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ネットオヤジのぼやき録

ボクシングとクラシック音楽を中心に

135ポンドの国内トップ,吉野がシャクールとの一騎打ちへ・・・?

2023年01月14日 | Boxing Scene

■4月8日/WBC世界ライト級挑戦者決定12回戦(交渉中?)
2階級制覇王者/WBC3位 シャクール・スティーブンソン(米) VS WBC5位 吉野修一郎(三迫)

ライト級で載冠を目指すシャクール・スティーブンソンが、4月8日に予定されている次戦で、国内トップの吉野修一郎と対戦・・・!?。

一昨日から昨日にかけて、ESPNを始めとする在米専門サイトや、マイケル・ベンソン(talkSPORT.comに記事を寄稿する著名なボクシング・ライターの1人)のTwitterなど、複数のメディアとSNSに交渉が最終段階に入っていると報じられた。

4つのベルトを占有するデヴィン・ヘイニー(エディ・ハーン率いるマッチルームUSA傘下)は、昨年10月に無事復帰戦を終えたロマチェンコ戦の折衝が継続中と伝えられており、統一チャンピオンとのマッチメイクは一筋縄ではいかないだろうが、一応WBCの指名挑戦権が懸けられる。


この記事をアップする時点で正式決定のリリースには至っていないが、シャクールを保有するトップランクとタッグを組むESPNが、「finalizing April 8 fight」と報じたことから、ほぼ確定したと考えて良さそう。

村田諒太を禅譲した一件(三迫→帝拳への移籍)でわかる通り、トップランクとの協議は帝拳を間に挟んで行われている筈だから、話し合いそのものは順調に進む。開催地と会場も明らかにされていないが、九分九厘米本土内で妥結する。


◎関連記事&ツィート
<1>Sources: Shakur Stevenson, Shuichiro Yoshino finalizing April 8 fight
2023年1月12日/ESPN:マイク・コッピンガー(Mike Coppinger)
https://www.espn.com/boxing/story/_/id/35426536/sources-shakur-stevenson-shuichiro-yoshino-finalizing-april-8-fight

<2>Shakur Stevenson On Potential Opponent Yoshino: We Know He Got Power, He’s Tough
2023年1月11日/Boxing Scene:キース・アイデック(Keith Idec)
※Boxing Sceneのシニア・ライター(USAトゥデイ,PBC等にも寄稿)
https://www.boxingscene.com/shakur-stevenson-on-potential-opponent-yoshino-we-know-he-got-power-hes-tough--171746


◎マイク・コッピンガーのツィート
※ESPNのシニア・ライター(リング誌,USAトゥデイ,The Athletic等にも寄稿)


◎マイケル・ベンソンのツィート


アマ時代に完成させたディフェンシブなタッチスタイルに閉じこもるシャクールは、2階級制覇を懸けたジャーメル・ヘリング戦で、積極的に前に出てプレスしながら強打を放ち、「遂に覚醒したか?」とコアなファンを大いに沸かせた。

だがしかし、ドーピング違反騒動に揺れたオスカル・バルデス(WBC王者)との統一戦で、安全第一の省エネ・ボクシングに逆戻り。肩透かしを食らったファンの期待は、文字通りのぬか喜びに終る。

そのバルデスに半年早くアタックして完勝(130ポンドのWBC王座戦)したにもかかわらず、クレイジーなスコアリングによってベルトを獲り損ねたロブソン・コンセイソン(ブラジル/リオ五輪金メダル)とのS・フェザー級ラストマッチでは、確信犯のウェイト・オーバー(+1.6ポンド)込みで大差の3-0判定勝ち。


2008年の北京大会を最後に、AIBA(アマの統括機関/現在の呼称はIBA)は、象徴とも言うべきタッチ・ボクシングからの脱却に舵を切り、ロンドン大会に合わせて積極的なインファイトを奨励するようになった。

露骨な先行逃げ切り(タッチ&ラン)全盛の時期を含め、アマで長く活躍したコンセイソンは、AIBA(現在の呼称はIBA)の国際ルール変更に上手く順応したが、プロ転向後はさらに積極性を増して、自ら打ち合いを仕掛けてKO(ストップ)を狙う好戦的なスタイルを志向。

アマとは対照的にディフェンシブなポイント・ボクシングが幅を利かせる今のプロなら、より慎重な安全策を採るのが賢いやり方だと誰もが思う。

クリンチ&ホールドで接近戦を潰し、好きなように理屈を後付けできるペースポイントを頼りに、相手の打ち終わりを狙って単発のタッチを繰り返しながら、慎重かつ着実にラウンドをまとめて行く。

