助手 「三菱からアイがでましたね。やっとという感じですけど。」
所長 「そうじゃな、プロトタイプが発表されたのが03年のモーターショーじゃったから、随分と時間が掛かったな。」
助手 「そうですね。」
所長 「じゃが今見ても十分先進的なクルマじゃから、機が熟したのかもしれんがな。」
助手 「そうですね。でも僕はあんまり魅力を感じないんですけど。」
所長 「どうしてじゃ。軽自動車サイズでコンパクトカー並の室内空間をリアミッドシップの後輪駆動で実現したとこなんか、画期的なクルマじゃと思うんじゃが。」
助手 「いいクルマだというのはわかるんですけど、価格が高すぎますよ。プレミアム軽という位置付けも無理があると思うんですけど。大体低コストで所有することが出来るっていうのが軽自動車の本来の姿じゃないんですか。」
所長 「本来はそうなんじゃろうな、じゃが現在の軽自動車の実態を考えると、みんな大きく豪華になっとるし、価格も高いじゃろ。何もアイに限ったことじゃないわ。」
助手 「まあ、それはそうですけどね。でも他のクルマとはコストの掛かってるところが違うじゃないですか。大きく、広くして装備を充実させた結果、価格が高くなったのは消費者にわかりやすいと思うんですけど、アイの場合はクルマ自体のコストが相当掛かってるじゃないですか。」
所長 「それのどこが悪いんじゃ。」
助手 「いや、どこも悪くないですよ。僕からすると歓迎すべきところだと思うんですが、消費者にそれが伝わるかどうかが問題でしょ。ミッドシップレイアウトだから高くなりました、なんて通じないでしょ。」
所長 「それはそうかもしれんのぉ。だったらFFのままでいい、って言われそうじゃしな。」
助手 「そこなんですよ、僕が気になってるのは。確かにリアミッドシップを採用したことによって、ホイールベースが長く取れて、室内が広くなるっていうのは、素晴らしいと思うんですよ。でもそれも、コストの制約の中で行われるべきことだと思うんです。高くなったからプレミアム軽です、っていうのは、どうかと思うんですよ。だから僕はいいクルマだと思うんですけど、売れるとは思えないんです。」
所長 「今日はなかなか、雄弁に語るのぉ。」
助手 「もう、茶化さないでください。」
所長 「すまん、すまん。確かに室内スペースの拡大に合せて価格が上がるのは、どうかと思うな。それだったら既存のレイアウトでタントやエブリィワゴンのような巨大なスペースのクルマをつくった方が安く上がるじゃろ。」
助手 「そうでしょ。」
所長 「じゃが、アイの凄いところは、ミッドシップレイアウトによる室内の広さじゃないんじゃ。」
助手 「確かに走行性能から考えても理想的なレイアウトだと思いますよ。でもそれだったらスポーツカーをつくらなければ意味がないでしょ。アイのユーザー像を考えても走行性能で選ばれるとは思えませんし。」
所長 「誰が走行性能じゃと言った。ワシが言いたいのは限られた空間を最大限に生かせるということなんじゃ。」
助手 「え、それじゃ、室内空間の広さとおんなじことじゃないですか。」
所長 「結果はおんなじなんじゃが、出発点が違うんじゃ。」
助手 「どういうことですか。」
所長 「アイは別に広い軽自動車をつくろうとしたんじゃないと思うんじゃ。むしろ小さいクルマをつくりたかったと思うんじゃ。で、小さいクルマでも満足して買ってもらえるために出来るだけ空間の効率をよくしようとした結果、リアミッドシップというレイアウトに行き着いたんじゃと思うんじゃ。」
助手 「だから、それはわかってますよ。」
所長 「いや、わかっとらん。お前は出だしの発想が間違っとるんじゃ。まず軽自動車という枠を取っ払って考えてみろ。」
助手 「と言うと。」
所長 「アイを普通車、そうヴィッツやフィットのようなコンパクトカーとして見るんじゃ。今のコンパクトカーのホイールベースは2400から、大きいので2600ぐらいまでじゃろ。アイの2550というホイールベースはその中でも長い方じゃろ。」
助手 「そうですね。アイより長いのは、純粋なコンパクトカーとしてはノートぐらいですかね。」
所長 「アイの2550というホイールベースは最新のコンパクトカーとして十分な長さじゃと言えるじゃろ。つまり室内の居住性は十分あるということじゃ。」
助手 「はい。」
所長 「で、ホイールベースからはみ出る部分、つまり前後のオーバーハングを出来るだけ詰めて、可能な限り小さいクルマにしようとした訳じゃ。言い換えれば、居住空間を犠牲にしないで小さなクルマをつくりたかったということじゃ。昔にホンダが掲げてたマン・マキシマム、メカ・ミニマムっていうMM思想そのものなんじゃ。」
助手 「それがミッドシップレイアウトの採用で実現したということですね。」
所長 「そういうことじゃ。で、切り詰めていったら軽自動車枠に入るところまで小さくすることが出来た、という訳じゃ。」
助手 「ちょっと無理がありますけど。」
所長 「もちろん初めから軽自動車枠を睨んで開発しとったじゃろうけど、そういう風にも考えられると言っとるんじゃ。小さなコンパクトカーとして出すよりも、軽自動車として出す方がお客にとっていろんな恩恵に授かれるから、当然、軽自動車の規定に合せるわな。そうして出来上がったのがアイ、という訳じゃ。」
