じっと聞き入っていた孝男が
「父さん。なにか欲しいものはあるかい。食べたいものを言ってよ、用意するから」
と、声をかけた。
「孝男。お前は良い嫁さんを貰ったな。
いいか、道子さんを大事にするんだぞ。
いつまでも、昔のことにこだわっちゃいかん」
暗に初恋の女性を想い続ける孝男に苦言を呈した。
「道子さん。もうここまでだよ、わたしも。
定男の不始末では、本当に迷惑をかけた。
良くやってくれたね、ありがとう。
どうやら、ばあさんが迎えに来たようだ。今までありがとう。
みんな、ありがとうな」
その言葉が最後だった。
孝道の葬儀には、しっかりと見送ることができたほのかが居た。
弔問に訪れた人すべてに、深々と頭を下げるほのかが居た。
そして出棺前の最後のお別れもしっかりと済ませることができた。
斎場の煙突から立ち上る煙を目で追いながら、次男の袖口を引っ張った。
「にあんちゃん。あたし、学校に行ってみたい。ばあちゃんとほのかの母校に」
そしてせわしなく動き回っている道子に
「ばあちゃんに会ってくる。学校の、あの木の下に行って来る」
と声をかけた。
「そうだね。おばあちゃんと、しっかりお別れしておいで」
突然に涙があふれてきた。
夕焼けの映える校庭のあの木の下で、小夜子の目から大粒の涙がこぼれた。
何年ぶりかで立ち寄った婆ちゃんとほのかの母校の校庭で、やっとやっと、祖母のシゲ子に
「ありがとう、婆ちゃん。さよなら、婆ちゃん」
と、告げた。
「にあんちゃん、にあんちゃん。あたし、あたし‥‥。ばあちゃんに、さよならが言えたよ」
「父さん。なにか欲しいものはあるかい。食べたいものを言ってよ、用意するから」
と、声をかけた。
「孝男。お前は良い嫁さんを貰ったな。
いいか、道子さんを大事にするんだぞ。
いつまでも、昔のことにこだわっちゃいかん」
暗に初恋の女性を想い続ける孝男に苦言を呈した。
「道子さん。もうここまでだよ、わたしも。
定男の不始末では、本当に迷惑をかけた。
良くやってくれたね、ありがとう。
どうやら、ばあさんが迎えに来たようだ。今までありがとう。
みんな、ありがとうな」
その言葉が最後だった。
孝道の葬儀には、しっかりと見送ることができたほのかが居た。
弔問に訪れた人すべてに、深々と頭を下げるほのかが居た。
そして出棺前の最後のお別れもしっかりと済ませることができた。
斎場の煙突から立ち上る煙を目で追いながら、次男の袖口を引っ張った。
「にあんちゃん。あたし、学校に行ってみたい。ばあちゃんとほのかの母校に」
そしてせわしなく動き回っている道子に
「ばあちゃんに会ってくる。学校の、あの木の下に行って来る」
と声をかけた。
「そうだね。おばあちゃんと、しっかりお別れしておいで」
突然に涙があふれてきた。
夕焼けの映える校庭のあの木の下で、小夜子の目から大粒の涙がこぼれた。
何年ぶりかで立ち寄った婆ちゃんとほのかの母校の校庭で、やっとやっと、祖母のシゲ子に
「ありがとう、婆ちゃん。さよなら、婆ちゃん」
と、告げた。
「にあんちゃん、にあんちゃん。あたし、あたし‥‥。ばあちゃんに、さよならが言えたよ」
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