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ネットオヤジのぼやき録

ボクシングとクラシック音楽を中心に

女子7冠のアマンダ・セラノ,ヘビー級期待のハンター,リオのメダリストらが競演 - D・ヘイニー VS アブドゥラエフ アンダーカード直前プレビュー -

2019年09月14日 | Preview

<1>9月13日/MSGシアター,N.Y./女子WBO世界フェザー級タイトルマッチ10回戦
王者 ヘザー・ハーディ(米) VS 7階級制覇王者 アマンダ・セラノ(米)



今年1月、ベストウェイト(130ポンド前後と思われる)を10ポンド以上も下回るS・フライ級(115ポンド上限)まで絞り、オーストリアの王者エヴァ・フォラバーガーを初回僅か35秒で撃沈。WBOのベルト奪取に成功し、女子最多となる7階級制覇を達成したアマンダが、126ポンドまでウェイトを戻して、やはりWBOの王座を保持するヘザーにアタックする。

プエルトリコにルーツを持つアマンダは、一家で移住したブルックリン(N.Y.)で育ち、少女時代は水泳に大きな才能を発揮したという。ボクシングと出会うきっかけは、6歳年長の姉シンディ(現役のプロ)が通っていたジムに、ダイエット目的で入門したこと。

後にシンディの夫となるトレーナー,ジョーダン・マクドナルドの指導を受け、本格的にボクシングをやりたいと言い出す。ジョーダンはいきなり先輩格の少年とスパーリングをやらせ、当然のようにボコられたアマンダは、泣きながらシンディと一緒に帰宅。しかしすぐにジムに姿を現し、以前にも増して練習に熱を入れたらしい。

「アマンダの本気度を確認する為に、わざとやったんだ。勿論安全には充分過ぎるほど配慮したし、シンディとも事前に相談していた。水泳で鍛えていたから、基礎体力と運動能力は同年代の子たちと比べても優れていて、申し分が無かった。」

「でも、ボクシングは残酷なスポーツだからね。シンディと私は、彼女が選手を目指すことには反対だった。水泳を続けた方が将来の為になると、そう考えていたんだ。でもアマンダはとても真剣で、言葉だけの説得は難しい。だから始めから無理だとわかり切っている、男の子とのスパーリングをやらせてみた。彼女の気持ちだけでなく、適性(主にメンタル)も確かめる必要に迫られたんだ。」

「殴られて泣くのは仕方がない。問題はその後だ。男の子でも一度痛い目に遭うと、ボロボロに泣いて、それっきりジムに来なくなることが珍しくない。でもアマンダは違っていた。絶対に強くなるんだという決意が、瞳や全身からオーラのように立ち昇っていたよ。向上心が並外れて凄かったね。」




アマチュアでニューヨーク地区のローカルトーナメントを制して、伝統あるゴールデン・グローブスでも優勝。二十歳になっていたアマンダは、プロ入りを決断する。デビューしたのは、2009年3月。フェザー級契約の4回戦で、2-0の判定勝ちだった。

毎月のようにリングに上がり、7月までに4連勝をマーク(2戦目からは3連続KO)。そして8月中旬、2012年開催のロンドン五輪に、女子ボクシングが正式競技として加えられることが公表される。

上り調子のアマンダはこの一報を聞いても、一切動じなかったそうだ。「既にプロとしてスタートを切っている。後戻りは出来ない。」

128ポンド超(S・フェザー級)の調整にチャレンジし、132ポンドの相手と戦った5戦目でドローとなった後、フェザーに戻して2連勝すると、ドローに終わったエラ・ヌネスと128ポンドで2連戦し、無事に白星を重ねて決着(2勝1分け)。

1分けを挟んで連勝を11(7KO)まで伸ばしたアマンダは、2011年9月、最初の世界タイトルを獲得する。テキサス出身のキンバリー・コナーを2回TKOに破り、初代のIBF J・ライト級王座に就く。


しかしこのタイトルは防衛戦を行わず、ノンタイトルを2戦消化(エラ・ヌネスとの4戦目を含む)し、2012年4月(プロ5年目)、2度目の世界戦を迎えた。挑んだ相手は、同じ130ポンドのWBC王者フリーダ・ウォールバーグ(スウェーデン)。統一戦ではなく、IBFのベルトは放棄。勃興したばかりのアマチュアで活躍したフリーダは、2004年2月にデンマークでプロデビュー。

