次世代Nintendo SwitchとNVIDIA SoC
Nintendo Switch 2のメインボードのリークとされる写真が話題となった。この内容が事実とするなら「現実的」ではあるが同時に「ツマラナイ」というのが率直な感想である。恐らくはリークされたままのスペックで登場するのではないかと推測している。
巷に出回っている情報によるとSoCはNVIDIA T239だという。
既知のNVIDIA SoCとしてはT234 = Orin・T241 = Grace・T26x = Thorが知られており、T239という型番からOrinの派生である可能性が高いと推測できるが、これはリーク情報のスペックCortex-A78 + Ampere GPUと合致している。このOrinだが2018年発表・2021年登場の4年前のSoCということになるが、そもそも現行Nintendo Switch自体が2015年登場のTegra TX1を採用して2019年登場したため驚くべきことではない。
ちなみに、現行Nintendo Switchに採用されたTegra TX1はAndroidタブレット等での採用も狙った初登場時点でも低消費電力で性能も控え目の開発ボードがUS$ 600のSoCだったが、Orinは車載で自動運転を狙ったSoCのため初登場時点では非常に高性能で消費電力も高めの開発ボードがUS$ 2000するSoCだったため、同じ4年前のSoCでも2025年時点でのOrinの性能は2019年時点でのTegra TX1よりも相対的に条件は良い。
もっとも、このNVIDIA T239(約200mm2)だが、NVIDIA Orin T234(約455mm2)よりも小さいようで、その点に関しても憶測が飛び交っている。
筆者の推測では、2021年にSamsung 8LPPで製造していたNVIDIA Orin T234をSamsung SF4系かTSMC N5系に移したシュリンク版で、論理的なスペックはNVIDIA Orin T234と同一のCortex-A78 12-core CPU + Ampere 16SM GPUで、一部の機能を無効化しているのだろうと推測する。そうでもなければ2018~2020年頃のIPを今さら使いまわす理由が無く最新のIPを採用することだろう。
それよりも、NVIDIA Orinの新ステッピングとしてしまった方が任天堂とNVIDIAにとって利点がある。NVIDIA視点で言えば相対的にライフサイクルが長い(供給保証が10年間超が多い)組込半導体であるNVIDIA Orinを公式スペックを変更せずに製造プロセスをリフレッシュすることでSoCの製造コスト・消費電力を抑えることができるし、任天堂視点で言えば既に車載SoCとして量産されているので新規開発に投資する必要がない。また、Cortex-A78 12-core のうち8-core、Ampere 16SM GPUのうち12SMが正常動作していればいいため高い歩留まりを達成しコストを抑えることができる。
Orin T234(2021年)で採用されたSamsung 8LPPのトランジスター密度は61.18 MTr/mm2だが、Samsung 4LPE(SF4E)の場合は137.0 MTr/mm2・TSMC N5/N5Pなら138.2 MTr/mm2・TSMC N4/N4Pなら143.7 MTr/mm2と2倍以上になっているので、単純計算であれば193~203mm2にシュリンクする計算になる。もちろん実際には単純計算通りにはならないが、概ね辻褄は合っている(初出自、Samsung 4LPEのみで試算していました。NVIDIAはSamsung製IPへの依存がほぼ無いためTSMCでの製造が可能なはずで、TSMC N5系の場合の情報も追加しました)。
実はNVIDIAと任天堂のこういった動きは初めてではなく、現行Nintendo Switchでも2017年3月にNVIDIA Tegra X1(TSMC 20nm)を搭載して発売した後、2019年7月に電力効率が改善したTegra X1+(TSMC 16nm)搭載モデルに更新しており、この更新はNintendo Switchだけでなく同じSoCを搭載した他のNVIDIA製品にも適用されている。
ところで、NVIDIAはGB10なるSoCを発表したのだが、筆者の予測ではこれが次々世代Nintendo Switchに載る候補になると推測している。
実際、Nintendo SwitchとNVIDIA Orinの場合、初代Nintendo Switchが発表された時期(2019年)と同時期(2018年)にNVIDIA Orinが発表されている。2018年以降のNVIDIA SoCは車載用のため発表時点ではコスト・消費電力の両面でUS$ 400の携帯ゲーム機には載せられないが、発表から4~5年後であれば開発コストも償却済・半導体製造プロセスも進んで搭載可能になる。そのため、2025年にシステム全体でUS$ 3000のGB10(SoC単体の価格が不明)がシュリンクされて2030年頃の次々世代Nintendo Switchに搭載されたとしても不思議はない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます