366日ショートショートの旅

毎日の記念日ショートショート集です。

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ニュー○○○パラダイス

2012年05月31日 | 366日ショートショート

5月31日『世界禁煙デー』のショートショート



(子供の声は『プライバシー保護のため音声変えてあります』の高い声)

(お祖父ちゃんの声は『プライバシー保護のため音声変えてあります』の低い声)
(文中のPは、放送規制のP音)

子供「お祖父ちゃん、どうして昔の番組は口にモザイクなの?」
テレビでは、懐かしい『シャーロック・ホームズの冒険』が放送中です。ホームズの口元・・・あのサキソフォンのように曲がったパイ(P)にモザイクがかかっています。
お祖父ちゃん「ああ、あれかい。あれはパイ(P)じゃよ」
お祖父ちゃんがチャンネルを変えると、昔のニュース映像です。タラップを降りるマッカーサー元帥です。口元のコーンパイ(P)にもやはりモザイク処理が施されているじゃありませんか!
子供「なんで隠してあるの?ねぇ、なんで?」
お祖父ちゃん「ハハハ、昔の人はどこででも平気で吸っていたけどなぁ。今じゃとんとお目にかかれんのう」
子供「ねぇ、お祖父ちゃん教えてよう!」
お祖父ちゃん「ウム。誰にも内緒だぞ。パパにもママにも。約束は守れるの」
子供がうなずくと、お祖父ちゃんは話し始めました。
お祖父ちゃん「昔々・・・ずっと昔じゃ。政府のあとおしで、タバ(P)が体によくないことが研究されたのじゃ。肺ガンや心臓の病気になりやすいこと、お腹の中の赤ちゃんが死んでしまうこと、喫っている人の近くにいる人の健康にもよくないことがわかったのじゃ。政府は国民にタバ(P)の害を訴えたのじゃ」
子供「体に悪いんならしかたないね」
お祖父ちゃん「他にも体に悪いものはたくさんありそうじゃがの。ま、それはさておき、政府はポスターを貼ったり、コマーシャルを流したりして、タバ(P)が危険なことを訴えた。それに、病院や役所で吸うことを禁止した。そして、バスや電車などの公共の乗り物で吸うこともな」
子供「うまくいったの?」
お祖父ちゃん「ああ、タバ(P)の税金を一気に上げたことで、吸う人が激減した」
子供「体によくないタバ(P)がなくなってよかったね!」
お祖父ちゃん「よかった?・・・まあ百年も経てばわかるさ」
・・・
部屋のドアを蹴破って、私服警官たちが乱入!
たちまちお祖父ちゃんは警官に取り押さえられました。
警部「すべて盗聴したぞ。政府のやり方に不満があるようだな?」
お祖父ちゃん「いえ・・・今の話は、昔々の話・・・全部、ナチスドイツがしたことなんじゃ!」
警部「政府をナチ呼ばわりとはけしからん。署で話を聞こう。我々が一歩遅かったら、子供が受動的喫(P)になるところだった。危ない、危ない。さあ、連行しろ!」
・・・
お祖父ちゃんが連行されたあと、部屋に一人残された子供は、リモコンをテレビに向けました。
テレビ画面が録画映像に切り替わります。
それは昔の映画シーンを編集してつなげた映像、モザイクなしの映像です。
・・・
さらば友よ・・・ブロンソンの煙草に黙って火をつけるドロン・・・
第三の男・・・並木道を歩いてくる女、煙草を燻らすジョゼフ・コットン・・・
曲がった煙草を親指と人差し指で摘んで吸うハンフリー・ボガード・・・
太い指に安葉巻を挟んで頭を掻きながら振り返る刑事コロンボ・・・
シガーカッターを使わず噛み切ってペッと吐き捨てるイーストウッド・・・