母国スウェーデンが1970年代に入って以降、ずっとプロボクシングを禁止していた為で、翌2005年春までに6連勝(1KO)したが、一度引退。母国がようやくプロ解禁に踏み切ると、2010年9月に再起。9月中に2試合を消化し、11月にはオリヴィア・ゲルーラ(カナダ)を8回判定に下して、WBC S・フェザー級王座を獲得。

翌2011年は9月に行ったオリヴィアとのリマッチ(10回判定勝ち)のみで、2度目の防衛戦に迎えたのがアマンダだった。遥々北欧まで遠征したアマンダは、善戦健闘も及ばず小~中差の0-3判定に退き、プロ初にして唯一の黒星を喫して失意の帰国。




フリーダへの雪辱に燃えるアマンダは、5ヵ月後の2012年9月に実戦復帰。ドミニカで3連勝してWIBA(主要4団体認可以前からある女子の老舗世界王座の1つ)フェザー級王座に就き、2階級制覇を達成。そしてフリーダは1年超のスパンを開けて、2013年6月にストックホルムでV3戦を挙行。

有利の前評判通り優位に展開を進めたフリーダだが、タフなチャレンジャー,ダイアナ・プラザック(豪)の逆襲を受け、第8ラウンドに2度のダウンを奪われKO負け。そのまま昏倒して救急搬送され、開頭手術を受けて一命は取り留めたものの、当然この試合がラスト・ファイトとなった。

過酷で長いリハビリに耐えて回復。恋人との間に子供を授かり、穏やかな日常を取り戻すことができたが、今年2月自宅で倒れて緊急入院。幸いにも事なきを得たが、今もなお、後遺症の恐怖と闘っている。


ターゲットに据えていたフリーダが悲劇に見舞われてから2週間後、地元でKO勝ちを飾ったアマンダは、さらに2つの白星(いずれもKO)を積み上げ、2014年8月、WBO王者マリア・エレーナ・マデルナに、敵地ニカラグァでアタック。首尾よく6回KOに下し、WBOライト級王座を奪取(3階級制覇)。

アマンダは3つ目の王座も防衛せずに返上。130ポンドに戻して連勝を継続。2015年夏には、「ボクシングでも世界王者になれる」と公言していたロンダ・ラウジーに、「だったら私が受ける」と対戦を呼びかけて話題となるも、アマンダの知名度不足(?)により実現に至らず。

2016年2月、フリーダと2度対戦したオリヴィア・ゲルーラに初回TKO勝ち。WBOのフェザー級王者となる。プロ7年目にして実現した、ホームでの世界戦だった。

同年7月にはブルックリンで初防衛を果たし、3ヵ月後の10月、階級を1つ下げてアレクサンドラ・ラザール(ハンガリー)を初回TKOで倒し、空位のWBO J・フェザー級王座を獲得(4階級制覇)。翌2017年1月、ヤスミン・リヴァス(メキシコ)を10回判定に下して、122ポンドのベルトを初防衛するとともに、WBCダイヤモンド王座を獲得。


プエルトリコに本部を置くWBOのバックアップを受け、大胆に階級を上げ下げしながら、多階級を矢継ぎ早に制覇する目論見が成功。ようやく安定的なスポンサーが付くようになり、ホームのN.Y.でWBOのタイトルマッチを立て続けにこなす。

3ヵ月後の2017年4月、さらにウェイトを絞り、ダヒアナ・サンタナ(ドミニカ)に8回TKO勝ち。空位のWBOバンタム級王者となり、女子では最多となる5階級制覇を達成。7月にエディナ・キッス(ハンガリー)を3回TKOに退け、母国プエルトリコに凱旋(J・フェザー級をV2して返上)。

そして本来のS・フェザーで調整試合を行った後、MMAに進出。”女パッキャオが総合に転身”と大きなニュースになったが、「COMBATE AMERICAS」の興行でオクタゴンに登場したアマンダは、コリーナ・ヘレーラを相手にドロー(2018年4月/契約ウェイトは125ポンド)。


