウォルターとトゥビー兄弟は識者達が参加する
とある宴会に出席して意見を聞こうとします。

 しかし、識者達の意見は的外れのまま。
話題は法律方面へと流れて行きます。
遂には親子間の血縁関係についての激論となり、

「近過ぎる親等間での婚姻は自然の掟では許される」
「故に自分の祖母との間に子を産ませる事も可能だ」
「その子供が女児の場合、父親にとっては娘でもあれば母でもある」

…と、こんな仰天発言をする者まで出て来るのでした。

 これに対し、
「そんな事を実行する者がいるものか!」と、
当然ながら否定の叫びを上げる者がいました。

 そこへ ▲ 上記の如く、物語の主要人物の一人のヨリック牧師が加わり、最終爆弾をぶち込んで終会へと一気に導いてしまいます。

 祖母との不適切な関係が父に露見した若い男性が、

“ You lay'd, Sir, with my mother, said the ladーwhy may not I lay yours? ”

と言ったという話が、セルデンの書いた本の中にあったそうなのです。

〈近親相関がバレた息子がトンデモ理屈で父親を言い負かす〉のは、中世艶話集(ハリソンさんが22話9ページ目で力説する所の「巷談集」)あるあるパターンのようで、
第24話「悲運の商人アントニオと20個の卵の物語」の元になったフランコ・サケッティ作の「巷談集」中にもあります。もっともこちらの若者の相手は継母でしたが。

 こういう内容が内容なだけに、
セルデンという人物も、件の話があるという「卓上談」も、
とうてい真面目なものでは無かろうと思っていたのですが――。

 


 

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