366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

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Trick or Treat?

2012年10月31日 | 366日ショートショート

10月31日『ハロウィン』のショートショート



「Trick or Treat?」「Trick or Treat?」
な、なんでしょう、こんな晩に。子どもたちが家の外でなにやら騒いでいます。しかも、英語。
「なんじゃろう、じいさん。座敷わらしかのう」
「英語を話す座敷わらしは知らんなあ」
心配げに顔を見合わせます。
子どものいないふたりは、ずっとつつましく暮らしておりました。
人から恨みを買うようなおぼえはありません。それが外国キッズに夜襲されるなんて。
「話せばわかるんじゃなかろうか」
「話すもなにも、言葉も通じませんよ」
すると、入り口の向こうから子どもの声がします。
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!ハロウィンだかんな~!」
なんだ、日本語話せるじゃん。
「おじいさん、ハロウィンですってよ。洋風のお祭りですよ」
「はは~ん、あれか?♪ハロ~ウィーン♪ハロ~ウィーーン♪」
「ブッブー、おじいさん、それはウインクの『淋しい熱帯魚』っ」
「子どもの分際で余所様宅に菓子をおねだりとは、不届き千万」
「そういう日なのですよ」
「ならば仕方ない。ふるまうとするか」
ふたりは、家中の菓子を探しました。ところが菓子はおろか、食べ物すらありません。
そうなのです。おじいさんとおばあさんは、とても貧しかったのです。
「困ったのう。子どもたちになんて言おう」
「正直に言っておひきとり願いましょうよ」
「それしかあるまい」
おじいさんが入り口に近づいたときです。
「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ~!」
子どもたちが一斉に言いました。
「それがのう・・・」
ズシ~ン!
地べたが揺れるほどの重い音です。
ズシ~ン!ズシ~ン!
何度も何度も。
うっひゃあ、イタズラってまさか家を壊す気?
「うちに菓子はないんじゃ。でも菓子を手に入れたら、わしらは食わずともおまえたちに」
すると、扉の向こうから子どもたちの声がしました。
「おじいさん、おばあさん、Happy Halloween!」
え?
ふたりが外に出てみると、もうこんなに雪が。
入り口の外には大きな俵が積み重なって。餅やら野菜やら魚まで。
そういえば先日、おじいさんは最後のお菓子を六地蔵にお供えしたような。
おじいさんとおばあさんは、雪の中を去っていく六人の後ろ姿をずっと見守りました。
めでたし、めでたし。で、Happy Halloween! 

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赤い死体

2012年10月30日 | 366日ショートショート

10月30日『宇宙戦争の日』のショートショート



「保安官、あそこでさぁ」
牧場主が指さす先に、死体が転がっていた。
青々と生い茂るティモシーの葉陰に見える赤褐色に変色した塊が見えた。
保安官がサングラスを外し、若い保安官助手と顔を見合わせ肩をすくめた。
並んで丘を下りながら、スカーフで鼻から下を覆う。
すでに腐臭と群がる蝿の羽音が届いていた。
二人は死体を囲んだ。
保安官助手が革ブーツで死体を蹴る。蝿が一斉に舞い上がる。
「今月に入って何件めだ?」
「こいつを入れて五件。死体安置所はもう満席だ」
「臭えだろうな」
「ああ、腐った魚みてえだ」
しかし、いったいナニモノなんだ、こいつら。
レスラーの胴体ほどの、ナマコみたいな胴体。
その一端から伸びたグニャグニャの四本の長い触手。
触手の根元にはヒゲ状の口らしきもの。突出した二つの銀色の目。横一線の瞳孔。
タコそっくり。いや、H・G・ウェルズが発表した『宇宙戦争』の火星人にそっくりだ。
昨年1938年、これを原作としたラジオドラマが放送され、実際のニュース放送であるかのような演出によって全米でパニックが起きた。
宇宙人が圧倒的な機動兵器を用いて侵略行動をする、しかし侵略は地球人の抵抗によってではなく地球の細菌によって頓挫する。
あのラジオドラマは侵略の規模こそ違え、実は本当のニュースだったとまことしやかに噂する連中がいる。
確かに、実際にこの死体を目にすれば信憑性のある話だ。
「やっぱり火星人かねぇ、こいつら」
「さあな。だとしたらなんで一匹また一匹と地球にやって来る?」
「そこ。そこがさっぱりわからない」
二人は腰を下ろし、真正面から銀色の眼を覗き込んだ。
「なんだか、安らかな死に顔だな」
保安官助手の言葉に驚く。保安官もまったく同様に感じていたからだ。
昨年のは侵略かもしれない。だが、生存に適さないとわかった、そのあとの来訪目的は?
もしかしたら。
もしかしたら、火星の連中にとって、地球は『名所』になったのでは? 