MMAへの本格的な継続参戦はなく、ボクシングのリングに戻ったアマンダは、一気に階級を2つ上げてヤミラ・エステル・レイノソ(ニカラグァ)にワンサイドの10回判定勝ち(昨年9月)。WBOのJ・ウェルター級王座を奪取し、6階級制覇に成功。

アイルランドの女帝ケイティ・テーラー(WBA・IBFの統一ライト級王者/現在は主要4団体を完全制覇/14戦全勝6KO)との対戦がクローズアップされる中、一気に115ポンドまで落として7冠を達成したという次第。




我が国にも、自在に階級を上げ下げして5階級を制覇した藤岡奈穂子(竹原&畑山)がいるが、藤岡が5冠を成し遂げたのは2017年12月で、この時点ではアマンダと並ぶ女子の最多記録だった。

藤岡も105ポンドのミニマム級で王者となった後、L・フライとフライをひとっ飛びしてS・フライまで上げているが、アマンダのウェイト・コントロールは常識を遥かに凌駕している。

フェザー級でMMAへのチャレンジを終えた後、5ヶ月の短期間で140ポンド上限のS・ライト級まで増量し(計量は138ポンド1/2)、僅か4ヶ月で115ポンド上限のS・フライ級に落とした後、8ヶ月のスパンが開いているとは言え、126ポンドのフェザー級までアップ。

歴史の浅い女子はまだまだ選手層が薄く、とりわけライト級から上になると、人材難はより鮮明になる。男子に比べて複数(多)階級制覇に挑み易いのは確かだが、ここまで極端な例は他に無い。人智を超える8階級制覇のパッキャオ(減量苦と大幅なリバウンドで知られていた)も、流石に階級を下げることはしていない。

人気と興行の盛り上がりに関する限り、女子ボクシングはMMAに完全に遅れを取っており、ロンダ・ラウジーとの一件を経て一度はオクタゴンに入ったアマンダだが、本気でボクシングを辞めるつもりだったのかどうか。


ヘザー・ハーディの困難な人生と、ボクシングで成功を目指す物語の一端は、以下の過去記事で採り上げているので割愛するが、昨年10月、シェリー・ヴィンセント(米)を3-0の判定に下し、空位のWBOフェザー級王座を獲得。プロ7年目にして、念願の世界王者となった。

※過去記事
<1>何故か気乗りがしないウェルター級統一戦 -サーマン VS ガルシア戦直前プレビュー-
2017年3月4日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/7b18e619811f23368488ac92a2872409
<2>プエルトリコの新旋風マチャドがV2へ/ハーンご自慢の五輪出身組みも勢揃い - デレヴィヤンチェンコ VS ジェイコブス戦 アンダーカード プレビュー -
2018年10月28日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/a0e05a9791e5b59848758ac2fd5d4c6a

ヘザーもブルックリンを拠点に活動を続けてきたニューヨーカーで、ルー・ディベラ(N.Y.を中心にした東部を地盤に活躍する著名なプロモーターの1人)が獲得した初の女子選手として注目を集めている。

「念願だったチャンピオンになった今も、ヘザーは何1つ変わらない。地道なトレーニングに励み、自己管理と節制の日々を過ごす。コーチの仕事も始めて(フィットネス・ジムでボクシングを教えている)多忙だが、愛する家族(シングル・マザー)の為に、どんな時でもしっかり前を向いて、ひたむきな努力を続けている。」

N.Y.の名門グリーソンズジムに通い、ボクシングを本格的に始めた頃から、トレーナー兼メンターとしてヘザーを支え続けたきたデヴォン・コーマックは、堅く厚い信頼関係に結ばれた愛弟子について聞かれると、静かな笑みを湛えて誇らしげに語るのが常だ。




2012年8月にバンタム級でデビューしたヘザーは、S・バンタム級を経て2015年12月以降フェザー級に定着。以来ずっとこの階級で闘ってきた。上述したシェリーの他、アマンダと対戦したエディナ・キッスとも2度ぶつかっていて、いずれも明白な判定勝ちを収めている。

