366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

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今年もサンタがやってくる

2012年12月24日 | 366日ショートショート

12月24日『クリスマスイブ』のショートショート



朝食の食卓で、顔を紅潮させて息子が私に聞いた。
「ねえ、パパ、今年もサンタさん、来てくれるよね?」
息子の声さえキンキン頭に響く。
疲れているのだ。
「パパ、サンタさん、僕にもプレゼントもってきてくれるよね?」
うるさい・・・
私は、何もつけていないトーストを一口かじって首を振った。
「いいや。おまえが寝入ったときにパパがプレゼントを靴下の中に入れるんだ」
息子の笑顔が消える。
「嘘だよね、パパ。サンタさん、ホントはいるよね?」
私は、無視してトーストを咀嚼している。
あきれた妻が息子に言う。
「サンタさんはいるわ。今日のパパはどうかしているの。ママが約束する。サンタさんはあなたのところに、もちろん来てくれるわ。サンタさんが家に入ってきたとこをママは見たこともあるんだから」
妻が私を睨んでいる。
私も妻を睨み返す。
「本当のことを言って何が悪い?プレゼントをこっそり靴下に仕込むのは、いつだってこの俺だ。今までだってそうだ。去年も一昨年も。ずっとそうだったじゃないか」
妻が怒りの目から徐々に悲しい目に変わった。
「あなた、どうかしているわ。まだ5歳の子供に言うことじゃないわ。あなたらしくない。全然、あなたらしくないわ」

仕事に出る前に妻は私を後ろから抱きしめて言った。
「今朝のあなたは変だわ。いつものあなたじゃない。残業が続いて心底まいっているのよ。今日は仕事をお休みしたら?」
私は妻の言葉が理解できなかった。
「な、何を言ってるんだ?今日、休んだら俺はいったい今まで数ヶ月間、何のために仕事をしてきたかわからなくなってしまうじゃないか。バカなことを言うんじゃない」
妻がきっぱりと言った。
「我が子や妻を幸せにできない仕事なら、あなたの仕事なんて意味がないわ」
「・・・」
妻の言うとおりだ。
今月に入って特に仕事は多忙を極め、完全にオーバーフロー状態だ。すまない・・・この仕事が、愛する息子を傷つけ、愛する妻を傷つける仕事であっていいはずがない。
「ごめん。忙しすぎたんだ。許してくれ。必ず償うよ」
私は妻を抱きしめて、何度もあやまって仕事に向かった。

職場に着くと、昨日までに輪をかけて、てんてこ舞いの忙しさだった。
貨物配送担当のマイクは目を充血させていた。徹夜で配送物の仕分け作業を続けていたらしい。
運搬車両担当のピーターは、安全点検の最終チェック中。自慢の最新のグラスファイバー製の橇をピカピカに磨き上げている。
調教担当のビルは、ハーネスを装着した赤鼻のトナカイたちの身体を愛おしくブラッシングしている。
私たち、配達担当、所謂サンタクロースは、朝から、定番の赤いコスチュームの試着や、配送先の住所や侵入場所の確認などの最終チェックが夕方までかかった。
準備がととのった。
「さあ、マイケル、ショウタイムだ」
子供が休み始めた時間を見計らって、我々サンタは全世界の子供たちのもとへ出動した。

数千件に及ぶ、すべてのプレゼントの配達ノルマが終了すると、例年のごとく深夜だった。疲れ切った私は我が家に戻った。
私の手には最後のひとつのプレゼント、我が愛する息子へのプレゼントが載っていた。
ツリーの靴下にプレゼントを入れると、私の帰りを待っていた妻とともに息子のベッドを覗いた。
幸せな寝顔だ。
サンタが来てくれるのを信じているのだ。
「ごめん、朝のパパはとても意地悪だったね。こうやって今年もサンタがプレゼントを持ってきたよ。信じていい。おまえが信じているかぎり、来年も再来年もずっとずっとサンタは必ず来るよ。約束する」
私は妻と手をとりあい、我が子の頬にキスした。
「メリー・クリスマス」 


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