(七)
「そうなんですか、ほんとに良い旦那さまですね。
やっぱり、正三兄さんではだめです。
小夜子さまには、今の旦那さまがお似合いです。
そういう巡り合わせだったのですわ」
駅に降り立った小夜子に、思い詰めた表情で幸恵が口を開いた。
「実は、小夜子さまだけにお話するのですが。
両親にも話していないことなのです」
「あら、まあ。そんな秘密事を、あたくしに話してくださるの?」
満更でもないのだが、面倒なことに巻き込まれるのも困ると考える小夜子だ。
「実は、ご相談というか…お教えいただきたいのです。
兄から、返事が参りまして。あたしに、上京して来いと言ってくれました。
それで来春の卒業後に、村を出たいと思っております」
もじもじと体を動かす幸恵だが、次の言葉中々出てこない。
焦れ始めた小夜子が
「何かやりたいことでもおありになるの?
タケゾーにお願いしましょうか? 仰ってみて」と、投げかけた。
「お怒りになるでしようか? ご相談と言うのは、他でもありません。
あつかましいとお思いになるかもしれませんが、小夜子さまにおすがりしたいのです」
「ですから、何をなさりたいの?
それを言ってくれなきゃ、お返事のしようがないわ!」
焦れったさから、つい声を荒げてしまった。
「そうなんですか、ほんとに良い旦那さまですね。
やっぱり、正三兄さんではだめです。
小夜子さまには、今の旦那さまがお似合いです。
そういう巡り合わせだったのですわ」
駅に降り立った小夜子に、思い詰めた表情で幸恵が口を開いた。
「実は、小夜子さまだけにお話するのですが。
両親にも話していないことなのです」
「あら、まあ。そんな秘密事を、あたくしに話してくださるの?」
満更でもないのだが、面倒なことに巻き込まれるのも困ると考える小夜子だ。
「実は、ご相談というか…お教えいただきたいのです。
兄から、返事が参りまして。あたしに、上京して来いと言ってくれました。
それで来春の卒業後に、村を出たいと思っております」
もじもじと体を動かす幸恵だが、次の言葉中々出てこない。
焦れ始めた小夜子が
「何かやりたいことでもおありになるの?
タケゾーにお願いしましょうか? 仰ってみて」と、投げかけた。
「お怒りになるでしようか? ご相談と言うのは、他でもありません。
あつかましいとお思いになるかもしれませんが、小夜子さまにおすがりしたいのです」
「ですから、何をなさりたいの?
それを言ってくれなきゃ、お返事のしようがないわ!」
焦れったさから、つい声を荒げてしまった。
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