コンセイソンも「タッチスタイルならお手の物」の筈だが、「プロ向き」を意識しているのか、それともこれがご本人生来のお好みなのか、倒して勝つへのこだわりを見せてきた。


けれども、シャクール戦では一転して圧力を受け続け、後退を余儀なくされ続ける。動き出しを完全に読まれて、遠めのミドルレンジにポジションを取ったシャクールは、軽いステップバックで難なくコンセイソンをいなし、鋭い左右を返して距離を制圧。

強気のコンセイソンが思うように前に出られず、ヘリング同様後手を踏み続けるのだから、シャクールのムーヴィング・センスとインサイドワークがそれだけ秀逸なのだと判断するしかない。

フルスウィングしないからわかりづらいだけで、見た目以上にパンチのキレと威力もあるのだろう。


勿論、シャクールは無理をしてまで詰めようとはしない。セーフティリードを確保してゴールテープを切ることに、何の違和感も問題も感じていない。

プロに求められるスタンダードが20世紀とはまるで違ってしまった現在、「倒し切って勝つ」ことへの執着はもはや愚かな戯言と捉えるべきで、「完全決着」の持つ意味も様変わりしてしまった。

吉野に比べてサイズで劣るシャクールは、十中八九安全策を徹底してくる。リターンをカウンターで完全に効かせることができれば別だが、吉野に反撃する力が残っている間は、強引にフィニッシュに持ち込もうとはせず無理を慎む。


最終的な合意を報じられてはおらず、土壇場で引っくり返る可能性もまだあるけれど、このまま妥結に至った場合、吉野の勝機を見い出すのは困難を極める。

ゴロフキン VS 村田戦(昨年4月)のアンダーで伊藤雅雪(元WBO J・ライト級王者/伴流→横浜光)に引導を渡し(11回負傷判定勝ち)、11月には中谷正義(井岡→帝拳)を6回でTKO。

吉野より前に伊藤をジャブ&ステップワークで捌いたワタナベジムの三代大訓(みしろ・ひろのり)がまだ残っているが、テオフィモ・ロペスへの大善戦(初渡米)が認められ、フェリックス・ヴェルデホ(殺人の容疑で逮捕収監)戦の大金星(9回逆転TKO)を経て、ロマチェンコとも拳を交えた中谷を倒したことで、名実ともに135ポンド国内最強を証明したと評していい。

どれだけ不利を喧伝されたとしても、このチャンスをみすみす棒に振る訳もなく、意気揚々と渡米(現時点で開催地は未定)に応じる筈。

ヘリングやコンセイソン、バルデスらが掴み(踏み)切れなかった「相打ちのタイミング」を、吉野に見極めてくれと望むのは暴論かもしれないが、万が一にも(失礼)右を相打ちできたら、勝負がどう転んだとしても驚きはしないのだが・・・。


◎スティーブンソン(25歳)
WBO J・ライト級(V2/はく奪:体重超過による失格),WBC S・フェザー級(V0),元WBOフェザー級(V0)王者
戦績:19戦全勝(9KO)
世界戦:4戦全勝(1KO)
現在の世界ランク:WBAライト級5位・WBC3位・IBF5位・WBO2位
アマ戦績:詳細不明
2016年リオ五輪バンタム級銀メダル
2015年ユース全米選手権(18歳以下対象)バンタム級優勝
2014年ユース世界選手権(ソフィア/ブルガリア)フライ級金メダル
2014年ジュニアオリンピック(ネバダ州リノ)フライ級優勝
2014年ユースオリンピック(南京/中国)フライ級金メダル
2013年ジュニア世界選手権(キエフ/ウクライナ)フライ級金メダル
2013年ジュニア全米選手権フライ級優勝
身長:170(173)センチ,リーチ:173センチ
ディフェンシブな左ボクサーファイター


◎吉野(31歳)
OPBF(V2),WBOアジア・パシフィック(V3),前日本ライト級(V7/返上)王者
現在の世界ランク:WBC5位・IBF13位・WBO7位(WBAランク外)
戦績:16戦全勝(12KO)
アマ通算:124戦104勝20敗
作新学院→東京農大
2011年度全日本選手権3位(L・ウェルター級)
国体成年準優勝(2年連続2回)
※2013年東京,2014年長崎(ウェルター級),
2010年~111年台北カップ2年連続銀メダル(L・ウェルター級)
高校4冠(インターハイ,国体,高校選抜)
身長:175センチ,リーチ:173センチ
右ボクサーファイター