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うほうほのつとひ

2012年10月29日 | 366日ショートショート

10月29日『ホームビデオ記念日』のショートショート



「頼む。押してくれ。それが解決の『一つの方法』だ」
「それが解決になるのか?」
「なら、お前が今、一時停止したボタンの隣のを押すんだ。頼む」
「あ、ああ・・・まあ・・・」
「そんなことはどうでもいい。俺をかわいそうと思うか?紙おむつ一個でこのザマだ」
「ああ・・・でもなんでお前と話せる?」
「お前、まさか俺の話をビデオで見ているのか?」
俺は空に向かってしゃべった。
俺を見ているのだ。
男の驚いた声が空からする。
「おい、お前、なんで俺を見ている?なぜ一時停止してない?」
ゆっくりと戻ってくる足音。
トイレを流す音。
フローリングを急ぎ足で歩く音。
場違いな室内の音だけが空から聞こえてくる。
なんだ?
周囲の警察も人形のように動かず、一切の音が消える。
そのとき、ヘリの爆音が消え、回転翼が静止する。
・・・だめだ。逃げ道はない。
見上げると、警察のヘリがホバリングしている。
紙おむつを抱き締めたまま・・・
車からひっぱりだされ、アスファルトに転がされた。
左右に警官のパトカーが横づけして、身動きできなくする。
逃げられない・・・
目の前、大型の貨物トラックが道を塞いでいた。
交差点を突っ切って、そして前方を見ると、ああ、万事休す。
激しい衝撃に耐えながら、ハンドルを握りしめ、アクセルを踏み続ける。
再びアクセルを踏んで交差点を突っ切ろうとしたが、横からパトカーをぶつけられた。
俺は思わず微笑した。
女の子は振り返り、俺の車をキョトンと見ていた。
タイヤは悲鳴と煙を上げ、車体が180°回転した。
ブレーキを思い切り踏み込んだ。
こんな時間に3歳くらいの女の子が歩道を走ってわたっている。
危ない!
俺は慌てて、信号を無視して、ハンドルを右に切った。
だが、道の向こうからもパトカーが数台やって来るじゃないか。
くそっ紙おむつだけは・・・
俺はアクセルをいっぱいに踏み込む。
バックミラーに回転灯がいくつも映って、数台のパトカーに追われているのがわかった。
だが、なんてこった!
そのためにこんな事態を招いたのだから。
今はとにかくこの紙おむつだけは赤ん坊に届けることだ。
俺はパトカーの中でハンドルを叩いて大声で何度も何度も悪態をついた。
たかが紙おむつ1パックのために、警官殺しをしてしまうなんて・・・
俺はアイドリングしたままのパトカーに乗りこみ、紙おむつを助手席に放ると発進した。
それで俺は警官殺しになっちまった。
銃を取り出して威嚇しようとした警察官と揉み合いになり、拳銃が暴発して・・・
だが、間の悪いことにパトロール中の警察官と出入り口でお見合いになっちまった。
仕方なく、万引きした紙おむつを小脇に抱えて店を走り出ようとした。
コンビニに行ってから俺は財布を忘れたのに気がついた。
女房が赤ん坊のおむつが一枚もないとキーキー叫ぶから仕方なく、深夜コンビニに買いに行ったんだ。
紙おむつを一つ、欲しかっただけなんだ。 

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となりの速記

2012年10月28日 | 366日ショートショート

10月28日『速記記念日』のショートショート



他部署との連絡会議に出ていたときのこと。
隣の同い年くらいの社員、メモ帳にひたすらペンを走らせている。その早いのなんのって。
覗き込んでみると、ミミズ文字が並んでいる。あ、これって速記文字だ。
ボクはといえば、今流行りのICチップ内蔵ボイレコで録音中。どうせ会議の要約を作らなくちゃいけない。
ボイレコをスロー再生したり聴き直したりってけっこう面倒なんだよな。
隣のそいつ、発言者が話し始めると同時にダダダッとペンを走らせ、話を区切るとペンも止まる。同時記録ってわけか。
ちょっと羨ましくなってくる。
ボクも速記、習得してみようかな。そんな気持ちがよぎる。
いやいや、待て待て。
国会の議事録も手書き速記が廃止されたって聞いたことあるぞ。キーボード入力に変わったらしい。IT化の波ってわけだ。
いずれ音声認識システムが進歩すれば、音声がそのまま文字化されるようになるだろうし。
ただし、まだまだ時間がかかるらしい。
会議のように複数が話したり雑音が混じったりすると当然ほとんど認識できない。
特定の人物が文節区切りでゆっくり話しかけたとしても、認識ミスが散見する。
日本語って同音異義語がやたら多いのが特色の言語だから、他言語より認識率は落ちてしまうらしい。
そんなわけで、お隣さんの速記もまだまだ実用的なのだ。
会議が終わると、お隣さんがボクをチラリと見て照れ笑いを浮かべた。ボクの視線に気がついていたらしい。
「すごいですね。速記法って身につけるの、難しいんでしょう?」
「いえいえ、基本的にはかな文字を簡略化したものなんです。その基本プラスよく使われる形を増やしていく。楽器を身につける感覚と同じです」
「なるほどねぇ。いずれやはり音声認識ソフトとかに置き換わるんでしょうかね」
お隣さんがニッコリ笑う。
「さあ、それはご自身で確認されては」
そして拳固で頭を軽く数回叩いた。
乾いた金属音がした。 

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惑星テディベア

2012年10月27日 | 366日ショートショート

10月27日『テディベアの日』のショートショート


未知の惑星に、僕とパティは降り立った。
珊瑚に似た植物がユラユラ風になびいている。まるで海底だ。魚一匹見当たらないが。
「まるで龍宮城みたい」パティが顔を輝かせる。
「ここがそうなら君は乙姫様だ」
パティが急に早足で僕を追い抜いて岩に登った。
追いかけて僕も登って、パティの視線の先を見た。
「浦島太郎でも亀に乗って来たの?」僕の軽口をパティが制した。
「何かいる!」
パティの指さす先を凝視して、やっと、その何かを見つけた。
クマだ!
テディベアだ!
生きたテディベアが歩いてくる!
思わず僕たちはクマに向かって手を振って叫んだ。
「お~い!クマちゃ~ん!」
「テディ~!こっちこっち~!」
クマも気がついて僕たちの方に向かって走り出す。可愛らしい脚をチョコマカ動かすたびに、
ピチョ、ピチョ、ピチョ、ピチョ!
まるでアニメのチビキャラの足音みたいな音が本当にした。カワユシ!!
そしてついに僕たちのもとへ。
幼児ほどの大きさの、生きたぬいぐるみ!思わずパティはしゃがんで抱きとめた。
「ああ、夢みたい!わたしのテディ!」

僕たちは探査船にテディを連れ帰った。
パティはテディを抱きしめて眠った。
「おとなしくて愛くるしくて、理想のペットだわ!」
「僕たちの星に連れ帰ったら大ブームになっちゃうね」

数日後、決して僕たちの都合どおりにいかないことがわかってきた。
テディは、日一日と急速に成長するのだ。あっというまにパティの身長を追い越してしまった。
さらに、2メートルほどの大きさになったテディは繭を張ってサナギになったのだ。
そして、一週間後に孵化した。現れたのは巨大シャコみたいな怪物だった。

ビギギギ!
エビのような脚で、パティの頭をつかみ、イソギンチャクの触手みたいな口に送る。
「バケモノ!パティをはなせ!」
僕は銃を撃ちまくって怪物を退治した。
「パティ、大丈夫か?」
「ええ・・・ありがとう。テディがこんな怪獣になるなんて。あんなに可愛かったのに」
「これもきっと進化さ。力のない子供のうちは、ひたすら愛らしい形態で攻撃を避けるって寸法さ。宇宙は広い。こんな生物がいても不思議じゃない」
ジューサーミキサーに入れたみたいにグチャグチャになった怪物の死体を見下ろし、僕はパティの震える肩を抱き締めた。

1902年秋、ルーズベルト大統領は趣味の熊狩りに出掛けた。同行のハンターが怪我をした子熊を追いつめ、とどめを大統領に頼んだ。大統領は「怪我をした子熊を撃つのはスポーツマン精神にもとる」と拒絶した。このエピソードに因み、ルーズベルトの愛称テディが子熊のぬいぐるみの愛称となったのである。

 

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サーカスの夜

2012年10月26日 | 366日ショートショート

10月26日『サーカスの日』のショートショート



灰色の老熊が玉乗りをする。火のついたリングを虎がのそりとまたぐ。
動物たちの荒い鼻息がここまで届く。
これがサーカスなんだ。
こんな田舎町にサーカスなんて滅多に来なかったから、職場で手に入れたチケットを父が意気揚々と見せた時は大喜びしたっけ。
でもワクワクしてたのは、サーカスの大テントを見上げてショーを心待ちにしている時までだった。
動物たちは毛並みが悪く動きも鈍かったし、象なんてシミだらけでヨボヨボだった。
カーニバルみたいなキラキラ衣装の女たちも、疲れを隠した白粉の仮面を着けていた。
小柄のピエロたちが面白がって尻を蹴りあってたけど、しつこくって退屈なだけだった。
ショーは中盤、バイクの曲乗り芸になった。バイク数台が金網の球体の中を縦横無尽に走り回る。
轟音、そして油と排気ガスの臭い。これのどこがどんなふうにすごいんだろう?
今、この時間にやっている大好きなテレビ番組を思った。いつになったらショーは終わって家に帰れるんだろう。
クライマックスは空中ブランコだった。ピチピチの衣装をつけた男女が台座から台座へとブランコで移動する。
幼さの残る華奢な娘が混じっている。膨らみきらない胸元の陰翳が眩しい。
そのうち、ブランコからブランコへと飛び移る芸になった。それからコンビの手から別の手に飛び移る芸へと。
ドラムロールが煽るので見せ場なんだとわかるけれど、テレビでもっと難しい回転技だって見たことがある。
いっそ。
いっそ、テントの下に張りめぐらした事故防止のネットがなければスリリングなのに。そんなことを思ってしまった、そのとき。
大観衆の尋常ならないどよめき。え?何?
空中ブランコ乗りの男のたくましい腕から、女の手が滑ってしまったのだ。あの娘だ。目を見張る男と女の形相で、ただならぬ事態だとわかった。女がスローモーションで落下していく。ネットが裂けて地面に叩きつけられる。骨の砕ける鈍い音がはっきりと耳に届く。
華奢な腕も足も曲がるはずのない方向に曲がって、糸の切れたマリオネットみたいじゃないか。
ああ、ひどい。
サーカス一座が女の周りに勢ぞろいする。大団円を彩る音楽が最高に盛り上がる。やんや、やんやの拍手喝采。
グチャグチャの娘が顔をあげてボクにウインクする。
ボクはもうテレビ番組のことなんかどうでもよくなっていた。 

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おのれのリングで散れ

2012年10月25日 | 366日ショートショート

10月25日『民間航空記念日』のショートショート



「ねぇ、刑事さん、刑事さんは勤めて長いの?」
隣から大泉滉そっくりの祈祷師に声をかけられた蟹江敬三そっくりの男は眠っているふりをした。
「刑事さんくらいの年だと、『太陽にほえろ!』とかの刑事ドラマに憧れて、その仕事を選んだんだろうねぇ」
刑事は不愉快そうに寝返りを打つふりをして窓側を向いた。
「やっぱりさ、刑事ドラマの最大の見せ場ってのは殉職シーンだよねぇ。『何じゃこりゃああ~』みたいな」
確かに若い頃はマカロニやらジーパンに憧れた。命がけで犯人を追いかけ殉職してもいいと思った。
だが、現実はドラマとは違う。
「役者さんがさあ、舞台の上で死にたいっていうじゃない?アレって見上げた役者魂だねぇ」
病と闘いながら公演を続けた名優宇野重吉を思い出した。
「不治の病に冒された映画俳優が鬼気迫る演技を残してこの世を去った話とかさ」
『イル・ポスティーノ』って映画、死を覚悟した俳優が生命をかけて完成させたとか。
「リングで灰になっちまった矢吹ジョーだって永遠のヒーロー、ね、刑事さんも職務を全うして死ねたら本望だと思わない?」
我慢できずに振り返り、祈祷師を睨めつけた。
「いい加減黙らないか。今、俺は詐欺容疑の祈祷師を連行中だ。容疑者と話さないこと、それが俺が職務を全うすることだ」
祈祷師は肩をすくめた。
「はいはい、ごめんなさい、ごめんなさい」
しばし沈黙。それでいいんだ。刑事は窓外に広がる雲海をながめた。
おや?祈祷師が首の大数珠を外して揉みながら、ムニャムニャ一心に祈っているではないか。
「おい、変なマネはやめろ」
「だって刑事さん、あたしの祈祷はインチキなんでしょ?何にも起こりゃしませんよ」
「何も起こらない?言え!何を祈っている?」
「あたしや刑事さん、それから前の席の人がそれぞれのリングで華々しく散ることができますようにって。でも、インチキですから」
何を言っている?容疑者を連行するためにチャーターした、この小型機に前の席などない。
あるのは操縦席だけ。そこで機を操るパイロットが職務を全うしている。
ガクン!
機体が大きく傾いた。 

