(十二)そのニヒルさが
青春の真っただ中にいるわたしの夢といえば、小さなことだと笑われるかもしれないけれども、やっぱり異性との交際につきる。
遠くからじっと見ているだけのわたしが、ゆめ見てはため息を吐いていたわたしが、当たって砕けろ! と。
玉砕の憂き目にあったこともあるけれども、デートにこぎつけられたことも。
二度三度とデートをかさねて、ゆっくりながらも階段を上がっていく。
手をにぎることで、どぎまぎした初デート。
二度目は相合傘で肩を抱き、そして三度目のデートで甘いキス。
思いが達せられたと歓びに満ちあふれつつも、一瞬間過ぎるきょだつ感。
温かいぬくもりに包まれながらも、とつじょ襲いくるくうきょ感。
デートの間中、一瞬のかげりも見のがさない。
そしてそのかげりに、どれ程にこころを痛めたことか。
相手に見せる笑いの中に、どこか暗さといったようなものが現れ出ているらしい。
そのニヒルさがたまらないという女性もいた。
ネクラと称された眉間にしわをよせる仕種が、いまでは男の顔だと称される。
笑ってしまう、まったく。
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