学校のうらてにある土手の草むらにふたりそろって腰をおろして、流星群をここで観ることにした。
「ほのかね、毎日ね、ばあちゃんとお話ししているんだよ。
あそこの樹のしたでね、すこしの時間だけど、ばあちゃんが話しかけてくれるの」
「そうか、ばあちゃんと話をしているのか。そりゃ良かった」
次男の肩にあたまをのせたほのかで、柑橘系のかおりが次男の鼻腔をくすぐる。
「知らない人が見たら、にあんちゃんとほのか、恋人同士にみられるだろうね」
ほのかの口からこぼれたそのことばが、次男の気持ちをざわつかせた。
ドクドクと波うつ心音が、しだいに激しさを増してくる。
つねづね妹だと言いきかせてきた次男で、なにげなくもらしたであろうほのかの「恋人」ということばが、何度もなんども頭のなかでひびいた。
「ばかなことを言うな。ほのかは妹だ!」
おもわず強い口調になってしまった。
そのあまりの怒声に、体をびくつかせたほのかだった。
「だってさ、ばあちゃんがさ、ほのかがまだ小学生のころにさ、よく言ってたもん。
『大きくなったら、ナガオ兄ちゃんのお嫁さんになるかい』って。
でさ、ほのかさ『なる、なる。あんちゃんとにあんちゃんの嫁さんになる』って言ったの。
ばあちゃん、大笑いしてた」
衝撃だった。
“あんちゃんの嫁さん? 俺じゃなくて、あんちゃん?
そうか…やっぱり俺はよそ者なんだ”と、疎外感をかんじる次男だった。
“本当の家族にするには…”というシゲ子の真意がわからぬ次男だった。
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