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UN生徒総会

2012年10月24日 | 366日ショートショート

10月24日『国際連合デー』のショートショート



議長「えっとじゃ決採りま~す。副議長さん、も一回、演し物案、読み上げて」
副議長「ハイハ~イ、今年度の学祭の演し物案は、次の五つで~す。
1案『大奇術ショー』!
2案『歌声喫茶』!
3案『アングラ映画』!
4案『オペラ劇』!
5案『マグロの解体ショー』!
では投票はじめ~」
数分後。
副議長「では集計結果、発表しま~す」
全投票数194。そのうち映画が180票を獲得していた。
映画にキマリか。
と思ったその時。執行部書記がポツリ、
「オレ、映画はかったるくて。拒否権行使しまーす」
会場全体、ため息に包まれた。チェ、やり直しかよ。
昨年秋の生徒会総選挙で五人の生徒会執行部が選出された。
そして選挙に勝った彼ら常任理事に拒否権が与えられたのだ。
その結果、五人のうちのひとりでも拒否権を行使すれば廃案となるのだ。
こうして3案を除く四つの案で再び多数決がおこなわれた。
副議長「では再度集計結果発表しまーす」
みごとに票は分かれたが、僅差で5案が多かった。
書記が呟いた。
「あ、オレ、マグロでもいいや」
残りの執行部連中もうなずいた。
これでキマリか。
映画愛好会の連中のブーイングが聞こえた。
無理もない。いくら選挙で選ばれた勝ち組が執行部だからって拒否権ってどうよ?
思わずひとりごちたボクに、隣に座っていたタカシが言う。
「んなこと言ってもさ、多数決が必ずいいとも限らないよ。去年のアレ」
去年のアレ?
そうそう、去年のアレ。『教科書全部マンガにしちゃう案』、みんな調子ぶっこいて賛成多数になっちまった。
でも生徒会長の拒否権発動で撤回されたっけ。
ああいう易きに流れそうになったときに待ったをかけるのも、時には必要かもな。
おさまらないブーイングに、ついに執行部五人がイスを蹴って立ちあがった。
「おまえら!うっせーんだよ!」
五人の手の中で、ボクらが持つことを禁止されている、例の武器が鈍く光っていた。
仕方がない。言うこと聞いとくか。 

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幽霊電話

2012年10月23日 | 366日ショートショート

10月23日『電信電話記念日』のショートショート



深夜、枕元の電話のけたたましいベルの音で目を覚ました。
「もしもし、誰?こんな夜中に?」
・・・無言。
「ちょっとあんた、いたずら電話か?切るぞ、バカ」
受話器から身も凍るか細い声。
「うらめしや~」
「はぁ?もっと大きい声で!」
「うらめしや~~」
「うらめしや?それで、あんた誰?」
「あの、幽霊です~」
「電話かけたらまず自分から名乗る。こんな夜中にかけてこない。マナーというより世の常識だ。謝れ」
「すみません~」
「で?こんな夜中に何の用?」
「あの、驚いてもらえました~?」
「ナニ?驚かせようとしたのか?こんな夜中に起こされていい迷惑だ」
「すみません~」
「すみません、すみませんって謝って済むの?あんたそうやって生きてきたんだろ。うらめしやって自分の不幸を全部周りのせいにして。身勝手だよなぁ。」
シクシクシクシク・・・
「泣くな!同情なんかしねぇぞ。そうやって人生逃げてきたんだろ?情けねぇな」
「わたし、どうすれば~?」
「それだよ、それ。人にねだって答えを求める。失敗すれば人のせい。ダメだなぁ、あんた。自分ってものをしっかりもて。自分で決めろ」
「なるほど~目が覚めました~ありがとうございます~」
「ま、せいぜい成仏できるようにがんばんな。あ、ひとつだけ助言してやる。『うらめしや』は文語調で今どきじゃないな。次からは『チョバリバ~』だ。ウケるぞぉ~。じゃ明日早いから切るぞ。」
「あの~」
「なんだ?」
「身寄りがなくて供養をしてもらえず成仏できません~。つきましては供養料を今から申し上げる口座に振り込んでください~」
「なんだ、幽霊の悩み相談かと思ったら、その手の商売か。騙されるか、詐欺師!死ね!」
「もう死んでます~」
「も一回、死ね!」
受話器をガチャンと置いた。
すると、枕元の電話機の影が目の前でス~ッと薄くなって消えていった。
あ~、幽霊電話! 

