それから何回かのデートを重ね、そのたびにホテルで情交をかさねた。
そしてそれはもう、あの夜の麗子とのからみではなかった。
相かわらずの麗子主導だった。
男は、ただ振りまわされた。
次第におざなりになり、奉仕活動のような性〇に、男はいらだちを感じていた。
それ故ということもないのだが、両親への挨拶については話題にのぼらなかった。
麗子にしても、身体を許したという安心感からか、口にすることはなかった。
それよりも、男との性〇に没頭していた。
美容院で、素知らぬ顔をしながらその類の記事を読みあさった。
そして、男をなじることも 、ままあった。
〝エロ小説まがいのことができるか!〟と、反発しつつも 、ヒステリックな麗子の剣幕に圧倒されるのがおちだ。
結局は、麗子の言うがままだった。
ますます、男の気持ちのなかに ”早まったかナ”という思いが募っていった。
こんやの麗子は、いつもの麗子ではなかった。いつになく不機嫌だった。
フロントのちょっとした勘ちがいに 、激怒した。
予約を入れていたはずの、窓からの景色が気に入ったわという部屋が、取れていないと、言われたのだ。
麗子自身が予約を入れたのである、明らかにホテル側のミスだとなじった。
一応は名の通ったシティホテルだ。
フロントマンにもプライドがある。
当初はミスを認めずに、麗子の問題だと言いつづけた。
たがいの主張を言いあううちに、そのフロントマンの名前の聞きちがいによるミス―佐藤を加藤と聞きまちがえて、予約がないと答えたのだ。
再度の確認を怠ったがゆえのことだとわかり、そのことをエントランス中に聞こえるほどの大声でなじった。
なにごとかとチーフフロントマンがあらわれて、幸いなことに麗子の希望する部屋にまだ予約客が入っていないことがわかり、急きょ部屋を入れ替えることになった。
しかし麗子の怒りようは尋常ではなかった。
取りなそうとする男に対して、
「あたしがわるいっていうの!」と、ますます声が荒くなる。
当のホテルマンは控え室に引っ込んでいた。
チーフホテルマンがひたすらに詫びのことばをつづけ、次回での利用時につかえる無料宿泊券をうけとることで話がついた。
といっても麗子が納得したことではなく、男が強引にことをおさめたのだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます