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君の知らない物語~ある恋と愛の物語END

2014-11-20 22:22:52 | 小説の解説
もともとは、美奈子にとってのバッドエンディングを想定して書こうと思っていました。
が、早々にあきらめました。


スズと純平の物語は、もともとあんなにちゃんとした別のストーリとして書くつもりもなくて
レイたちの話の中のほんの少しのプレイバック的に書けたらいいと思いましたが、
思いのほかある程度はちゃんと書かないと、次のストーリーにつなげられないと思って、単体で書く破目になりました。

スズはレイと重ね合わせたもう一人の主人公です。
スズと言う名前はですね「れい」というひらがなの漢字変換をしていったら「鈴」と出てきましたので、そのまま「スズ」になりました。純平さんはドラマに出てくる役名をそのままもらいました。

さてさて、私の中での今回の小説のテーマは「恋と愛」というとてもシンプルで複雑なものでした。
そして、もうひとつのテーマが「自己犠牲」です。

恋と愛ですが……

恋というものは不確かな想いが大部分であると思います。
とてもきらきらしていて、ピュアで、せつなくて、ドキドキして。
でもある意味、その思いだけで満たされるものでもあります。
非常にあいまいでもあり、不確かでもあり、揺れ動く気持ちでもあり
我儘でもあり、自分勝手でもあります。
そして恋に破れても簡単には死ねないんですね。多くの人が泣きながらも次の恋を探せます。
人が心豊かに生きていくには恋は非常に素晴らしいスパイスであると思います。
そして、憧れと混同しやすいです。

亜美ちゃんはレイに恋をしていました。亜美ちゃんはレイちゃんとキスをしたいとか抱き合いたいという願望よりも、もっとレイちゃんのそばにいたい、レイちゃんの味方でありたい、理解者でありたい、助けてあげたい、そういう思いが強かったのでしょう。愛していないというわけではないかもしれませんが、レイちゃんを好きだという気持ちが亜美自身を幸せにさせてくれる。
そういう恋です。

小説の中ではあまり詳しくは書かなかったのですが、みちるも「それなりに」レイのことが好きです。レイといると楽しい。レイが笑顔になると嬉しい。気が合うし、何よりもレイがみちるを見つめる瞳がとてもまぶしくて輝いていて、それが心地いい。みちるは自分を好きでいてくれるというレイの感情に酔いしれていて、またそのことをちゃんと自覚しています。
それは、誰もが一度は経験していることかもしれませんが、自分を好きだと思ってくれる人に対して、人は好意を持つことがありますよね。みちるの恋しいという感情の半分はその想いです。むろん、みちるもレイを愛していないというわけじゃありませんが、みちるはとても頭がいいので、こういうあやふやな感情よりも自分自身が確かな愛情を持つまでは、彼女の手を取るべきではないと考えていました。そして、それよりも美奈子の方がレイにはふさわしいのではないか、という気持ちが心にもありました。

美奈子という人物だけが、一点の曇りもなくレイちゃんを最初からずっと愛していた人物です。
最初からそういう設定で書いていました。なので、美奈子にとってのバッドエンディングというのは、みちるとレイがくっついて、美奈子は永遠に報われないという結末を考えていました。が、どうしても純平の願いを昇華させるためには、やはり美奈子とのハッピーエンディングにさせるべきだろう、と考え直しました。考え直した瞬間に、変装してみちるのふりをするという内容を思いつきました。美奈子がみちるに縋りついて「レイちゃんを助けて」と懇願する、その苦しさを想うとなんと痛々しいんだろうと今でも書いた私がしみじみします。愛する人を助けるためなら、自分じゃない人に抱かれても構わないと思うのは、美奈子だけしかいません。

そのあたりがもう一つのテーマの自己犠牲につながります。

亜美ちゃんもまた、恋しいという想いを持ちながらも、一度振られてしまい、そのあとはレイちゃんが幸せになればいいと願います。そのために最終的には美奈子の手助けをし、そっとサポート役に回ります。
みちるもまた、お互いに「恋しい」と想い合っていると知りながらも、美奈子の愛の深さに圧倒され、自分ではレイを救えないと美奈子にレイを託します。美奈子に縋りつかれたみちるは、自分の想いを殺してレイの命を救う道を選ぶしかありませんでした。
そして、美奈子はレイのためなら何でもするという自己犠牲しかない人間です。自らの欲求を一切排除された愛だけです。
亜美ちゃんとみちるは、心の中ではレイに何か見返りのよなものを求めています。想いを伝えたい、想われていることを確認したい、反応を知りたい。などなど。それは恋をしているとよく見られることです。
美奈子はそういうすべてを一切求めていません。ただ、愛する。愛する人の幸せを守る。愛する人の未来を守る。それだけです。

そのあたりを、結構こだわっていました。美奈子だけが「愛」であり、みちると亜美ちゃんが「恋」であると明確にしていました。美奈子がレイちゃんの恋心を探ってみたり、反応を気にしてみたりなんてすることはなく、寧ろみちると幸せになってほしいとさえ思っています。完成された愛の形であり、ゆえに、亜美ちゃんみたいに分かりやすいものではないために、レイはまったく気づくことがありませんでした。


自己犠牲はレイもです。背負わされた呪い。誰にも言わずにスズを1人で闇に葬り、1人で死ぬ覚悟をしてさまよいます。仲間を想い、自分が死んだあと、仲間たちが悲しまないようにと願いながら、耐え続けます。自分がもう、ずっと前から美奈子と寄り添って生きてきたと知ったとき、レイはとても清々しい想いを抱き、何の後悔もなく未練もなく、優しさに満ち満ちたまま死ねると、ホッとしました。このあたりのシーンは結構何度も書き直し、悩みました。今思うと、もっと美奈子との掛け合いのシーンを増やせばよかったと思います。あまりしつこくしたくはなかったので、美奈子がレイを背負うシーンを何度も入れました。レイは美奈子にだけ無様を見せてばかりいます。

ネタを練っている最中に、みちるは、はるかに好きだと言われていて気持ちがぐらついているという設定にしようか否か考えていたりもしましたが、これ以上、面倒なことは嫌だと思いました。今回、はるかはただのアッシーです。


人がわかるのは恋しかないというのは、確かにそうかもなーって思います。でも、実は恋って「勘違い」とも言われるものなんですよね。あの人のこと好きかも~とか、気になる~とか。いやまぁ、これは余談です。恋している人の嫌なところ見て一気に冷めて、「あれ、勘違い」みたいな。。。。


なりふり構わず、愛する人のためになんでもする美奈子こそが今回の愛の象徴であり、愛そのものだと思います。
みちレイ好きっておっしゃってくださる人には、期待を裏切る結果で申し訳なかったのですが……


私、今、31歳なんですけれど、たぶんこれは20代前半とかには想像もできなかったであろうと想います。地に足付かない恋をして、追いかけることばかりする若さも好きだし、今だってそうできるものならしたい(笑)
ですが、無様をさらけ出しても、強く人を愛する人間でありたいと、想いながら歳をとってきた、そんなときに思いついた小説です。

相変わらずへたくそなのですが、くそ長い小説にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

レイは美奈子を深く愛するだろうし、美奈子は変わらずレイを愛し続けると思います。
亜美ちゃんもみちるも、レイが幸せにほほ笑む姿を見ながら、この人を好きでよかったと思っているでしょう。




余談ですが、純平がスズにあげた指輪は、いずれ彼自身がスズを抱くことで呪いをかけてしまい、殺したのではないかと思うのです。……なんてね。思っただけです。。。


みちレイは、また何か書けたら書きます。


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