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ロジャー・ボンドの墜落

2012年10月22日 | 366日ショートショート

10月22日『パラシュートの日』のショートショート

緊急の任務で呼び出され、飛び乗ったチャーター機。上空一万メートルを飛行中、乗務員がロジャー・ボンドを急襲、機外に蹴り出した。
空を舞うロジャー・ボンド。パラシュートもなしで一万メートルを落下していく。まさに絶対絶命!
前にもこんなことがあった。ムーンレイカー号事件の時だ。あの時は先に落下していく敵のスパイを空中で捕まえてパラシュートを奪った。
だが、今回はボンドひとり、上にも下にもパラシュートを背負った敵スパイはいない。
いやこれはもう本当に危うしだ。
ジャンジャカジャンジャン、ジャッジャッジャッ
ジャンジャカジャンジャン、ジャッジャッジャッ
あっこれはロジャー・ボンドのテーマじゃないか。かっこよく大活躍する場面のはず。だが、どうやって?
ああ、アレだ、アレ。
先週、秘密兵器開発担当Qから支給された秘密の薬があったぢゃないか!
名づけて『空から落ちたときに飲んだら体がスーパーボールになっちゃう薬』!
どんな高さから落ちても、この薬を飲みさえすればスーパーボールみたいにビョ~ンビョ~ンになって怪我をしないのである。
なんと都合のいい秘密兵器だろう。しかもなんと都合のいいストーリー展開。だが、それがロジャー・ボンドの世界なのだ。
空中をクルクルと回転しながら、内ポケットから薬の小瓶を取り出してゴックン、ゴックン。
よ~し、これでダイジョウビ・・・
ジャンジャカジャンジャン、ジャッジャッ・・・テーマ曲が突然途切れる。
それもそのはずである。薬をわたすときの取扱注意を思い出したのだ。
「この薬を飲んで60秒後に体がスーパーボールになるんぢゃ。いいか、地上に落ちる60秒前には飲んでおくんぢゃぞ」
しまった!ボンドはロレックス高級腕時計を見た。
1万メートルから地上に到達するまで、約二分。薬を飲むまでのロスが四十五秒・・・明晰な頭脳が計算する。
やばいっ限りなくやばいっ
ボンドは両手両足を開いて、思いきり空気抵抗を増やす。ニワトリがジタバタ羽ばたいてるみたいだ。
抵抗によって落下速度は二百数十キロで安定するものだが、この姿勢を保持することで百八十キロまで落とすことが可能なのだ。
地上がグングン迫ってくる。
扇げ!扇ぐんだ!
時計の秒針を見つめる。
眼下に街が迫る。
時間との戦い。
間に合う・・・
いける!わずかに数秒だが、いけるはずだ!
そして、墜落。
グチャ。

訃報
イギリス海軍ロジャー・ボンド中佐が任務中に航空機より落下、墜落死を遂げた。ボンド中佐は高層ビル屋上に落下して即死。
イオンプロダクションは、ご長寿映画ロジャー・ボンドシリーズの打切りを発表した。

 

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アカリちゃんにプロポーズ!

2012年10月21日 | 366日ショートショート

10月21日『あかりの日』のショートショート

宝石をちりばめたみたいな眼下の夜景。けだるいジャズピアノ。
ボクの冗談に、目の前のアカリちゃんがクスクス笑いで首を振った。イヤリングがキラキラ輝く。
ナイトラウンジの薄明かりに、ドレス姿のアカリちゃんだけ明るく浮かび上がって見える。
会話がふと途切れる。
よし、チャンス!
アカリちゃんの前に指輪の入ったケースを置く。ボクは深呼吸して、何度も練習したプロポーズの言葉を言う。
「アカリちゃん、キミに、キミにボクの未来を、これから先、ずっと照らし続けてほしい!」
アカリちゃんが目を大きく見開いてボクを見つめた。
イエス?イエスだよね?イエスと言ってくれ!!
やがてアカリちゃんがまばゆいくらいの笑みを浮かべて、コクンとうなずいた。
やった!プロポーズ大成功!喜びが熱いカタマリになって、胸にこみあげる。
「ね、見てもいい?指輪」
「もちろん。気に入ってくれると思うよ」
アカリちゃんが目を輝かせてケースを開けた。みるみるうちに明るさが翳っていく。
「アレ?アカリちゃん、気に入らない?高かったんだよ、ソレ」
「あの・・・ゴメンナサイ。あなたとは結婚できません。アタシ、こんなに安い女じゃなくってよ」
アカリちゃんが無言でバッグから高級宝石店のカタログを取り出し、付箋を付けた商品をピッと指さした。
ゲ!高い!目の前の指輪と桁が一桁違うじゃないか。
「こんなに高いって思わなかったよ。どうしよう・・・」
アカリちゃん、今度はバッグから小型の計算機を取り出した。
「アタシはとってもやりくり上手なの。従来の主婦の55%~65%の消費に抑えることができる省エネタイプなの」
省エネタイプ?
「しかも、最近じゃすぐに別れてしまうカップルがいるけど、アタシは10年間は大丈夫、離婚しないわ。長持ちタイプなの」
長持ちタイプ?
「無駄な再婚をする必要がないから、廃棄は不要、CO2も減って地球にやさしいエコタイプ」
エコタイプ?
「つまり、最初に手に入れるときは高いようだけど、その後を考えればとってもお得なのよ、アタシ」
ど、どうしよう。買うべきか、買わざるべきか・・・
「長い目で見て考えてくださいな、お客さん!」
おいおい、なんだかゴリ押しの電気屋みたいだぞ、アカリちゃん。
「長持ちは長持ちだけど、20年、30年と暮らし続けたら、次第に愛情がボンヤリして家庭が暗くなるなんてことはない?」
それまで強気だったアカリちゃんが肩を落とし暗い表情に。
「そこなの。それがアタシの弱点なのよねぇ」

