6月8日『バイキングの日』のショートショート
「今回対談するお相手は、数年前から地球にいらっしゃってるバイキング星人さんです。バイキング星人さん、よろしくお願いします」
「はい、よろしくっ。でもさぁ気になんだよなぁ、そのネーミング。バイキング星人なんて、あんたたちがつけた名前でしょ？われわれにはわれわれの呼び名が・・・」
「ええ、ええ。重々わかっております。でも発音しにくいんだよなぁ。それに地球人にはヒジョーにわかりやすくって」
「みんなカブトをかぶってるし、カブトに角が生えてるし？おまけに筋骨隆々の巨体に毛皮のベストを身につけてるから？問題だよ、それ」
「問題？」
「あんたたちがバイキングと呼んでいる中世北欧民族は、武装海賊集団なんかじゃない。優れた航海術のみならず、世界有数の工芸技術を有した北欧文化圏の人々なんだ。欧州中心部に台頭してきたキリスト教文化圏と対立したために略奪者のイメージが作られたにすぎない」
「ほほう、地球人よりお詳しいですな」
「うむ、wikiで調べたからな。それに、あんたたちのバイキングのイメージなんて、絵本『小さなバイキングビッケ』でステレオタイプ化したもんだムシャムシャ」
「そうなんだ～。日本のアニメが世界中でヒットしましたもんねぇ。確かにビッケのお父さんや仲間たちって、鎧や毛皮着てるし角付き兜だし、髭モジャで図体でかくて頭ゆるいし。あ、聞いてもいいですか？」
「わかることならな。ムシャムシャ」
「食べ放題のことを、バイキングっていうのは？」
「そういうネットで調べられることを宇宙人に聞くなよな～。バイキングってのは、ＯＬとかゴールデンウィークとおんなじ和製英語なの。日本でしか通じないんだよ。北欧式の食べ放題『スモーガスボード』を輸入するとき、それじゃ発音しにくいってんで、北欧っぽくて豪快なイメージの『バイキング』を店の名前に使ったのがはじまりなんだムシャムシャ」
「そっか～、いろいろ勉強になりましたぁ。もうひとつだけ聞いていいですか？」
「今度はなんだ？ムシャムシャ」
「さっきから何食ってるんですか？ムシャムシャって」
「英語で食べ放題ってのは、『All-You-Can-Eat』って言うんだ。『食えるもの全部』！わかりやすいっていうか、まんまっていうかムシャムシャ」
「へぇ～、で？いったい何食って・・・痛～～～っ！」