goo blog サービス終了のお知らせ 

昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[青春群像]にあんちゃん  ((女学園に入学したほのかは)) (四)

2025-08-10 08:00:14 | 物語り

 学校のうらてにある土手の草むらにふたりそろって腰をおろして、流星群をここで観ることにした。
「ほのかね、毎日ね、ばあちゃんとお話ししているんだよ。
あそこの樹のしたでね、すこしの時間だけど、ばあちゃんが話しかけてくれるの」
「そうか、ばあちゃんと話をしているのか。そりゃ良かった」
 次男の肩にあたまをのせたほのかで、柑橘系のかおりが次男の鼻腔をくすぐる。
「知らない人が見たら、にあんちゃんとほのか、恋人同士にみられるだろうね」

 ほのかの口からこぼれたそのことばが、次男の気持ちをざわつかせた。
ドクドクと波うつ心音が、しだいに激しさを増してくる。
つねづね妹だと言いきかせてきた次男で、なにげなくもらしたであろうほのかの「恋人」ということばが、何度もなんども頭のなかでひびいた。

「ばかなことを言うな。ほのかは妹だ!」
 おもわず強い口調になってしまった。
そのあまりの怒声に、体をびくつかせたほのかだった。
「だってさ、ばあちゃんがさ、ほのかがまだ小学生のころにさ、よく言ってたもん。
『大きくなったら、ナガオ兄ちゃんのお嫁さんになるかい』って。
でさ、ほのかさ『なる、なる。あんちゃんとにあんちゃんの嫁さんになる』って言ったの。
ばあちゃん、大笑いしてた」

 衝撃だった。
“あんちゃんの嫁さん? 俺じゃなくて、あんちゃん? 
そうか…やっぱり俺はよそ者なんだ”と、疎外感をかんじる次男だった。
“本当の家族にするには…”というシゲ子の真意がわからぬ次男だった。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。