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最終処理

2012年05月30日 | 366日ショートショート

5月30日『ごみゼロの日』のショートショート



「どうです?美しいでしょう?」

ケメロン氏が街を自慢げに見渡した。
無論、同意せざるを得なかった。街中どこにも塵ひとつない。
チラシが一枚風で舞う。たちどころにルンバのバケモノみたいなのが猛スピードで駆けつけて吸い込んだ。
「ええ。実に美しい。まさに宇宙一ですね、惑星ボラボラは」
そうでしょう、そうでしょう。報道官のケメロン氏はご満悦だ。
「ありのままの美しさを記事にしてくださいよ」
「で、ロボットが回収したゴミは最終的にどうやって処理されてるんです?」
「完全リサイクル。ありとあらゆるものが再生される。惑星本来の姿ですよ」
「でも再生できないゴミってあるでしょう?それはどこに・・・」
「そんなゴミはありません。処理方法は企業秘密みたいなものです。重要な観光資源と言ってもいい。そこは勘弁してください」
そうはいかない。記者とは仮の姿。私は惑星ボラボラの最終処理法を探り出し、私の惑星ポラポラもまたゴミ0の惑星にするために潜入したスパイなのだ。
ケメロン氏と別れた私は、早速ルンバの後を追って処理場に潜入した。
地下に作られた巨大な処理場は完全オートメーション化され、やはりここも清潔だった。廃棄物は分解され、分別され、さらに粉砕されて原料へ。確かに完全リサイクルだ。しかし、汚染物質やら毒性の強い重金属やらは、ベルトコンベアでさらに地下へと向かっていく・・・。
「取材禁止区域のカメラにあなたが映っていました。あなたの取材許可は取り消されました」
翌日現れたケメロン氏は明らかに不機嫌だった。
「ボラボラからの退去命令が出ています」
あと一歩。工場のもうひとつ地下に潜入すれば秘密が暴けるはずだった。仕方がない。
乾燥粉砕銃を懐から出し、躊躇なくケメロン氏を撃った。
冗談でしょう?そんな顔をしたままのケメロン氏の全身がひび割れ、粉々に崩れ落ちた。
ルンバのバケモノたちが現れると、群がり貪り食った。
ケメロン氏に変装した私は、工場に向かった。そしてさらに地下の最終処理場へ。
何本ものベルトコンベアが向かう先にあったのは、ステルス型の円盤だった。
そうか、これでこっそり星の外に捨てるのか。
行き先の表示が書いてあるぞ・・・え?『ポラポラ』?!
な~んだ、うちの星と同じことやってるんじゃないか。ま、ある意味、リサイクル・・・。

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こんにゃく侍

2012年05月29日 | 366日ショートショート

5月29日『こんにゃくの日』のショートショート



「越前屋、そちも相当のワルだし~」
「いえいえ、お代官さまこそ」
ヌハ、ヌハハハハ・・・
悪徳商人&悪代官の不敵な笑い。と、外から何やら『水戸黄門』の前奏が。
チャーン!タッタッタッタッ、ダン、ダダダダン、ダダダダン、ダダダダダダダダダ
♪じ~んせい♪じ~んせい♪じ~んせい、見ぃ~つけたぁ♪
♪あ、ちっちゃい人生、ちっちゃい人生、ちっちゃい人生見ぃ~つけたぁ~♪
・・・このつかみどころのない、ヌルい感じは一体?
「ま、まさか、こんにゃく侍!」
お代官、障子をザバッと開くと、屋敷の庭で歌う侍一名。
♪な~んたら鬼さん♪な~んたらたらら~♪
♪な~んたらか~んたら♪かんたらららら~♪
「ええい、わからぬなら歌うな!」
左右にプルンプルンくねりながら歌う、えもいわれぬ適当さ。まさに、こんにゃく侍!
近頃、都に巣くう狼藉者を夜な夜な成敗するという、噂の侍、その人なりや?
古来、砂出しと呼ばれ体内の悪しき老廃物を絡め出すとされる、あの蒟蒻の化身なりや?
と突然、お代官の顔面にペトリ。必殺『肝試しこんにゃく責め』!
お代官は平気の平左どころか怒り心頭、
「者ども、であえ、であえ~い!」
詰め所より馳せ参ぜる高らかな足音、現れ出でる雇われ浪人十数名。
「とっとと刺身こんにゃくだし~!」
お代官の号令一下、白刃閃き駆け寄る輩。
ポヨヨヨ~ン、ポヨヨヨヨ~ン~
こんにゃくボディに弾かれて、郎党どもは空を舞い、木っ端ミジンコすってんころりん。
悪徳商人&悪代官、これには真っ青、こんにゃくみたいに震えて土下座した。
「ど、どうぞお助けを!こ、これほどでご勘弁を」
と両手で小さく丸を示せば、侍、大丸を示す。
十指を示せば、五指を返す。
阿弥陀を示せば、アッカンベェ。
「ウヘ~!まいりました!金輪際、悪事はいたしませぬ!生命、生命ばかりは!」
う~む、さっぱりわからぬこんにゃく問答。とりあえず悪人両名、額を床に擦りつけ命乞いだ。ぷるるんと背を向けた侍、左右に揺れ揺れ去っていく。
「へ?ゆるしていただけるので?」
こんにゃく侍、ぷるんとうなずき闇に消えた。
「わりと簡単にゆるしてもらえましたね、お代官様」
「う~む、さすがはこんにゃく侍。素直だし~」 

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線香花火

2012年05月28日 | 366日ショートショート

5月28日『花火の日』のショートショート



いいよね~日本の夏。

風呂上がりの身体、綿麻のサッパリした着心地の浴衣に包んでさ。
大胆にくし切りにしたスイカなんか、ガブガブ食っちゃってさ。
縁側にこう、胡座かいて、汁が外に垂れるように用心して、プップッって種飛ばして。
時おり、南部鉄の風鈴が清流の底みたいな音で鳴っちゃったり。
沓脱ぎ石の上には下駄と並んで、蚊やり豚が置いてあってさ。
迷い込んできたカナブンぶん投げたら、闇の向こうでカチッて微かな音がしたり。
オケラの鳴く声が耳ん中に耳鳴りみたいに引っついて。
いいよね~夏の風情。
こんな夜には、コレ。線香花火。
わらしべみたいに細~い棒の先に黒色火薬が塗ってあるやつ。
ケバイ色のコヨリみたいなヤツより、やっぱこっち。
先っちょをロウソクの炎の先にちちょいとくべて待って。
じきにちっちゃい赤い玉ができて、そこから細い光の筋がチンチン放たれて。
玉が大きくなって光の筋から光の筋ができて、松葉を集めたみたいな繊細な火花が踊って。
シオカラトンボが飛び立つくらいの音しかしないんだよ、こんとき。
だんだん玉が赤い雫になって、プルプル零れ落ちそうになって。こんときの危うさがまたたまんない。
微妙な角度なんか調整して、手が震えないように、息さえ止めて。
ここを乗り切って、玉が小さくなって最後まで燃え尽きたときの充実感ったら。
人生、まっとうしましたって感じ?玉を落としたときの、やっちまった感。あれあってこそのこの達成感だよなぁ。
うん、これ人生だよね。より美しくより長く生命を輝かせたいっていう、なんか根源的な。
ああ、われ線香花火に人生を見たり。生きとし生ける者よ、汝らの人生、これ線香花火なり。
よし、もう一本、行ってみよう。
・・・って、オヤ?お隣も庭に出てきて、花火の準備?よきかな、よきかな。
塀向こうで見えぬが、なんかにぎやか・・・どうやら中学生連中らしい。
ジュバッ・・・ショワショワショワショワ~!!
げっ、すっげえ眩しい光の噴水が塀の上まで噴き上がったぁ~!
「すげぇな、ドラゴン!」
「次、ロケットやろうぜ」
キュイ~ン・・・・・・パーン!!
う~む、ああいう花火を作る外国とああいう花火に興じる若僧は、生きとし生ける者から除外だぁ。

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百人一首

2012年05月27日 | 366日ショートショート

5月27日『百人一首の日』のショートショート

 「こ、これは・・・」
長年、殺人課に勤める私もこんな現場は初めてだった。鑑識に尋ねる。
「一体、何人の死体が?」
「バラバラなので詳細は不明ですが、おそらく百人」
百人?前代未聞の大量バラバラ殺人だ。
「妙なことに首はたったひとつしかないんです」
本件のネーミングを思いつき、思わずニヤリ。



 朝、従業員百人全員が外に集められた。
食堂のオバチャンが全員に小倉あんパンを配っていく。
壇上に登った社長が、パン片手に話し出す。
「経営難、如何ともしがたく、不本意ながら一人だけ、本日限りでやめていただきます。唐辛子入りだった人がクビで~す。じゃ、一斉にいきましょう。せーの」




 前から百人一首のネーミングに疑問をもっていた霊媒師が、選ばれし百人の歌人の霊を召集した。
「じゃ皆さん百人で相談して最高の一首を作っていただきま~す。これぞまことの百人一首」
ところが恋多き歌人たちのこと、次々とカップル成立、奥の部屋へ。
仕方なく、残った者たち、坊主めくり。

 

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透明光速

2012年05月26日 | 366日ショートショート

5月26日『東名高速道路開通記念日』のショートショート



地球から太陽まで1億5千万キロなんだって。でも、そのころのボクに1キロの実感もなければ、1億5千万なんて数字、今も実感がない。でも太陽は、望遠鏡なんか使わなくても、いつもすぐそこに見えていた。
タカシくんの家に行くと、ママはいつもと違う顔をした。
「タカシくん、遠くにお引っ越しをすることになったの。もう、毎日遊べなくなるのよ」
「お休みの日にも?」
ママが笑った。
「簡単に来れないわ。車でトウメイコウソク使っても」
歩いても無理だし、パパの車でも無理だなんて。そんなに遠いところがあるなんて。どんなに遠くても太陽にはいつも会えるのに。
タカシくんの家でいっぱい遊んだ。時間がだんだん近づいてくると、ギクシャクして鼻の奥がツンツンした。
大切なオモチャを交換した。また絶対遊ぼうねって約束した。
その日の晩、フトンに入ったら、明日からタカシくんがいないってヒシヒシ感じてきて、嗚咽して泣いた。
ボクが風船みたいに飛んでいかないようにママがしっかり抱きしめてくれて、泣き疲れていつのまにか寝てしまった。
そして、タカシくんの夢を見た。
透き通った新幹線みたいな車から降りてきたんだ。
タカシくん、会いに来てくれたんだね!
トウメイコウソクで、会いに来てくれたんだね!
タカシくんとボクは、海水パンツはいて半袖着て麦わらかぶって、三角ダムに出かけた。
三角ダムは、大きな石がゴロゴロしてて大きな淵があって、ボクたちの秘密基地だった。
いつもは年長組が遊んでて、ボクたちは思いきり遊べなかった。思ったとおり今日は誰もいない。
岩場にのぼって、並んで淵を見下ろすと、小さな魚がすごい速さで泳ぎ回るのが見えた。
タカシくんがシャツを脱いで、帽子を岩の上に置いた。
ここから飛びこむの?危ないよ、タカシくん。
タカシくんの身体が宙を舞った。水しぶきがあがった。タカシくんが見えなくなった。
タカシくん!
・・・タカシくん!
そこで目が覚めた。朝日のまぶしい、フツーの朝だった。
キツネ色に焦げたトーストにバターといちごジャムをたっぷり塗ってかじっていたら、いきなり電話が鳴った。
悪い予感がして、トーストが喉につまった。
電話はやっぱり、タカシくんのママからだった。
「え、なんですって!タカシくんが?」
ママの声がいつもと違う。
「まさか、ウソでしょ!タカシくんが・・・」
いやだ、そんなの。
「タカシくんがオネショしたですって?」 

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広辞苑

2012年05月25日 | 366日ショートショート

5月25日『広辞苑記念日』のショートショート



 友人曰く、今や『広辞苑』はROMの時代なんだそうだ。
使い勝手がよくて、音声まで収録されてるらしい。
へえ、そんなに便利なのか、早速使ってみよう。
パカッ・・・たちまちカップラーメンのフタがめくれあがり湯気があがる。
確かに音は出るが、こいつは使えねえ。



 『広辞苑』を売りたい?
お客さん、今どき百科事典、国語辞典は売り物になんないの。ネットや電子辞書で間に合っちゃう時代なの。
ほとんど使ってない?自慢にもなりませんや。中身が古いと使いものにならないの。
女房と一緒ですよ。
え?女房に出て行かれた?
『広辞苑』はお客さんか。

 

 1935年に刊行された『辞苑』は、収録語数16万語。
そして2008年刊行の『広辞苑第六版』は24万語。
言葉の世界の、果てしなく増え続ける言葉の海。
『広辞苑』はその単なるエッセンス。
密室で死体が発見された。
場所は閉ざされた図書館。
死体の脇には『広辞苑』。
害者の死因は、溺死。


たったひとり、シェルターで作業していて生き延びた。
さすが大食漢で金満家のシェルターだ。
贅を尽くした設備、豊富な食料備蓄、『広辞苑』まである。
俺にはこの一冊で十分だ。地上に出るまで数カ月、有意義に過ごすとしよう。
じゃ早速、食料に書かれたトクホとカロリーゼロの意味から・・・ 

 

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ゴルフバッグ

2012年05月24日 | 366日ショートショート

5月24日『ゴルフ場記念日』のショートショート



死体を発見してしまった。
月曜日の朝の出勤中。川沿いの市道を運転していたら、河原に倒れている女性を見つけてしまったのだ。
道路脇に車を寄せると、小雨の落ちる車外へと出た。
自分ひとりでは不安なので、行き交う車を呼び止めようとしたが、忙しい時間帯、誰も止まってくれない。
とにかく確かめてみよう。
河原へと下る、草の濡れた小道を恐る恐る降りて行く。
緊張のあまり耳鳴りがする。
わたしと似た背格好の女。露出した腿全体が紫色に変色している。まちがいない。死体だ。
もう!まったく!
そうだ、これは昨日からの続きなんだ。
昨日の朝。いつもの日曜と変わりなく夫はゴルフに出掛けて行った。
会社の接待だの、つきあいのコンペだの、毎週のように出掛けていく。
勝手に目覚ましを鳴らして、自分で身支度をととのえて行き先も告げずに出ていく。
最も身近に存在するのに、最も遠い他人。
いつからこんなになっちゃったんだろう。
夫はいつものように夜遅く帰宅した。
遅い夕食。
オヤ?
夫はいつもよりビールをたくさん飲み、饒舌に今日の惨敗ぶりを語った。
こんな夫は久しぶりだ。
休みの日のコンペは少し控えよう。ゴルフを練習してみたら?なんてわたしを誘う。
そういえば、若いころ、夫はわたしにゴルフの手ほどきをしてくれた。
グリップはこう、フォームはこう。
結局ものにならず、数回の打ちっぱなしで夫は匙を投げたっけ。コースにも一度も出ないまま。
その晩、夫は私を抱いた。
まとわりつくような違和感に苛まれて目を覚ました。
そっとベッドを抜け出し、ガレージに降りる。
夫自慢のゴルフバッグが奥に立てかけてある。数セットを納められるタイプの大きなバッグだ。
バッグのジッパーをそっと開く。指先が震え、耳鳴りがした。
バッグには、夫の死体が入っていた。
じゃあ、帰ってきたのは誰?
死体の夫が本物だとしたら、バッグを抱えて戻った夫は一体・・・?
わたしはわたしを呪った。
ゴルフだって、夫だって、わたしは何も理解しようとしていなかった。わたし自身でさえ。
河原に横たわる死体の裏返し、表を向ける。
やっぱり。
砂に汚れた死に顔は、紛うことなくわたしの顔だった。
死体を元に戻すと、わたしは車に戻ってそのまま職場に向かう。
バックミラーに映るわたしの顔が微笑む。
今度こそ、ちゃんとゴルフを覚えよう。
今度こそ、わたしが本当になりたかったはずのわたしになろう。 

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ファーストキス

2012年05月23日 | 366日ショートショート

5月23日『キスの日』のショートショート



あたし、決めたんです。今日、ファーストキスします。
だって彼のこと、愛してるんですもの。
つぶらな瞳。ノーブルな顔立ち。彼のこと、全部大好き。
ファーストキスの相手は彼以外考えられません。
で、どうすればいいのかしら?
ソフトかしら、ディープかしら。
軽く触れあうバードキスで、チュ。ソフトすぎて気持ち伝わんないかも。
やっぱり舌入れて絡めたり吸ったり歯茎舐めたり。ダメダメ、大胆すぎるわ。
夢中でむさぼって、口腔がカポカポ鳴るのも、はしたないわ。
映画のキスシーンみたいに、唇でハムハム、ムニョムニョってくらいかしら?
あら!思わず自分の肩を抱いてシミュレーションしてたわ。恥ず~い。
とにかくあたしのほうから誘って、彼がその気になったら、あとは彼にまかせよう。
とにかく準備、準備。
缶詰、開けて。ミキサーにかけてペースト状にして。マヨネーズも混ぜて。
ゴクゴクゴク。
さあ、準備完了!
あたしは最高におめかしして、バスで彼に会いに行きました。
眠そうな目をして、のそのそ現れた彼。おっとりしたところがまた素敵です。
朝早いせいか、人影もまばらです。チャンスです。
あたし、目を閉じました。
最初はどぎまぎしていた彼ですが、力強い腕であたしの肩をガッシリ抱き寄せました。
そして唇と唇が重なったのです。
これが、あたしのファーストキス・・・
あ・・・彼ったらいきなり舌を。覚悟はできてたけど、大胆。
あたしの舌を弄んでチロチロ、それから歯や歯茎まで舐めてきたんです。
さんざん遊び回った舌先が、あたしの喉奥へと向かいます。
細く長い舌はあたしの食道を突き進んで、とうとう胃に到達。
マヨネーズ入りのペースト状になった食虫動物の餌を探り当てます。
やっぱり好きなのね、これが。
そのときです。あたしたちを見つけて、飼育員のおじさんが真っ青になって叫んだんです。
「お客さんがアリクイに襲われてる!」
何、言ってんの。これは、あたしのファーストキス・・・ 

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別れ話

2012年05月22日 | 366日ショートショート

5月22日『国際生物多様性の日』のショートショート

メアリは俺から目を逸らせて、うつむいたまま店の外を見た。外には広大な宇宙が広がっていた。
「愛してるって言ったじゃない」
「あの時は・・・愛してた」
「君の瞳に恋してるって・・・100回も言ってくれたじゃない」
俺は煙草に火をつける。テーブルには煙草の空箱5箱・・・ヘビースモーカーなのだ、俺は。
メアリとは、この銀河宇宙ステーションのバーで知り合った。彼女のキラキラした瞳に一目惚れした。彼女も俺の煙草をくわえるワイルドな口元に惚れたそうだ。一瞬で俺たちは恋に落ちた。広大な宇宙、何百光年も離れた別々の星で生きてきた二人が偶然出会う、その愛の奇跡・・・
ステーション内の展望レストランに彼女を呼び出して俺は別れ話を切り出した。
「なぜ?なにがいけないの?」
・・・無言の俺を見つめる彼女の瞳がウルウルしている。泣かれちまう・・・やばい・・・
「私たち絶対うまくいくと思って信じていたのに・・・今、この瞬間まで・・・」
案の定、彼女の目から大粒の涙がポタリと落ちる。
「ごめん・・・理由なんて説明しても無駄だよ。気持ちがなくなった。謝れって言うんなら謝るさ。100回でも」
「どうせ、数秒間で済ませるつもりでしょう?」
「お客様、お客様!」
レストランのウェイターが声を掛ける。邪魔するな、俺たちの問題だ。
「お嬢様、こちらのハンカチをご利用ください・・・お客様、失礼ながら、店内ではこみ入った話はちょっと・・・」
「ひっこんでろ」
俺がすごむと、ウェイターは縮み上がって店の奥に消えた。
メアリが受け取ったハンカチで涙を拭く。あ~あ、ビショビショだ・・・
「君と一緒にいると・・・なんだか窮屈なんだ。寝ても覚めても君は俺だけを見続けているじゃないか」
「愛してるんだから仕方がないじゃない!」
メアリは涙を流し続ける。ポロポロととめどなく。
ウェイターがテーブルまで走ってきた。
「お客様、お願いです。お話は店の外でお願いいたします。ゴホッゴホッ、それにおタバコもちょっと・・・他のお客様もおられますし・・・」
ウェイターがタオルでテーブルに落ちた涙を拭く。大げさな奴だ。ウェイトレスがメアリの周囲の床をモップで拭く。そんなこと、客が帰ってするもんだろう?俺は癇癪をおこした。
「俺たちは大切な話をしているのに。客の話に割って入って失礼な店だ。それに、この店は喫煙OKのはずだぞ。俺だけに文句をつけるのか?」
ウェイターが慌てる。「それはそうですが・・・限度というものが・・・」
「このファック野郎!」
俺が大声でウェイターに怒鳴る。
「こ、困りますっ」
ウェイターが顔を真っ青にして、俺の口を塞ごうとする。お前に俺を止められるものか。
「サノバビッチ!」「マザーファッカー!」「コックサッカー!」
俺は散々ウェイターを罵倒した。ウェイターが俺の口を塞いでも塞いでも罵詈雑言を続けた。
ついに、ウェイターは息を切らせてその場にうずくまった。
「やりすぎよ。見て、お客さんたちみんな見てるじゃない」
確かに、店の客が俺たちに注目している。俺は周囲の奴らに向かって口を開くと、アッカンベーをしてやった。

