6月7日『国際親善デー』のショートショート
「あ、母さん、オレだよ、オレ、オレ。元気してた？
何の用って決まってるじゃないか。
今日は母の日だろ。母さんのこと、気になってさ。で、大丈夫？
え？独り暮らしが長くって、最近ボケてきたって？
息子がいたかどうかさえ、わからない？
何それ、困っちゃうなぁ。オレだよ、ヒロシだよ。
ダメ？顔も名前も全然思い出せないって？
しっかりしてくれよ、母さん。
じゃさ、今日、様子見に帰るわ。
でワリいんだけど、ちょっとばかしお金用意しといてくんないかな。・・・いい？
通帳見て確かめる？ああ、頼むよ。・・・え？・・・そんなにあんの？
年金使わずにコツコツ貯めた？好きなだけ使ってくれって？スゴイな、母さん。
ええっと、じゃあ急いでそっち行くから。通帳と印鑑と準備しといて。
頼んだよ、母さん」
数時間後。
「母さん、これ・・・何ってカーネーションだよ。駅前のフラワーショップで買ったんだ。ここ、活けとくぞ。
え？新茶？飲んでみろって、そんなに味、違うわけが・・・美味っ。母さん、美味いな、新茶。
通帳と印鑑？
あ、あんがと。でも母さん、こんだけ全部渡したら明日から困るんじゃないの？心配するなって・・・そんなわけに行かないよ。
困るんだろ？ちゃんと言ってくれよ、親子なんだから。
よくないって。
それよかさ、母さん、昔みたいに膝まくらしてくれよ。えっと、どうだっけ？こうして・・・えっと、こうしてたっけ？
ああ、いい按配だ。
こうして母さんに膝まくらされて、頭撫でられてると、子供に戻ったみたいだなぁ。
なあ、母さん、この家にずっといていいかい？
いたいだけいてもいい？
ありがとう、かあさん。
ああ、気持ちよくって、なんだか眠くなってきたよ。ひと眠りしていいかい？
母さん・・・おやすみ・・・
グ～」
すっかり寝入ってしまった男を愛おしく見つめていたお母さん、笑みを浮かべて舌なめずりをペロリ。