とある寺院の日記。苦労もあれば夢もあります。ごくごくフツウの毎日ですが・・・。
tera日記
十三仏信仰~仏教随話(5)

当寺周辺の集落では、念仏講がさかんです。この地区の寺には各宗派がありますが、宗派の教義に関わらず大数珠で輪を作り、念仏供養を行う習しがあります。これは、近くにある時宗の総本山遊行寺の影響と考えられています。
この念仏会の時に唱えられるのが「南無不動・釈迦・文殊・…」という十三仏です。十三仏信仰は、本地垂迹説※に基づき、先祖供養と結びついて日本で形作られた追善年回供養の形態と言えます。十三仏は本地仏として割り当てられています。この考え方は、中国の十王信仰と結びついたとも言われます。十王を、次の世に生まれる裁きの裁判官(兼検察官)とすれば、十三仏は仏に導く弁護士の役とでも言えましょう。
十三仏のうち、49日までの7仏はインドで行われたもの。100ヶ日・1周忌・3回忌の3仏は中国で付加され、7回忌・13回忌・33回忌の3仏は日本で設定された年回です。
日本ではその他、17回忌と23回忌が加わって十五仏となり、さらに、神道の影響も重なって25回忌、50回忌、100回忌と37回忌を加えて十九仏が設定されるようになりました。なお、27回忌は、25回忌に代わって後に行われるようになったようです。
この十三仏の配列(オーダー)は、なかなか見事です。野球の9人の打順では4番に強打者を配置しますが、十三仏では、2番になんとお釈迦様です。箱根駅伝でも2区はエース区間ですが、10区間中、どこか我慢を強いられる「つなぎ」の区間はできてしまいます。ところが十三仏は、どこにも穴の無い、万全の仏への導き体勢がひかれている布陣です。
1番で、初七日の日に、悟りに至らぬまではここを離れずという不動の心を司る不動明王。そして、2番に世の真理と重要な教えを伝授するお釈迦様。
続いて、文殊菩薩と普賢菩薩様によって知恵と力を授かり、5番手がお地蔵様、三十五日小練忌を担当します。ここで慈悲深い救済の心によって確実に仏の道へと導いていただくわけです。閻魔大王に対する弁護人地蔵菩薩とのバトルは迫力あるでしょうね。
6番に、未来仏弥勒菩薩。仏へ送るしんがりの請願を立てて、広く布施の心を備えてくださり、四十九日大練忌の最終旅立ちへと進みます。
いよいよ、仏への旅立ちをお送りするのが薬師如来。病気・怪我などを治療して万全の手助けをしてくださいます。
卒哭忌(百ヶ日)は涙の卒業式。観音様のお慈悲によって、残されたご遺族のケアも含めて着実に仏への道を進めていただきます。
・・・といったように、そうそうたる布陣です。この後※も阿弥陀様、大日如来様といったエース級が温存されています 仏事の風習は、長い歴史の中で築き上げられた、いくつもの悲しい出来事を乗り越える知慧と心の文化かも知れません。
※本地垂迹説・・・本地としての仏が、神の形として世に現れて人々を救う。神仏習合の論理。
※壱周忌・勢至菩薩・・・・観音様とともに阿弥陀の脇侍として、亡者を先導して
仏の智慧を授けます。
三回忌・阿弥陀如来・・・極楽の教主として、 安らぎの世界(浄土)を
示し、安らかな暮らしを導いていただきます。
七回忌・アシュク菩薩・・・阿弥陀さまと反対の東の浄土の「無動如来」
ともいわれ、
魔を下す強い力を持つ。
十三回忌・大日如来・・・・一切の衆生を見守る天地宇宙の中心であり
全てである太陽に象徴される仏さま。
一切衆生は大日さまの深い優しさと限りない
厳しさに満ちた大いなる懐に抱かれるといわれます。
三十三回忌・虚空蔵菩薩・・・安らぎを与え、 大空の心を授け、理想の姿を
示します。十三佛のしんがりとして登場されます。
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当方でも、以前十三仏について考えたことがあったのですが、ご指摘のようにこの配列は妙ですね。
なお、この記事と直接関係ない内容で恐縮なのですが、拙ブログが開設2周年を迎えました。これも、相互リンクを頂戴している皆さまのおかげでございます。この場を借りて御礼申し上げたいと思い参上いたしました。ありがとうございます。
http://blog.goo.ne.jp/tenjin95/e/3ca487d222fdd6a75553df8659e8b980
駅伝にたとえられると、仏さまのつながりが、生き生きしてきた感じです。
みな、すばらしい、働きぶりで、ベストメンバーですね。
私もオススメに発奮して「300字仏教」にチャレンジしていますが皆様のようにいきません。同じ内容で重複することばかりですが、私なりの見方が少しでも発信できればいいかなぁと思っています。今後ともよろしくお願いします。
いろいろな仏事に関することでも分からないことが、多いです。もう師匠もいませんので、自己流になってしまうことがあります。気をつけたいと思っています。ご葬儀のやりかたは三度ほど師匠からお教え頂き、メモもして頂いたのですが……
十三仏覚えます。
仏事の室中伝法は貴重なものですね。