ウェイターは店の奥によろよろと駆け込むと、ためらわずに電話を手にとった。
「宇宙ステーション警察?私はステーションレストランのウェイターです。店内で宇宙人同士のカップルが別れ話をしてるんです。女は全身に100個の目がついている宇宙人です。その目全部で泣くんですよ。そりゃもう周囲は涙の洪水です。・・・ええ、やめるよう頼みましたとも。でも無理です。男の方は、全身に口が100個もついてるんです。その口で煙草を吸うんで店内は紫煙で1m先も煙っているんです。100個の口で下品な罵声を浴びせるわ、全身の口と舌でアッカンベーして客を怖がらせるわ・・・地球人の手に負えません・・・」

 

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少年シュリーマン

2012年05月21日 | 366日ショートショート

5月21日『小学校開校の日』のショートショート



小学校四年生のとき。
掃除の時間に藤棚の周りを竹ぼうきで掃いていたら、土の中から平らな石が現れた。
アスファルトみたいな濃い石が貼り合わせてある。
土を払いのけていくと、それは舗道だった。
そう言えば確か小学校が建つ前、別の学校が建っていたと校長先生が言ってたっけ。
忘れ去られた遺跡をボクが見つけたのだ。
土を被せて舗道を隠した。他の誰かに大発見を奪われないように。
『小学生、幻の舗道を発見!』新聞やテレビの取材に囲まれるボク。
友だちの羨望の目、女子の憧れの目。
待ちに待った日曜日の昼下がり、ボクは友だちのオノジューを誘って学校に行き、竹ぼうきで発掘作業を始めた。
何の遊びだろう?怪訝な顔をしていたオノジューもだんだん夢中になった。
汗をポタポタ垂らしながら時を忘れて掘り返した。
長机ほどの舗道が見えてきた。すごいぞ、どこまで続いてるんだコレ。
そのとき当直の職員に見つかった。
「おいおい、こんな時間まで何しとんだ?帰れ、帰れ」
ボクたちは仕方なく家に帰った。
月曜日、大好きだった担任に呼ばれた。
「二人ともありがとう。休みの日まで掃除、がんばってたんだって?でもね、休みの日は学校入っちゃダメだよ」
その晩、大粒の雨が降った。舗道の窪地には泥水がたまり、やがて土に埋もれた。 

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未来浪漫

2012年05月20日 | 366日ショートショート

5月20日『ローマ字の日』のショートショート



西日の差し込む取調室。机の上にはボクが書いた本が山積みになっている。
刑事はその中の一冊を読み終えて、山の上に置いた。
『犯人は元夫殺人事件』
これはなかなかの野心作だ。題名で犯人をバラしつつトリックで勝負。で、どうだった?刑事さん。
「Dameda-na」
ダメ?どこが?
「Chanto Nihongo de Kakanakya Dame-janaika」
そこかよ。おまえたちだって明治時代はじめまでは使ってたんだぞ。漢字もひらがなもカタカナも。
明治2年、前島密は、漢字を廃止しひらがなを国字とする案を集議院に提出、即時可決された。
さらに数年後、大学頭の山内容堂や西周らによって、ひらがな表記をローマ字表記に改める案が可決されたのだ。
以来、日本ではローマ字表記しかできなくなった。ボクのような地下活動思想犯を除いては。
日本語ローマ字表記が暴挙だったとは思わない。
アルファベットを理解する、すべての諸外国に日本文化への門戸が開かれた。
国内的にも漢字の読みがわからずに悩むことがなくなった。
人名や地名の読み間違いに難儀したり、難読漢字に苦戦したり、漢字をど忘れしたり。そんな苦労は一切なくなった。
明治時代の国字改革がなければ、未来の日本は漢字偏重の歪な社会になっていただろう。
学校で児童生徒が漢字テストに悩まされたり。テレビ番組で難読漢字がクイズになったり、なんてね。
じゃ、なんでボクが漢字かなまじり文にこだわるのか?
Izure,Pasokon de Kantan ni Kanji-Kanamajiri-Bun ni Henkan-dekiru Jidai ga Kuru-to Shinjite-Iru-kara.
Hatsuon-Shita Kotoba ga Sonomama Kanji-Kanamajiri-Bun ni Henkan-Sareru Jidai datte Kuru-hazuda.
Boku niwa Yume ga Aru.
Kanji-Kanamajiri-Bun de Ohanashi wo Kaite,Netto de Futokutei-Tasuu no Hito ni Yonde-Morauto-Iu Yume.
Yonda Hito to Kanji-Kanamajiri-Bun de Komento wo Koukan-Shiau-to-Iu Yume.
Sonna Yume ga Kanattara,Donnani Shiawase darou.
Demo,Son-Toki,Ki-bo-do wo Utsu-Toki dake,Wazawaza Roma-ji wo Tsukatte-Itara Iya-dana~・・・
「Oi,Zutto Damatte,Nani wo Kangaete-Iru?」
「何って・・・ローマ字より漢字かなまじりで書いてあるほうが、こんなふうに読みやすいんじゃない?なんつって」
「Kora!Kanji-Kanamajiri de Shaberu-na!!」 