 

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ワンリサイクル

2012年10月20日 | 366日ショートショート

10月20日『リサイクルの日』のショートショート

男に 捨てられた
初めて抱かれた男に見るも無残に
就職が決まって 町を出て行くからと言って
雑誌とか CDとか 古着とか
身辺整理をするついでに 私も捨ててしまうなんて
隔週一回の資源ゴミの日に捨てたのは
彼の最後の思いやりだったのか?
ズタズタに細切れに粉砕して
泣いて 泣いて 泣いて キレイさっぱり洗浄して
過去の記憶を全部消して まっさらな自分になって
前よりもステキになってやろうとセイケイして
流行の衣裳を身にまとって 町へ繰り出すと
さっそく新しい男が私の前に現れて
私を抱いて激しく味わい尽くしたあとで 男は初めての男と同じように
「ずっと大切にするから」と言った
捨てないでね 私はワンリサイクルの女なの
お腹の表示を男に見せた
三角に回る矢印の中に1が表示されたマーク
一回だけ再生可能の、ワンリサイクルマークを
「捨てるもんか」と私の腰のくびれを男はギュッと抱き締める
そして男は心の中で呟く
そのマークは一回だけの意味じゃないよ
プラスチックに割り当てられた識別番号なんだ
君は何度でも何度でも再生可能なんだよと
そしてまた私は
男に 捨てられた

 

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バーゲンの女

2012年10月19日 | 366日ショートショート

10月19日『バーゲンの日』のショートショート



妻にそろそろ飽きてきたので、売ることにしたんですよ。
あんまり古くなっちゃあ売れなくなるでしょ?売れるうちに売っとかなきゃ。
まあ、これがギリギリ限界かなって。
二束三文で買いたたかれて、一応店頭に並ぶんだけど、買い手がつかないまま埃りかぶるってのがオチ。
店も不良在庫にならないようにってんで、ワゴンセールで処分するんだろうなあ。
で、ボクとしては新しい妻を購入予定なんですよ。ええ、この秋に発売される新しいヤツ。
性能なんて妻の5倍。もちろん省エネタイプ、今ならエコ割。今が買い時ってわけ。
そんなわけで、正直に言うと妻に飽きたっていうより新しいのが欲しくなっちゃったんだな。
もともとバーゲンで手に入れたお買い得品ですもん、惜しくはありません。
あ、ここだな。この店。
で、『高価買い取ります』って、初めてのこの店に妻を連れてきたわけなんですよ。
いかにもって感じの目つきの悪い店主が奥から出てきて、
妻を舐め回すように品定めした挙げ句、「こりゃ売り物になんないよ」なんて言うんです。
いくらなんでもそりゃないでしょう?
「これでなかなかいいとこ、あるんだよ」
ボクは店主に言ってやりましたよ。
料理の腕も確かなんだけど、ボク好みの味つけを工夫してくれること。
洗濯上手で、さっぱりしていい香りがする服を着せてくれること。
いつも部屋を片づけていて、必要な物があるべき位置においてあること。
「今時そういうのって、デフォルト仕様なんだよな」
店主の横柄な物言いにムカつきました。
それで言ってやったんです。
土砂降りの雨の中で、電気回路がショートするのも気にせず、ボクの帰りを待ち続けてくれていたこと。
同僚の裏切りにあって意気消沈しているボクを、一晩中ひとことも言わずに抱きしめてくれた夜のこと。
ボクが売り飛ばそうとしているのを知っても笑顔を絶やさず、充電ポッドの中でこっそり泣いていたこと。
店主は肩をすくめると、わずかばかりの金額を提示しました。
「行こう」
ボクは店主を無視して妻を急かして店を出ました。
妻が心配そうにボクを見つめます。
「イイノ?今年モ売ルノ、ヤメチャッテ」
ボクは無言のまま、妻の肩に置いた手に力を込めました。 

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フラフープ

2012年10月18日 | 366日ショートショート

10月18日『フラフープの日』のショートショート



なんだかまた最近、ブーム再燃らしいんですよ、フラフープ。
知ってます?腰をクネクネして回す、アレ。
昔、世界中で大流行したんですよ、1958年に。アメリカでブームになって同じ年には日本でも大ヒット。
売れに売れて入荷待ち状態。巷にはフラフープを回す老若男女が溢れ返って。すごかったんですから。
それがやりすぎて胃に穴があいたとか腸捻転になったとか、夢中になってて交通事故に遭ったとか。
たちまち弊害が社会問題になって、ブーム終息。あっけなかったなぁ。
フラフープって、アメリカの玩具メーカーが開発したんです。
もともとオーストラリアで竹の輪を回していたのにヒントを得てプラスチックで製作したんですよ。
で、動きがフラダンスみたいってんで、フラフープって商標名にして。
インターナショナルでしょ、フラフープって。
世界中に情報が飛び交い流行が広がる時代の到来を象徴する、世界をつなぐ『輪』ってわけですよ。
ま、世間の人はそう思ってますけどね。
ここから、この話を聞いてる人にだけお話する内緒の話ですよ。
実はね、あのフラフープって宇宙人なんですよ。まあ宇宙も広いですからね、輪っかの形の宇宙人ってのもいるんだよなあ。
玩具会社の社員を洗脳してね、宇宙人を製品だと思いこませたってわけ。
それで億単位の宇宙人があっという間に世界中に広がって。まあ、つまり1958年にぶっちゃけ人類、世界征服されてたんですよ。
侵略者ってのは、こんくらいスマートにやんなきゃね。
嘘こけって?
フラフープ星人のボク本人がそう言っているのに?
まあ信じてもらえないってことは、こっちとしては都合がいいことなんですけどね。
フラフープ視点で見ると、回してる人間って実にかわいいんだよなあ。バレリーナみたいに無心にクルクル回っちゃって。
これからもボクらをしっかり楽しませてくださいよ、よろしくお願いします。
え?フラフープ星人はいったいどのくらい存在するのか?
地球に来ている数はたかが知れてますよ。ほぼ無尽蔵と言っていいんじゃないかな。
太陽系侵略拠点のマザーを見てもらったらわかると思うんですけど。
え?マザーって何か?御存知ありません?土星の周りのフラフープ。 

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タイムマシンにお願い

2012年10月17日 | 366日ショートショート

10月17日『カラオケの日』のショートショート



おっと、ついウトウトしてしまった。
改札口に掛けられた丸時計を見上げる。21時08分。眠っていたのは15分ほどか。
時刻表を見上げていると、背中合わせのイスに座る男の電話の声が聞こえた。
・・・タイムマシン・・・未来・・・装置・・・
場違いな言葉が混じっているのに気がついて、耳をそばだてた。
「いやだからもう帰りたいんだって、未来。で、どこなの?最寄りのタイムマシン」
まちがいない。
背中合わせにいるのは未来人だ。電話で未来と交信しているのだ。
「うん、三つめの角を曲がったとこね。きわどいカモフラージュだな。じゃ行ってみるから」
男が立ち上がり、繁華街へと向かう。ボクは好奇心のままに跡を追った。少年探偵団にでもなった気分だ。
三つめの角、男がさっと身を隠す。逃がしてなるものか、ボクもダッシュで角へ。
明るいカラオケボックスのイルミネーションに目が眩んだ。
ここに入ったのだろうか?
店内に入ってみるとフロントの女性店員が明るく挨拶した。あれ?未来人は?
フロントで尋ねようとしたそのとき、背後から男の声。
「この人と二人、317号室で頼む」
ふりむくと、未来人がニヤリとした。しまった、勘づかれていたのか。
抵抗してもムダだろう。ボクは未来人とともに317号室に入った。
「なかなか勇敢だったな。君にささやかな時間旅行をプレゼントするよ」
男が装置を操作する。
ミラーボールの灯が室内を彩る。モニターから音楽が流れはじめる。
なるほど、カラオケボックスの一室を、タイムマシンとして活用するとは。
これがカモフラージュか。その秘密を知った以上、ボクの記憶は事後、キレイさっぱり消されてしまうにちがいない。
ボクは未来人がオーダーしたドリンクをぐいと飲んだ。
よ~し、しばし未来人の意のままに時間旅行とやらを楽しんでみるか。
こうしてボクは未来人とともに、さまざまな時代へと旅立った。
なつかしい少年時代、甘くほろ苦い初恋のころ、そしてムードたっぷりの大人の恋。
どれだけの時間、楽しんだだろうか。
気がつくとボクはひとり、カラオケボックスにいた。
未来人は、もう帰ってしまったらしい。
ボクの手元には一枚の請求書が残った。
二人分の料金を請求した、カラオケボックス『タイムマシン』の請求書。 

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