goo

ブッダ最期のことば

100分de名著『ブッダ最期のことば』が発売されました。このテキストは、NHK・Eテレで毎週水曜日に25分ずつ4回に分けて解説し、100分で読みきるという番組のもの。4月は、花園大学教授の佐々木閑先生による『ブッダ最期のことば』です。これは釈迦の教えが説かれた『涅槃経』の解説です。

 『涅槃経』には、原始仏典で説かれたものと、大乗仏典として成立したものとがありますが、この本は前者です。

 この本は、釈尊が亡くなる三ヶ月前くらいからの旅中の言葉をつづった遺言の教えです。佐々木先生によれば、この内容は、釈尊亡き後の教団のあり方、正しく教えを維持するためのシステムについて懇切に示されたもので、今日までに仏教が存続しているために重要な書であったということです。先生はまた、巻末において「仏教と科学の未来」と題して次のように記述されています。

「釈迦の仏教」の本質は、拝んだり祈ったりすることではなく、教えに従った正しい生活の中に身を置き、自分自身を深く見つめ、煩悩を消していくことにあります。私たちがブッダから学ぶべきものは、不思議な存在を頭から信じる絶対的信仰ではなく、すぐれた自己鍛錬システムによって自分のあり方を転換する方法なのです。

として、ブッダの教えは、神秘的な不思議な力に救済を求めずに、自分の力でなんとかする・・・という、現代の科学的世界観と調和するものであると主張されます。

 また、世界の宗教界は将来、神・天国・地獄といったような外界の超越存在を主張することが難しくなると言い、不思議な世界は「本当は心の中にある」と言うように、教義を「心の中」に落とし込み、次第に一本化されると予測しています。この集束化の先にある宗教の姿を、佐々木氏は「こころ教」と名づけています。そして、この考え方のキーワードが、「心」「命」「生きる」だとし、「命が私の心を生きている」といったキャッチフレーズが、どの宗教でも普遍的に使われる時代が来ると予測されます。

 この「こころ教」の場合、現実に我々を救ってくれると思っていた存在が、本当は心の中の陽炎のようなものだったということで、救済のパワーが格段に落ち、その人の人生を丸ごとすくい上げてくれる宗教本来の力は失われると断言されています。

 それに対し、「釈迦の仏教」は外界の不思議な存在に救われるものではなく、自分の力で世界を正しく観察し、その知見を元にして自力で自己を変える道だと説明します。

 本文によれば、

・・・「釈迦の仏敦」の世界観は初めから、現代の科学的視点と同一平面上に設定されているのです。そういう意味で「釈迦の仏敦」は、これから先も「こころ教」にならない数少ない宗教の一つだと考えることができます。

 そして、

・・・「生きることは苦しみだ」と知った時から、人は他者の苦しみが本当に理解できるようになり、そして深い智慧を働かせることができるようになります。苦しみの自覚が深い慈悲と智慧を生み、それが自己救済への道を開いていくのです。私自身、ブッダとの出会いでものの見方が大きく変わった人間です。読者の皆さんが、ブッダの教えと触れ合うことで、なんらかの「恵み多き人生の糧」を得られますよう、祈念しております。

と、結ばれています。なかなか興味深い見解です。本文では、釈迦の教えは現実的であり、後に説かれた煩瑣な学問的仏教や在家者にとって身近なものへと展開した大乗仏教とは別のものであることを強調されています。 

「釈迦の仏教」

 佐々木先生は、教団初期の教えこそが、釈迦が説かれた真意の教えであるという立場から、パーリ語の原始仏典で説かれた教えを「釈迦の仏教」と呼んでいます。



放送予定 
NHK・Eテレ

  第1回涅槃への旅立ち  4月 1日(水) 夜10時~10時25分
                  再放送 4月 8日(水) 朝6時~ ・ 夜0時~

  第2回死んでも教えは残る4月 8日(水) 夜10時~10時25分 
                   再放送 4月15日(水)朝6時~ ・ 夜0時~

  第3
諸行無常を姿で示す4月15日(水)夜10時~10時25分
          再放送 4月22日(水)朝6時~ ・ 夜0時~

  第4回弟子たちへの遺言 4月22日(水)夜10時~10時25分
          再放送 4月29日(水)朝6時~ ・ 夜0時~

 

 


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« インド仏蹟巡... 箱根駅伝2016 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。