昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

2023-04-08 08:00:05 | 物語り

(七)シャウト、シャウト! 

“バババ、ドンドドドドン!”
“チキチョン、チキチキチキチョン、チョン!”
“ブンバンバンブンブンブンバン!”
“ティーヴイィィ、ディーー、チューン、ティティーー!”
“あの娘が、あのこが、云ったのさー!”

とびら扉を開けたとたんに、少年の耳に飛び込んできた。
少年には、騒音としか聞こえない。
ロック音楽と称されて、同年代の少年たちが狂喜している。
しかし少年には、どうしても異質な音楽だった。
シャウト、シャウト! と歌うが、大声で叫ぶことになんの意味があるというのか。

バズトーンと称される重低音が、お腹にズンズンと響く、そしてひびく。
ピックで弾くはずのギターで、
“チューン、ティティーー!”
という音を出すのが理解できない。
「大人のジョーシキは俺たちのヒジョーシキ! 俺たちのノーマルは大人のアブノーマル!」
とボーカルがうそぶく。
少年には上すべりに聞こえる歌詞が、持てはやされる世界へ。
“Wellcome to Rock’n Roll!”

そこには少年の思い巡らせた世界はない。
色とりどりの光を発するミラーボール、壁と言わず床そして天井に容赦なく叩きつける強烈な光。
それが、もうもうと立ち込めるタバコの煙に取って代わられている。
その煙に色があり、赤、青、そして白とさまざまな色だった。
しかし濁った色でしかなかった。
そして光ではなく、色でしかない。
少年の心には投影するもののない、色だった。



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