昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

春先の、あちこち美術館巡り ~堺市:Musha展 (十一)

2020-06-07 08:00:45 | 美術展・博物館
第十三章:フス教徒の国王ボジェブラディのイジー — 条約は尊重すべし



フス派の穏健派(ウトラキスト派)はバーゼル協約によってフス派を認めさせることに成功した。
しかしパウルス2世教皇はこの協約を一方的に破棄し、ローマに従うことを求めてきた。
この時チェコの国王であったのがボジェブラディのイジーであった。
彼は、およそ150年ぶりのチェコ人の国王であり、賢明な王として知られた。
この作品では横柄な態度をとる教皇の使節に対し、玉座を蹴って立ち上がり、要求をはねのける国王の姿である。
右下に描かれたこちらを向いた少年は「ローマ(ROMA)」と題された大きな本を閉じており、ローマとの関係の終焉を表している。

出ましたねえ、我々を見つめる少年。
「正義は、存在するのか」とでも言いたげな表情=目力です。
それにしても、勝手な[一方的な条約破棄]が中世のヨーロッパにおいてもあったことだとは。
それとも、中世だから?

晩年のイジー王はフス派を敵視する教皇から和平工作を拒否され、教皇の支持を背景に神聖ローマ皇帝の位を狙うハンガリー王マチャーシュ1世(1458-1490)にモラヴィアを奪われて1469年にはボヘミアの王位も剥奪されてしまった。


第十四章:クロアチアの司令官ズリンスキーによるシゲットの防衛 — キリスト教世界の盾



1566年、勢力を拡大していたオスマン帝国(トルコ)はついにドナウ川を渡りシゲットへ侵攻してきた(シゲットヴァール攻囲戦)。
都市を守るのはクロアチアの貴族ニコラ・ズリンスキーであった。
ズリンスキーは防御を固めたが、包囲から19日後に防御施設は破壊される。
降伏勧告を拒否し決死の突撃を行うが、多勢に無勢でありズリンスキーは兵士とともに命を落とす。
ズリンスキーの妻、エヴァは火薬庫に火を放ち、同胞を巻き添えにしながらもトルコ軍を撃退した。
スラヴ叙事詩20作のうち、唯一戦闘場面が描かれた作品である。
エヴァは右手にある足場の最も高い場所に立ち、状況を見つめている。

女性は強し! を地で行くエヴァですね。
日本で言えば……鎌倉幕府を起こした源頼朝の妻、北条政子でしょうか。
周囲の反対を押し切り、伊豆の流人だった頼朝の妻となり、頼朝が鎌倉に武家政権を樹立すると御台所と呼ばれる。
夫の死後に落飾して尼御台と呼ばれた。
頼朝亡きあと征夷大将軍となった嫡男・頼家、次男・実朝が相次いで暗殺された後は、傀儡将軍として京から招いた幼い藤原頼経の後見となって幕政の実権を握り、世に尼将軍と称された。

画面を分けている暗色。これは、黒煙です。
そして、右側やや上部に、こちらに視線を投げかけている、おそらくは女性でしょうが描かれています。
その瞳は、何を訴えているのでしょうか。
わたしには、「しっかりとこの惨状を見なさい」と告げているように感じました。
「自己の尊厳、ひいては民族の誇を守らんがための所業なり!」とでも告げているような。
[One for All、All for One]


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