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明日はジョー?

2012年05月19日 | 366日ショートショート

5月19日『ボクシング記念日』のショートショート

ゴングと同時にオレは弾かれたようにコーナーから飛び出す。高まる歓声。
リング中央、眩いライトのもとでオレのグローブとヤツのグローブがぶつかり合う。
ヤツは左ジャブで突きながら、右ストレートを狙ってくる。
対するオレは左で突き放しながら、打ち終わりを狙って左右から応酬した。
互いに牽制しながらのワンツー、左へ左へとステップ。一進一退の10R。
ラウンド後半、ヤツの消耗を見抜いた。ガードが上下にブレはじめている。
よし、仕掛けてみるか。一気に懐に飛びこんで重心移動を見せて瞬時に後退。
スウェーと回り込みでかわそうとしたヤツの足がもつれる。やはり。
ブローの連打。さらにヤツのガードが下がる。緩いアッパーの応戦、それを見計らって一気に懐へ。
ストレートを放ったグローブがヤツの顔をかすめて汗が飛び散った。
無防備となったボディに、渾身のレバーブロー!8オンスグローブが食い込んだ。
ステップが停止、膝が曲がる。前のめりになるヤツのアゴを右アッパーで粉砕・・・
その瞬間、強烈な一打を食らったのはオレだった。
このカウンターを狙っていたのか。だが、オレの右拳もまた、ヤツのアゴをとらえたはず。
マットに崩れ落ちる。天井ライトに包まれ意識が遠のいた・・・

・・・意識が戻るとベッドだった。どうやら病院らしい。
窓辺に立っていた男が歩み寄る。ドクターだ。10Rの激戦の記憶がよみがえった。
「で、先生、どっちが勝ったんだ?ヤツか?」
ドクターの顔に困惑の色が浮かぶ。
「ヤツって誰です?ヤツの名前は?」
何言ってるんだ。ヤツってのは・・・アレ?
「じゃアナタは?アナタの名前は?」
バカな質問だ。オレにオレの名前を聞くなんて。オレは・・・オレの名前は・・・アレ?
「ご自身も相手もわからないのに、結果を知って何になります?」
そんな。10Rは覚えているのに、その前の記憶が一切ない。
「鏡を、鏡を見せてくれ」
ドクターが手回しよく手鏡を渡してくれた。
鏡の中には、よく知った顔。だが、その顔が、オレだったか、ヤツだったか・・・
「実はね、相手も同じ症状なんです。二人とも相当頭にダメージを受けたようだ。しかも目覚めるたびに記憶が入れ替わるのも一緒」
脳が腫れ上がったように痛み始める。頭を抱えて苦悶するオレの腕に、ドクターが注射をする。
たちまち意識のカーテンが閉じていく。
最後に見たのは、ドクターが窓辺に立つ姿。オレは何度これを繰り返しているんだろう?
・・・明日はどっちだ?

 