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■主要4団体のロジカル(トップ)・コンテンダー(ライト級)

<1>WBA
1位:ライアン・ガルシア(米)

世界ランク:IBF11位(WBC・WBO:ランク外)/リング誌3位
23戦全勝(19KO)/24歳/右ボクサーファイター
メンタルの危機(?)を克服して実戦のリングに復帰したガルシアは、事実上のNo.1と目されるジャーボンティ・ディヴィス(米)とのマッチアップが内定。

<2>WBC・WBO
1位:ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)

世界ランク:/WBA4位・IBF3位/リング誌:P4P7位,階級別1位
19戦17勝(11KO)2敗/34歳/左ボクサーファイター
テオフィモ・ロペスに大番狂わせを許した後、中谷正義をまったく寄せ付けずに9回TKOで退け再起すると、元IBF王者リチャード・コミーにもワンサイドの10回判定勝ち。リマッチを熱望していたテオフィモは、ジョージ・カンボソス・Jr.との初防衛戦を拙攻でしくじってしまう。そして、以前から噂が耐えなかった階級アップ(S・ライト級)に踏み切り、絶対王者の視界から消える。

順調に見えたカムバック・ロードを、ロシアの蛮行が阻む。郷里にほど近いオデーサで従軍した絶対王者は、昨年10月N.Y.の殿堂MSGで無事な姿を披露。激戦区に登場した新たなプロスペクト,ジャメイン・オルティズに苦闘を強いられ、ブランク前とまったく同じパフォーマンスという訳にはいかなかったが、カンボソスを2タテしたヘイニーへの挑戦に向け交渉中。

<3>IBF
1位:グスタボ・ダニエル・レモス(亜)

世界ランク:WBO12位(WBA・WBC:ランク外)/リング誌8位
28戦全勝(18KO)/26歳/右ボクサーファイター(ファイターに近い)
アルゼンチンから突如(?)出現したレモスは、タフなフィジカルと馬力が持ち味。IBFが認定するユース王座と中南米の地域タイトルを地道に防衛しながら、承認料と引き換えにランキングを上昇。今年3月、ルナ・パーク(白井義男や海老原博幸も戦ったブエノスアイレスの伝統ある屋内競技場)にリー・セルビー(英/元IBFフェザー級王者)を招聘して5回TKO勝ち。文字通りの出世試合となったが、リアルなトップクラスとの対戦はまだなく、本当に試されるのはこれから。


◎4団体統一王者
デヴィン・ヘイニー(米)

リング誌王者
29戦全勝(15KO)/24歳/ディフェンシブな右ボクサーファイター
「確かに巧い。でもつまらない。」早くもそんな声が聞かれ始めているヘイニー。

ロマチェンコがフランチャイズ王者(WBC版スーパー王座)へと横滑りしたワン・チャンスを逃さず、エディ・ハーンがセットした正規王座決定戦をモノにしてから早や3年(ザウル・アブドゥラエフに4回終了TKO勝ち)、批判的な意見にも臆することなく、「我関せず」とばかりに安定感に磨きをかける。。

パンデミックによる1年の休止を間に挟み、落日の天才ユリオルキス・ガンボア,我らがホルヘ・リナレス,ジョジョ・ディアス(ロンドン五輪バンタム級代表)を立て続けに破り、3度の防衛に成功にした後、テオフィモから統一王座を奪取したジョージ・カンボソスに敵地オーストラリアで完勝(昨年6月)。再戦条項を行使したカンボソスとのダイレクト・リマッチに応じて再渡豪すると、危なげのない大差3-0判定で返り討ち。

締結に向けて順調な進展が伝えられているロマチェンコ戦をクリアしたその先に、手薬煉を引いて待ち構えるのが、”オレ様キャラ”全開のタンク・ディヴィス。注目の135ポンド最終決戦は、果たしてどんな様相と展開を見せて行くのだろうか。


◎WBA正規王者
ジャーボンティ・ディヴィス(米)

※離反が明らかとなったディヴィスとメイウェザー

世界ランク:リング誌2位(WBA以外の3団体はランク外)
28戦全勝(26KO)/28歳/左ボクサーファイター(万能型)
先週末、エクトル・L・ガルシア(現WBA S・フェザー級王者)を8回終了TKOに下して、”もう1人のガルシア(本命のライアン)”戦へと駒を進めたばかり。

トップランク+ゴールデンボーイ連合運(及びヘイニーを保有するマッチルームUSA)が群雄割拠する135ポンドにおいて、オスカー・デラ・ホーヤ(&アラム)と根深い対立関係にあるPBC傘下のディヴィスが、統一路線に割り込むのは容易ではない。と言うより、ほとんど不可能に近いと表するべき状況だった。

