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私的コラム&雑記(&メモ)

今週の興味深かった記事(2019年 第23週)

2019-06-08 | 興味深かった話題

Mac Pro Late 2019

Apple、最大28コアCPU/Vega II Duo×2搭載の「Mac Pro」 - PC Watch
AMD Radeon Pro Vega II Series Announced For Apple Mac Pro - WCCFTech

 2013年に登場して以来更新されてこなかったMac Proがようやく更新された。
 独Gigaの作成したイメージが有名だが、Mac Pro 2013の問題は登場時から指摘されていた。デスクトップPC筐体のデザインに拘るあまり拡張性があまりに乏しく、また、メインボードからM.2 SSDに至るまで使用されているコンポーネントがほぼ全てカスタム仕様のため部品交換によるアップグレードも困難だった。
 それがMac Pro Late 2019ではMac Pro 2009に近い金属筐体のタワー型に戻った。

 新しいMac Pro Late 2019で興味深いのはAMD Vega II Duoが接続されるMPXポートで、一見するとPCIe x16が2ポート縦に並んでいるが、恐らく電気的にはPCIe x16 1ポートのみでPCIe x16(75W)とMPX(475W)で計550Wの電力を供給できる。PCI Express x16が二基並んでいるように見えるが、そういう接続ならPCI Express Gen 3には x32ポートが規格化されているのでそちらを使うべきだし、基板上のPCIeインターフェース近くに見える銀色のチップは恐らくBroadcom(旧PLX Technology)PEX8747あたりのPCIe Switchであろうと思われる。なお、二基のVega II同士はAMD Infinity Fabricで相互接続される。

Cortex-A77

シングルスレッド処理向上で最上級の性能を得たArm「Cortex-A77」のマイクロアーキテクチャ - PC Watch

 Cortex-A77(以下、A77)は期待したくなるプロセッサーだ。
 Armのマーケティングタームには注意する必要があり、例えば前世代A76の発表時に「ラップトップクラス」だと主張していたが、実際にはPC用のIntel CPUとでは依然として隔絶した性能差がある。もちろん、ロジックの規模が1/4程度だったり消費電力が1/10以下だったりと条件が異なるので当然の結果ではあるのだが、A76の「ラップトップクラス」の場合は「同じフォームファクターなら」という、Chromebookぐらいでしかありえない条件付きだった。

 しかし、それでもA77の性能には疑いの余地がない。
 実際のところ、これまでのArmの高性能CPUコアとしてはAppleやSamsungが自社製品に搭載するために開発してきたものが存在する。最新のものではApple A12 Bionicプロセッサーに搭載されたVortexコアやSamsung Exynos 9820プロセッサーに搭載されたExynos M4(Mongoose 4)コアがそれで、AppleのCPUコアは動作周波数あたりの性能(IPC)がIntel Coreシリーズと同程度であることが複数メディアで確認されている。ただし、これらのCPUコアはApple iPhoneシリーズやSamsyng Galaxy Sシリーズといった特定のスマートフォンにしか搭載されてこなかったし、Appleに至っては独自iOSで環境が違うから、それほど多くの人々が選択的にその性能を享受してきたとは言い難い。

 A77で導入された拡張はより多くのメーカー・端末・ユーザーに恩恵をもたらす。
 後藤氏は「わずか」と表現しているが、17%ものリソース増加で20%のIPC向上という数字は安心できる。これまでのArmのプレゼンテーションでは異なる条件での性能比較が多く眉唾物だったが、今回は同じ条件下でのA77のA76に比しての比較の上、追加リソース分の内容からいっても性能向上の裏付けもある。
 詳細は後藤氏の記事に詳しいが、単に命令デコード幅が拡張されただけでなく、それを実際に実行するためにフロントエンドやバックエンドが拡張されており辻褄が合っている。

 Cortex-A77Cortex-A76Monggose 4
Decode 4 MOps/cycle
+ MOP cache
6 MOps/cycle
4 Ops/cycle 6 Ops/cycle
Issue 6 MOps/cycle 4 MOps/cycle 6 Ops/cycle
Dispatch 10 uOps/cycle 8 uOps/cycle 9+3 Ops/cycle
Exec Ports 12 ports 8 ports 12 ports
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