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親善ゲーム

2012年05月18日 | 366日ショートショート

5月18日『国際親善デー』のショートショート

近未来。突如飛来した宇宙人タイラー星人によって地球は危機に瀕していた。
地球防衛軍の必死の防衛が続いていた、そんなある日の夕刻である。
昼間の激戦を終えて、タイラー星人の戦闘機が続々と母船に向かって帰っていく。
すべての戦闘機が母船に収容されると、一隻の小型艇が現れた。
艇の舳先には竿が立てられ、竿先には紅地に黄金の日輪が描かれた扇が結わえつけられている。
艇には、タイラー星人のレースクィーン姿の美人がニッコリ笑顔で媚を売っている。
宇宙双眼鏡を覗いていた防衛軍長官ウッシー・ヤンググラウンドは副官に理由を尋ねた。
「射よ、とのことでございましょう」
副官の推理に長官は頷いた。
「なるほど。これはひとときの親善ゲームというわけだな。で、わが軍にアレを撃ち落とせる者がおるか?」
「ナッシュ・ワンプリーズ中尉はいかがでしょう。中尉は高射砲の腕前は地球一との評判です」
「ほほう」
「先日は飛ぶ鳥を撃ったらローストチキンになって落ちてきたほどでございます」
「よし、ナッシュにおまかせだ!」
そんなわけで呼び出されたナッシュ中尉、あまりの大役畏れ多く辞退したものの、ウッシー長官は許さない。
ナッシュは泣く泣く高射砲台へと向かった。
折から風はビュウビュウ激しくて、夕焼け空の雲間に見える艇はゆらりゆらり、扇の的は定まらない。
「神様仏様、ワンプリーズ!!」
ナッシュの祈りが通じたか、一瞬風がフッとおさまり、その瞬間を突いてファイヤー!!
みごと砲弾は扇の的に直撃。
まっ黒焦げになった艇と、チリチリ頭になったレースクィーンの姿。
「やったぁ!」
「お見事!」
地球軍からも、宇宙人の母船からも、ヤンヤ、ヤンヤの大喝采。
すると、母船から次から次へと現れ出でる、扇の的付き小型艇。
「ナッシュ中尉、やっておしまい!」
「アイアイサー!」
ナッシュ中尉は次から次へとあやまたず扇を撃ち落としていく。
「地球人をなめんなよ~!」
ウッシー長官はほくそ笑んだ。
こんな親善ゲームに興じるタイラー星人に、戦の現実の厳しさなどわからぬ。わが軍に勝算あり!

翌日、遥か上空からタイラー星人の猛爆撃を食らって、たちまち地球軍は降伏した。
ナッシュ中尉「いや~親善ゲームだとばっかり思っていたら敵の策略だったとは。騙されましたね~」
ウッシー長官「う~む、わが軍の高射砲射程距離を測定していたとはなぁ。失敗、失敗」

 

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ワレワレ詐欺

2012年05月17日 | 366日ショートショート

5月17日『世界電気通信記念日』のショートショート



近未来の日本。
首相官邸危機管理センター内の情報連絡室に、首相を先頭に国防大臣、側近がドヤドヤなだれ込む。到着を待ちかねていた博士が駆け寄る。
博士「深夜に申し訳ありません。わが国、いや、全人類始まって以来の大事件ですぞ・・・」
概要を電話で聞いていた首相が尋ねる。
首相「博士、最初に宇宙からのメッセージを受信したのはいつだ?」
博士「・・・2時間35分前・・・」
首相「2時間35分?私の耳に届くまで何故そんなに時間がかかった?トランスフォーマー:リベンジが見れちゃうぞ」
大臣「そのとおり。お子様映画が無駄に長いと小便もれるぞ!」
首相「いや、そういう意味じゃなくて」
博士「すみません、最初は何かのイタズラかと。そんな感じのメッセージで」
首相「とにかく、そのメッセージの録音を聞かせたまえ」
博士が宇宙人からのメッセージを再生した。
「ワレワレハ宇宙人ダ」
聞いたことのあるアレだ。扇風機に向かって発声したアレ、喉にアイーンの小刻みチョップしながら裏声で喋ったアレ、アレそのものだった。
首相「これをわが国の宇宙電波望遠鏡が受信したと?」
博士「そのとおり」
大臣「録音の続きは?」
宇宙人「地球人ニ告グ。ワレワレ宇宙人ハ地球侵略計画ヲ実行スル。嫌ナラ条件ヲ呑ンデモラウゾ。条件ハ後ホド連絡スル」
連絡室にいた全員が不安げに顔を見合わせる。
首相「これは脅迫だ。宇宙人がどんな条件を出してくるのやら・・・ああ、困っちゃった。なんで俺が首相のときに・・・。こんなことになるんなら早く解散総選挙しておくべきだった」
オペレーターがヘッドフォンを剥ぎ取り叫んだ。
「宇宙人から第2のメッセージです!」
博士「スピーカーにつなげ!」
宇宙人「ワレワレハ宇宙人ダ」先程の宇宙人の声だ。
「コレカラ条件ヲ言ウゾ。侵略ガ嫌ナラ日本円デ五百五十万円ヲ用意シロ。48時間以内ニ用意スレバ計画ハ中止シテヤル。ソノ金ヲ金星銀行御徒町支店ニ振リ込メ。振込先ノ口座番号ヲ言ウノデメモスルヨウニ」
首相「ちょ、ちょっと宇宙人さん?」
宇宙人「ナンダ?」
首相「宇宙人が東京に銀行口座を開いているのはおかしかないか?そもそも日本円が欲しい宇宙人がいるか?」
博士「そうか!宇宙電波望遠鏡の通信周波数を突き止めたのをよいことにお前たち宇宙人のふりをして詐欺するつもりだな!」
大臣「こんな見え透いた手をつかって、お前ら、馬鹿か?」
宇宙人「ワレワレ、馬鹿ジャナイヨ~。デモ、アンタタチ馬鹿ダッタラ、モウケモンネ~。ホイジャ、サ~イナラ~」 

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