しかし昨年秋、デラ・ホーヤの寵愛を一身に受けるライアン・ガルシアとの激突が具体化。前々から噂になっていたメイウェザー・プロモーションズからの離脱も明らかとなり(年末)、一気に実現へと向かい出す。

最大の障壁となるDAZNとShowtimeの放映権争いも、「円満に解決された(詳細は不明のまま)」と報じられている。ライアン・ガルシアとの注目の一番が本当に実現すれば、ヘイニー(もしくはロマチェンコ)とのライト級最強決定戦も夢物語ではなくなるのだが・・・。


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■2016年リオ五輪バンタム級メダリスト


※リオ五輪バンタム級メダリスト
左から:シャクール(銀/米),ロベイシー・ラミレス(金/キューバ),ムロジョン・アフマダリエフ(銅/ウズベキスタン),ウラディーミル・ニキーチン(銅/ロシア)

全員プロ入りしたリオの覇者たちだが、一早く世界王座に辿り着いたシャクールとアフマダリエフ(28歳/11戦全勝8KO)に対して、デビュー戦を落とす大失態(メキシコ系の無名選手にダウンを喫して4回判定負け=5戦目で再戦・6回判定勝ち)をやらかしたキューバの雄,ロベイシー・ラミレス(29歳/11勝7KO1敗)は、来たる2月3日、空位となったWBOフェザー級王座(S・フェザーに上げて3階級制覇を狙うエマニュエル・ナバレッテが放棄)を、アイザック・ドグボェ(ガーナ)と争う(予定)。

小兵をものともしない強打&スピードで122ポンドを席巻しかけたドグボェ(28歳/24勝15KO2敗)だが、好戦的なスタイル(強気一辺倒)が災いして、ナバレッテ(27歳/36勝30KO1敗)によもやの連敗。126ポンドに転出して現在4連勝(1KO)だが、サイズのディス・アドバンテージに苦しむ。

昨年7月に拳を交えた元ホープ,ジョエト・ゴンサレス(シャクールとナバレッテに完敗)戦も、2-1のスプリットで切り抜ける接(拙)戦だった。持ち前のフィジカルの強さで何とか持ち応えているが、五輪連覇のプライドと意地に懸けるラミレスを捕まえられるかどうか。

ロシア期待のウラディーミル・ニキーチン(32歳/7勝2KO1敗1分け)は、リオで因縁を結んだ(疑惑の判定?でニキーチンが勝ち抜けるもカットによる負傷を理由に準決勝を棄権)マイケル・コンラン(アイルランド)と4戦目(2019年12月)で戦い、10回判定負けで初黒星を献上した後、1分けを挟む4連勝(2KO)。フェザー級での載冠を目座し、復調の途上にある。

WBOのフェザー級タイトルは、ロマチェンコ以降(それ以前のオルランド・サリド,マイキー・ガルシア,ファンマ・ロペスの時代も含めて)、トップランク傘下の有力選手たちによる持ち回りが延々と続いているが、J・ライト級もほとんど似たような状況。

ナバレッテが返上した後、PBC(アンジェロ・レオ→フルトン)に奪われたJ・フェザー級を、”モンスター”こと井上尚弥を擁して奪還する算段・・・?。


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■関連過去記事

<1>シャクールも確信犯の体重超過 - S・スティーブンソン VS R・コンセイソン 直前プレビュー -
2022年9月24日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/482ce7d621a1ab0e05fe1392e0a3fdc4

<2>2冠王同士の統一戦 /”ドーピング違反+地元判定”の汚名返上を期す - O・バルデス VS S・スティーブンソン 直前プレビュー -
2022年4月30日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/046d5a7f1ea1c659338f4fe94b02cc5b

<3>駆け引き上手の新旧黒人サウスポー対決 - ヘリング VS シャクール戦プレビュー -
2021年10月24日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/b73f933bb407531628522489b410ece2

<4>テオフィモ・ロペス,連勝の波に乗るシャクール,復帰途上のディアスらが競演 - クロフォード VS カーン アンダーカードショートプレビュー -
2019年4月20日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/19e32fdaad6dff74df9919594b1c08c9

<5>国内ライト級No.1 吉野登場 /断崖絶壁の伊藤に巻き返しの機はあるのか? - GGG VS 村田 アンダーカード・プレビュー I -
2022年4月9日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/398cc428043dc09e6bcd0646b6e321f0