萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

設定閑話:湖冬の富士

2013-02-10 10:30:22 | 解説:背景設定
零下のリアル



写真は山梨県郡内地方の山中湖です。

作中にも冬富士や凍結する山中湖の描写が出てきます。
いずれも東京近郊のリゾートといったイメージですが、その冬は甘くありません。
山中湖の厳寒期は夜間、零下20度も珍しくない為に湖水も凍りつき、村内も一度積もった雪が長く残ります。
当然のよう富士山の気温は推して測るべし、太陽光を反射する鏡面状態の雪はコンクリートのよう固くアイゼンも利き難いとか。
その山頂は冬期の北西風が荒れやすく湧きだす雲が消えて現れ、悪天候を起こしやすいため天気図の読取りが必須です。
この風は「空気の塊」と言われる猛威をふるい、八千メートル峰のプロフェッショナルすら滑落し落命しています。

掲載写真は昨日の風景ですが、湖面2/3ほどが凍結していました。
写真下部、薄い氷の部分があるのが解かるでしょうか?こんなふう氷の厚さは均一ではありません。
水は温度によって体積が変化し、膨張と縮小を繰り返すために氷は割れ、また凍ってを繰り返しています。
その上から降雪が覆うため、外見上は平面なめらかな湖上の氷も内部は凍結状態に差がある亀裂の状態です。
そこに体重の負荷が点になって掛かると亀裂から氷が分解し、割れてしまう危険性があります。

なので氷に乗らないよう立看板もあるのですが、観光客に方は乗ってしまうんですよね。
昨日も夕刻17時すぎ、零下2度くらいかな?っていう時に乗っている人を発見してしまい。
学生カップルらしき男の方が湖上に出ていたんですけどね、コッチは写真撮りながら気になります。
もし嵌っても水深1mは無いだろう辺りにいましたけど、急に氷水に漬かれば心臓発作で即死もあるんですよね。
女の子が止めてるんですけど、カップルでいる時はイキがっちゃうタイプだったようで男はナカナカ止めませんでした。
アノ手の男って言うほど意地張って止めないんですよね、コッチが撮影中に帰って行ったから良かったけど。

もし氷の湖に墜ちれば、即死は無くても低体温症を起こす可能性は十分あります。
で、駐在所も消防署も遠いってコトを考えるべきです。便利な都心と違って救助を呼んでも即応できません。
つい先日も、ネット書込みで「アイゼンとピッケルを持った人を奥多摩で見た」ことを笑いネタにするのを見かけましたが。
こういう書込みが無意味なプライドを喚起して、湖氷に乗るような男を生んで結果、事故を起こすんだろうなって思います。
そういう都会ルールに馴れきった方が山や川で事故を起こして、地元の関係ない人まで巻き込んでしまうのが最近の遭難です。

今冬の富士は吉田口で吉田署山岳救助隊がチェックされていますが、テレビには装備ヤバい方が映っていてビックリです。
夏富士のイメージも手伝って「自分は大丈夫」って思っちゃうんでしょうか、そういうの助長するブログ記事も見かけますし。
確かに冬期でも天候に恵まれたら平気って可能性はあります、けれど山は最悪の状況も考えて登る「自助」が当然のルールです。
天候に甘えることも立派な他力本願、低レベルな危機意識が山岳レスキューや小屋主の方達を生命の危険に晒します。
リアルな現場として、遭難事故は小さな油断と自己過信、そして予想外の不運から発生します。



冬の雪、山も湖も銀いろ輝いて本当に美しいです。
低温の季節は凍結も積雪も危険を呼びます、それでも自分は冬って好きです。
でもね、他人に迷惑をかけないコトが自然の世界に行ける資格、って自覚が大事だろうって思います。
先ず自分の身体能力をきちんと把握する、その範疇を遵守することは自分だけではなく周囲への責任で義務です。

いま2月、暦は春でも日本は厳寒期を迎えます。
小説の舞台である奥多摩も氷雪のシーズン、都心近郊でも山は山の冬。
もし出掛ける方ありましたら、きちんと安全を守って冬シーズンを楽しんで下さい。
それは春も夏も秋も同じです、こんな風景に小説のキャラクターたちは生き、物語は紡がれています。









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2 コメント

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Unknown (n.n)
2013-03-02 08:21:04
「雪 2トーナメント 準々決勝戦」から来ました。
文章を読ませていただいて、大変勉強になりました。

自分は冬山に登る根性はありません。
冬の山中湖に近づく自動車用装備もありませんから、素晴らしい風景に近づくことすらできません。
こんな美しい風景を撮影できるなら、と考えはしますが、夏の間スタッドレスタイヤをこの狭い家のどこに保管しておけばいいんだ、と躊躇してしまいます。

山中湖にも「危険」の看板がいっぱい設置されていましたっけ。
写真を撮るものとしては無粋で嫌いなんですけど、それで人の命を救えるなら仕方ないのでしょうか。

どこからが危険か線を引くのは、個々の裁量に任される部分がありますね。
多分自分のようなどっち着かずのものは、そこへ行っても咎められ、行かなくてももったいないと笑われそうです。
返信する
n.nさんへ ()
2013-03-02 22:42:50
こんばんわ、コメントありがとうございます。
拙い文章と写真なのになあと、お恥ずかしいです。照

たしかに危険の線引き、確かに個々の裁量が大きいですよね。
よく自己責任と言いますが、万が一の時は他人に迷惑かけるのが現実ですし。

山中湖あたりも、道路状況を選んで行くのならタイヤチェーンのみでもイケます。もちろん周辺に住むならスタッドレスは必須です。
この写真を撮った時はルートをく選んで、様子見しながらチェーンを積んで行きました。車道にはアイスバーンが無かったのでノーマルタイヤにて到着しています。
自分の装備と実力を計り間違えなければ、結構いろんな場所に行けるモンですよ。


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