昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

2023-03-18 08:00:03 | 小説

(四)陶酔する

入場料を支払ってそれからはじめて、幻想の世界へと入ることができる。
そして二重合わせのまくの間を抜けて、ミラーボールから発せられる色とりどりの光線の洗礼を受ける。
ここでたじろぐことなく、少年は歩を進める。
黒服の男は幕の外からは中に入らない。
ここには二度目となる少年は、迷うことなくカウンターへと向かう。

「いらっしゃい!」
バーテンの声が、少年の耳に心地良い。
常連客を迎えるが如きの声掛けが嬉しい少年だ。
といって、初めての時にも同じように声掛けがあったけれども。

「どうも」
カウンターの隅に進む。
いかにも常連客が座る席の筈だと、少年は考えている。
しかし今夜は先客がいる。
ブランデーらしき、大きなグラスを傾けている女がいる。
ひとつふたつ席を空けてと考えた少年に、バーテンが言う。
「すみませんね、お客さん。
女性のおとなりで良いですか? 
こんやは満員になりそうなんで」

(こんやはがんばりなよ)。
バーテンダーのこころの声がする。



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