東海岸の新たな顔役として確固たる足場を築いたディベラは、ヘザーに続いてアマンダも傘下に収めており、2人の対決は以前から話題に上ってはいたが、階級を自在に上げ下げして多階級制覇にまい進するアマンダと、フェザー級に定住するヘザーのタイミングを合わせるのが困難で、ヘザーの載冠を待つ以外に無かったようだ。





そしてヘザーもまた総合を経験しており、2017年6月から今年6月まで、ベラトールの興行で3試合を行い、結果は1勝2敗(敗北はいずれもTKO)の負け越し。ヘンゾ・グレイシーがマンハッタンに開いたアカデミーで、柔術とレスリングの技を磨く。6月の3戦目は初回TKOで敗れており、ボクシングの復帰戦でいきなりアマンダの挑戦を受けることについて、悲観的な見方が大勢を占めるのも止む無し。


□主要ブックメイカーのオッズ
<1>Bovada
アマンダ:-2000(1.05倍)
ヘザー:+900(10倍)

<2>5dimes
アマンダ:-1900(約1.05倍)
ヘザー:+1200(13倍)

<3>SportBet
アマンダ:-1795(約1.06倍)
ヘザー:+1305(14.05倍)

<4>ウィリアム・ヒル
アマンダ:1/20(1.05倍)
ヘザー:9/1(10倍)
ドロー:25/1(26倍)

<5>Sky Sports
アマンダ:1/16(約1.06倍)
ヘザー:7/1(8倍)
ドロー:33/1(34倍)


大きくかけ離れたオッズは、3ヶ月前のMMAでの敗戦に加えて、30代半ばを超えたヘザーの年齢も無関係ではないが、両選手のこれまでの実績と実力に対する冷静な判断だとも言える。

アップライトに構えたオーソドックス・スタイルから、基本通りにジャブを突いてワンツーにつなぎ、フック,アッパーを返す正攻法のヘザーは、ジャブで距離をキープできないと試合が膠着し易い。

拳の位置が低くワイドオープンなガードで、見切りとボディワーク主体のディフェンスも、不安と懸念を抱かせる要因。けっして非力ではないし当て勘も悪くないのに、意表を突くムーヴや駆け引きが少なく、スピード&キレの不足(平均的な女子の王者とランカー相手なら問題はない)がKOの少なさにつながっている。


対するアマンダは、傑出したスピード&シャープネスが最大の特徴。コンパクトにまとまめたガードから鋭いリードとワンツーを放ち、上体を柔らかく使いながらプレッシャーをかけて相手を追い込む。

カウンターのタイミングと、上下に打ち分けるコンビネーションも申し分がなく、女子離れした身体能力と技術の高さは、かつてのルシア・ライカを彷彿とさせる。小さからぬ体格差のハンディを超えて、ケイティ・テーラーとの対決に熱い期待が寄せられるのも半ば当然か。

近めのミドルレンジで完全に足を止めた状態で、バチバチのしばき合いをやればヘザーにも充分チャンスはあるけれど、攻撃的ではあってもクレバーなアマンダが、易々とヘザーの術中にはまる可能性は低い。

極端なウェイトの増減によるコンディショニングへの不安は皆無ではないが、7~8割方の仕上がりなら、アマンダが大半のラウンドを支配して3-0の判定を得るだろう。万全の状態なら、中盤までのTKOも有り。

大番狂わせがあるとすれば、アマンダの調整失敗か、油断によるまさかの1発ぐらいしか思い浮かばない。


◎ハーディ(37歳)/前日計量:125ポンド1/4
戦績:22戦全勝(4KO)
アマ戦績:不明
2011年ニューヨーク・ゴールデン・グローブス優勝(フェザー級)
身長:165センチ,リーチ:163センチ
右ボクサーファイター

◎セラノ(30歳)/前日計量:125ポンド1/4
元IBF J・ライト級(V0),元WIBAフェザー級(V0),元WBOライト級(V0),元WBOフェザー級(V1),元WBO J・フェザー級(V2),元WBOバンタム級(V0),前WBO J・ウェルター級(V0),前WBO J・バンタム級(V0)王者
戦績:38戦36勝(27KO)1敗1分け
アマ戦績:不明
ニューヨーク・ゴールデン・グローブス優勝
エンパイアステート・トーナメント優勝
スタテンアイランド・トーナメント優勝
※階級:フェザー級
身長,リーチとも166センチ
左ボクサーファイター




□オフィシャル

審判団:未発表

立会人(スーパーバイザー):セイモア・ジヴィック(米)

ジヴィック(Seymour Zivick)は、ゲイリー・ショウ(プロモーター)の下でマッチメイカーをしていた人物で、調べてみたら、2015年8月のアヴ・ユルドゥルム VS グレン・ジョンソン戦から、今年1月のヘイニー VS オソリャニ・ヌドゥゲニ(Xolisani Ndongeni/南ア)戦まで、WBCのタイトルが懸けられた4試合の立会人を勤めていた。

昨年6月のクリスティーナ・ハマー VS トーリ・ネルソン戦(女子ミドル級WBC・WBO統一戦)を除く3試合は、いずれもWBC直轄のローカル王座戦で、男子の世界(暫定)戦は今回が初めてになる。

リニューアルされたWBCの公式サイトには、以前のように幹部や役員を一覧できるページが無くなってしまい、ジヴィックがどんな役職に就いているかは不明。また、何時マッチメイカーから足を洗い、WBC(あるいはWBCの下部組織)の役員に転身したのかもよくわからない。

2012年~2013年頃までは、自ら交渉に当たった試合の現場に姿を見せていたし、国際ボクシング殿堂やBWAAの表彰イベントにも、ゲストとして呼ばれたりしていたが。


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<2>WBAインターコンチネネンタルヘビー級タイトルマッチ12回戦
王者 セルゲイ・クズミン(ロシア) VS マイケル・ハンター(米)



ロンドン五輪代表からプロ入りしたハンターは、アル・ヘイモン肝煎りのPBCで重量級の看板を期待されたプロスペクト。父のマイクもクルーザー級とヘビー級のプロボクサーで、80年代半ば~90年代半ばまでのおよそ10年間に渡って活躍し、26勝(8KO)7敗2分け1NCのレコードを残して引退した。

フランソワ・ボタ(南ア)やブライアン・ニールセン(デンマーク)との対戦経験(いずれも黒星)があり、キャリア晩年のピンクロン・トーマス(元WBAヘビー級王者)とドワイト・ムハマド・カウィ(元2階級制覇王者)から挙げた白星が最大の勲章。



自らが果たせなかった世界王者の夢を愛する息子に託した父は、2006年2月、私服警官に銃撃されて亡くなった。当初警官はマイクが拳銃を所持しており、発砲してきた為に仕方なく撃ったと証言していたが、後にウソであることが判明したとされる。


父はトレーナーやマネージャーではなかったが、マイケル自身は「今の私があるのは、すべて父のおかげ。」と話す。「国を代表してオリンピックに行けるなんて、思いもしなかった。必ずやチャンピオンベルトを獲り、父に捧げることが最大の夢であり目標だ。」

2013年3月のデビューから2015年の始めまでヘビー級で戦ったが、同年6月以降クルーザー級に階級をダウン。大型化した現在のヘビー級では小柄な部類になり、サイズの不利を実感したのだろう。

2017年4月にメリーランド州オクソンヒルで、WBO王者だったオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に挑戦したものの、大差の0-3判定負け。昨年4月の再起戦でヘビー級に出戻り、5連勝(4KO)をマークして復調の途上にある。


エディ・ハーンのプロポーザルを受けて、今年4月に正式契約を発表。小回りと機動力はまずまずだが、1発の破壊力は今1つ。攻防の基本が身に付いたローカルランクの中堅以上になると、強振を繰り返しても容易に崩し切れない。

ノックアウトへの執着を捨てて、当て逃げの判定勝負上等とを割り切れれば、デヴィッド・ヘイ(英)に近い存在感を発揮できそうな気もするが、今のところモデル・チェンジの気配は無し。



「タイトルマッチの機会さえ与えられれば、今すぐにでもマイケルはチャンピオンになれる。ディオンティ・ワイルダー,アンディ・ルイス,アンソニー・ジョシュア・・・相手は誰でもいい。マイケルに必要なものはチャンス。それだけだ。」

「セルゲイ・クズミンは手強い。頑健なフィジカルとパワーだけが取柄のノロマじゃないんだ。彼には確かなテクニックと豊富なアマ経験がある。簡単な試合にはならないが、ハードなキャンプでしっかり仕上げてきた。どんな展開になっても対応できるよう、マイケルの準備は万端だ。」

ヘビー級に復帰する際、新たなチーフとしてチームに招かれたハシム・ラーマン(レノックス・ルイス相手に超特大のアップセットを引き起こした元王者)は、N.Y.デビューに向けた幾つかのインタビューでハンターの今後について聞かれ、胸を張ってそう答えている。


ロシアのトップ・アマ,クズミンは、2014年11月のプロデビュー以来、比較的早い時期から王国アメリカのリングを経験。2017年以降主戦場を米本土に移し、マルコム・タンやデヴィッド・プライスをKO。バッティングで負傷ドローに終わったアミル・マンスール戦では、ドーピング違反が発覚してNCに変更されたが、クズミン自身は意図的な薬物使用を今に至るまで否定。

サイズとしては平均的なヘビー級で、240~250ポンド超の重量を身にまとう。2メートル級の巨人たちと渡り合う為に、止むを得ないと判断しての増量なのだろうが、見た目とは裏腹なハンドスピードはともかく、機動力の低下は如何ともし難い。

意外にも(?)前評判ではハンターが優位に立っているが、クズミンとの体格&パワーの違いを攻略するだけのモビリティを、フルラウンズに渡ってハンターが維持できるのかどうか。


クズミンをサポートするゲンナジー・マシァノフ(ドミトリー・ビヴォル(ビボル)を育成したベテラン・トレーナー)は、まるで古武術の達人を思わせる風貌で、「難しい試合になるだろうが、最後は技術と経験の差が出る。勝利は我々の手中にある。」と語り、落ち着いた佇まいの中にも静かな自信を漂わせ、いぶし銀の味わいを醸し出す。



ハンターの動きをクズミンが体力差で抑え込み、キツいプレスで消耗を誘って、中差程度の判定で押し切る公算が大・・・という気もする。


◎クズミン(32歳)/前日計量:258ポンド1/4
戦績:16戦15勝(11KO)1NC
アマ通算:227勝23敗
2011年世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)初戦敗退
2013年欧州選手権(ミンスク/ベラルーシ)銀メダル
2010年欧州選手権(モスクワ)金メダル
ロシア国内選手権
2014年:3位,2012年:2位,2011年:優勝,2009年:3位
※階級:S・ヘビー級
身長:193センチ,リーチ:192センチ
右ボクサーファイター

◎ハンター(31歳)/前日計量:221ポンド1/4
戦績:18戦17勝(12KO)1敗
アマ通算:不明
2012年ロンドン五輪ヘビー級代表(初戦敗退)
2007年世界選手権(シカゴ)S・ヘビー級ベスト8
2012年全米選手権優勝(ヘビー級)
2011年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝(ヘビー級)
2011年全米選手権優勝(S・ヘビー級)
2007年全米選手権優勝(S・ヘビー級)
2006年ジュニア世界選手権(アガディール/モロッコ)銅メダル(S・ヘビー級)
身長:188センチ,リーチ:202センチ
右ボクサーファイター




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アイリッシュのS・ライト級,ローレンス・J・フレイヤース(11勝1敗)、軽量級(S・バンタム~フェザー)で活躍が期待されるダレン・カニンガム(10戦全勝5KO)、ニュージャージー出身のS・フェザー級,レイモンド・フォード(3戦全勝)らが前座を固める。



WBA・IBF統一王者ダニエル・ローマンの左肩負傷により、世界タイトルへの指名挑戦が吹っ飛んだムロジョン(ムロドジョン)・アフマダリエフ(ウズベキスタン/リオ五輪バンタム級銅メダル)が、差し替えとなった8回戦でプロ7戦目のリングに上がる他、同じリオのウェルター級で金メダルを獲得したダニヤル・イェレゥシノフ(カザフスタン)も、プロ8戦目(8回戦 or 10回戦)に臨む。



ブルックリンの出身で、N.Y.ゴールデングローブスを制したライト級ホープ,クリスティアン・ベルムデスが、4回戦でプロデビュー予定。