ポスト「京」コンピューターの名称が「富岳」に
ポスト「京」スパコンの名称、「富岳」に決定 - マイナビ
日本最高性能のコンピューター(予定)の名称に日本の最高峰である山の名称を与えることはおかしいことではないものの、(1) 外国などでも散々「ポスト京」で報道された後で遅過ぎやしないか? (2) 富岳の次はどうなるのか?とも思います。
例えば「Post K computer」でGoogle検索すると1,380万ページがヒットするが「fugaku computer」で検索しても僅か71,000ページしかヒットしない。名称が新しいからということもあろうが既に「ポスト京」で定着してしまっている印象が強い。ちなみに日本語および英語の公式サイトも「Post K」を使っている(https://www.r-ccs.riken.jp/jp/post-k、https://postk-web.r-ccs.riken.jp/)。正式名称を後で決定予定なら「フラッグシップ2020」のような計画名で呼称した方がよかったのではないか。
Hisa Ando氏が「富士山は日本国内では高さは一番ですが,世界的に見ればより高い山はたくさんあり,それが「富岳」という命名にも反映しているのではないかという見方もできます」と述べられていて苦笑してしまった。
コンピューターは日進月歩の技術なので、仮に2021年にTop500などで富岳が1位になったとしても、すぐに米エネルギー省のAuroraかFrontierや、国内でも東大・筑波大などのコンピューターに追い越されるはずで、さらに理研自身も2030年までには次世代コンピューターを導入しているはずである。そういう存在に「富岳」と名付けるのはあまり感心しない(もし、フラッグシップ=富岳とするなら、今後は富岳-1・富岳-2とかにするならアリかもしれない)。
Huawei問題
Huawei: ARM memo tells staff to stop working with China’s tech giant - BBC News
BBCがArmのHuaweiに対するライセンス供与を停止するとBBCが報じている。GoogleがAndroidのライセンス供給停止やAmazonのHuawei製品取扱停止などホットな話題が続いているが、このニュース記事の信憑性にはいささか疑問が残る。
米国企業であるGoogleやAmazonのアクションは5月15日の米商務省産業安全保障局(BIS)の発表および米合衆国の大統領令に応じたものだが、Armは登記上は英国の企業である(※注:同社の主力製品の半分以上を米国西海岸を含む英国外で設計されているが、本社は英国である)し、英国は米国ほど姿勢を鮮明にしていないため、米国法に従った場合に英国法に抵触する可能性は否定できない。これはGoogleやAmazonが即座に行動を起こしたのに対し、Armの行動がBBCの報じたような「メモ」「関係者の話」のような曖昧な形となっている現況ではないかと邪推する。
ここでの疑問はHuawei/HiSiliconは将来のアプリケーションプロセッサー(将来のArm製IP)を利用できないとして、既に台湾TSMCで製造されているKirin 980(Arm設計のCortex-A76・Cortex-A55・Mali-G76を採用)やKunpeng 920(ArmよりArmv8.2-Aアーキテクチャライセンスを供与)にまで影響するのか?という点である。ちなみに、いくら中国がコピー天国だといっても製造は台湾TSMCなのでArmがライセンス供与を停止した時点で製造は継続することはできなくなる。
米当局は3カ月間の猶予を設定したようだが、いずれにせよHuaweiの西側諸国における死に体化は必然のように思われる。
思うに、ZTEの一件やSupermicro製ボードに埋め込まれたと報じられたスパイチップの騒動の一件といい、中国はいささか米国の警告を軽視していた感じがする。これらは米国が中国を軍事的・政治的脅威として識別したというシグナルである。ちなみに日本のメディアでも、例えば昨年9月にダイヤモンドは「米国が最も潰したい企業」という記事を掲載しているが、それが実行段階に移ったように見える。
特に昨年10月のSupermicro製ボードの騒動は、これが何の問題なのか明確に示したように思われる。
実際には、PCサーバーのメインボードに人目につかない小さなチップを追加したぐらいでは情報漏洩を起こすことは困難に思える。Intel AMTのように主要プロセッサーに統合させる場合を除き、OSに認識されずドライバーを必要としないようなハードウェアで効果的な情報漏えいを行えるとは考え難い(逆の言い方をすれば、PnPと標準ドライバーで動いてしまうスパイチップであればその限りではない、ということではあるが)。例えばAmazonの通信の多くはアプリケーション層でTLSなどで暗号化されているであろうし、ストレージに保存される機密情報はIntel CPUと直結したIntelチップセット・TPMで制御されるから、仕様外のハードウェアが暗号化されていない機密データにアクセスすることは困難である。そして、仮に暗号化されたデータが漏洩したとしても、Amazonの大規模トラフィックを解読するには天文学的な労力を要する。つまり、仮にスパイチップが存在したとして現実的に脅威だったかといえば疑問が残る。さらに本件ではSupermicroもAmazonも否定しており、スパイチップの存在を示す写真などの証拠も出てきていない。
それでも本件が大きな騒動となったのは、これは技術的な問題だったからではなく、中国製造製品への依存による軍事的・政治的に深刻な問題が露見したからである。
Huaweiが販売するようなAndroidの場合は問題はより深刻である。なにせマイクロプロセッサー・OS・アプリケーションにアクセスできる(=暗号化されていない機密データにアクセスできる)から、実際はどうであれ、いったいどんな情報が漏洩しているか計り知れない。
誰もが「あの国ならやりかねない」「これは軍事的・政治的な脅威である」と認識し、米国政府に行動を起こす動機と機会と正義を与えたからである。
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