桂木嶺のGO TO THE THEATER!~Life is beautiful!~

歌舞伎中心とした演劇・クラシック音楽・美術展・映画など芸術全般のレビューを書きます。優れた芸術は応援します!

匂いたつ男のエロティシズム~九月歌舞伎座秀山祭昼の部「幡随長兵衛」 夜の部「逆櫓」~吉右衛門さん、フェロモン爆発!

2017-09-02 08:06:43 | 吉右衛門さん関係

(※松竹(C)歌舞伎美人のHPよりいただきました)

 

見てください、この匂いたつような色気とリリシズム!

吉右衛門さんが主宰する「九月歌舞伎座秀山祭」が1日初日を迎え、さっそく行ってまいりました。

結論からいえば、もう「男のエロティシズムとダンディズム」いっぱいのすぐれた舞台の誕生です。

ぜひたくさんの方に見に行っていただきたいと思います!

 

やはりなんといっても、すばらしいのは、昼の部の「幡随長兵衛」!!!

私が見た中でも、過去最高の長兵衛を、吉右衛門さんがみごとな描写で演じておられました。

まず、客席から登場するときの圧倒的な華やかさとカリスマ性が、吉右衛門さんの場合図抜けていることが素晴らしい。

また、江戸一番の大立者という風格が、ごく自然にそなわっているのが見事です。

「この江戸じゅうにゃ、俺を待っているひとがたくさんいるのだ」というセリフが、

彼でないと、まったくリアリティをもって伝わらないのですね。

そして、二幕目の、長兵衛の家での、女房お時とせがれ長松に対する、長兵衛の述懐は、

今回さらに進化と工夫をとげ、見事な成果をあげています。

「おい長松、おめぇは、こんな稼業はついじゃいけねぇよ」というせりふ、

昔は吉右衛門さん、もっとなかせよう、なかせようとしていたんですが、

今回は、江戸の青空のごとく、からりとさわやかにいってのけたので、

かえってそれが悲しみを際立出せて、泣かせてくれました。

水野十郎左衛門(染五郎さん好演)との対決も、しずかな緊迫感にみちており、

ときどきぎらりとするような殺気をはらむのが、またこのひとらしくて素晴らしいですね。

まさに、江戸の香りのする大歌舞伎といえます。

まわりも歌六さん、又五郎さん(二役ご苦労様)、魁春さん、錦之助さん、

歌昇さん、種之助さん・・という手堅いかおぶれで、

黙阿弥のセリフの良さをぞんぶんにこの劇団で味わうことができました。

「湯殿の長兵衛」の場面も凄艶な最期、死にゆく長兵衛を抱える人々が、ピエタのように美しかったです。

 

そして夜の部の「逆櫓」の樋口次郎兼光!!

久しぶりにみたので、ちょっと物語を思い出しながらみていましたが、こちらも大変傑出した出来栄えなので、

好劇家のみなさんは必見ですね!

まず花道の出が素晴らしいのはいうに及ばず、時代と世話、両方のセリフの活殺自在な大播磨・吉右衛門さんの魅力が

舞台いっぱいに横溢していて、圧巻です。

また、舞台のすみずみにまで、吉右衛門さんの神経がゆきわたっているのがわかります。

「権四郎、頭が高い!」と喝破するときの迫力はさながら鬼神マルスのよう。

終盤の立ち廻りでも、地の底から吹き上がるマグマを感じさせて、思わず背筋が凍り付くようでした。

歌六さんの権四郎がすぐれた出来栄え。本当のわが孫・槌松への想いと、現在の血のつながらない孫への愛惜の想いが

ドラマに奥行きをもたせています。

 

この二本の歌舞伎は、現代の歌舞伎の最高峰のものであり、今日の歌舞伎の水準ともいえる好舞台といえるでしょう。

その他の作品については、また別のページにて。

劇場へ急げ!!!!

 



最新の画像もっと見る