助手 「なるほど、そういうことですか。」
所長 「そう考えると価格が高い、高いと言っとるが、出来のいいコンパクトカーとして見れば、許容範囲じゃろ。割高な分は小ささと言う武器を考えると十分戦えるじゃろ。」
助手 「そうですね。それに軽自動車登録なら維持費は安く上がりますし、ランニングコストを含めて考えるとお買い得かもしれませんね。」
所長 「そういう訳じゃ。」
助手 「なんかとっても魅力的に見えてきました。」
所長 「単純な奴じゃな。」
助手 「これは売れそうですね。」
所長 「どうじゃろうな。お客が軽自動車だと見れば、高く感じるから難しいかもしれんな。まあ営業マンの腕の見せ所じゃな。長い間売るクルマがなかったから、売りたくてウズウズしとるじゃろうからな。あと輸出もするらしいから、海外での方が評価されるかもしれんな。」
助手 「売れるといいですね。所長もどうです、一台。いつも小さいクルマが好きだって言ってるじゃないですか。」
所長 「ワシはいらんわ。」
助手 「どうしてですか。」
所長 「軽自動車枠に合せてつくっとるから長さに対して幅が狭いじゃろ、それがダメじゃ。あと虫みたいな格好も気に入らん。」
助手 「しょ、しょちょぉ、・・・なんだったんですか、今までの話しは。」
参考資料
三菱i(アイ)(三菱自動車工業株式会社)
Yahoo!グループ 轟クルマ文化研究所
所長 「そうじゃな、プロトタイプが発表されたのが03年のモーターショーじゃったから、随分と時間が掛かったな。」
助手 「そうですね。」
所長 「じゃが今見ても十分先進的なクルマじゃから、機が熟したのかもしれんがな。」
助手 「そうですね。でも僕はあんまり魅力を感じないんですけど。」
所長 「どうしてじゃ。軽自動車サイズでコンパクトカー並の室内空間をリアミッドシップの後輪駆動で実現したとこなんか、画期的なクルマじゃと思うんじゃが。」
助手 「いいクルマだというのはわかるんですけど、価格が高すぎますよ。プレミアム軽という位置付けも無理があると思うんですけど。大体低コストで所有することが出来るっていうのが軽自動車の本来の姿じゃないんですか。」
所長 「本来はそうなんじゃろうな、じゃが現在の軽自動車の実態を考えると、みんな大きく豪華になっとるし、価格も高いじゃろ。何もアイに限ったことじゃないわ。」
助手 「まあ、それはそうですけどね。でも他のクルマとはコストの掛かってるところが違うじゃないですか。大きく、広くして装備を充実させた結果、価格が高くなったのは消費者にわかりやすいと思うんですけど、アイの場合はクルマ自体のコストが相当掛かってるじゃないですか。」
所長 「それのどこが悪いんじゃ。」
助手 「いや、どこも悪くないですよ。僕からすると歓迎すべきところだと思うんですが、消費者にそれが伝わるかどうかが問題でしょ。ミッドシップレイアウトだから高くなりました、なんて通じないでしょ。」
所長 「それはそうかもしれんのぉ。だったらFFのままでいい、って言われそうじゃしな。」
助手 「そこなんですよ、僕が気になってるのは。確かにリアミッドシップを採用したことによって、ホイールベースが長く取れて、室内が広くなるっていうのは、素晴らしいと思うんですよ。でもそれも、コストの制約の中で行われるべきことだと思うんです。高くなったからプレミアム軽です、っていうのは、どうかと思うんですよ。だから僕はいいクルマだと思うんですけど、売れるとは思えないんです。」
所長 「今日はなかなか、雄弁に語るのぉ。」
助手 「もう、茶化さないでください。」
所長 「すまん、すまん。確かに室内スペースの拡大に合せて価格が上がるのは、どうかと思うな。それだったら既存のレイアウトでタントやエブリィワゴンのような巨大なスペースのクルマをつくった方が安く上がるじゃろ。」
助手 「そうでしょ。」
所長 「じゃが、アイの凄いところは、ミッドシップレイアウトによる室内の広さじゃないんじゃ。」
助手 「確かに走行性能から考えても理想的なレイアウトだと思いますよ。でもそれだったらスポーツカーをつくらなければ意味がないでしょ。アイのユーザー像を考えても走行性能で選ばれるとは思えませんし。」
所長 「誰が走行性能じゃと言った。ワシが言いたいのは限られた空間を最大限に生かせるということなんじゃ。」
助手 「え、それじゃ、室内空間の広さとおんなじことじゃないですか。」
所長 「結果はおんなじなんじゃが、出発点が違うんじゃ。」
助手 「どういうことですか。」
所長 「アイは別に広い軽自動車をつくろうとしたんじゃないと思うんじゃ。むしろ小さいクルマをつくりたかったと思うんじゃ。で、小さいクルマでも満足して買ってもらえるために出来るだけ空間の効率をよくしようとした結果、リアミッドシップというレイアウトに行き着いたんじゃと思うんじゃ。」
助手 「だから、それはわかってますよ。」
所長 「いや、わかっとらん。お前は出だしの発想が間違っとるんじゃ。まず軽自動車という枠を取っ払って考えてみろ。」
助手 「と言うと。」
所長 「アイを普通車、そうヴィッツやフィットのようなコンパクトカーとして見るんじゃ。今のコンパクトカーのホイールベースは2400から、大きいので2600ぐらいまでじゃろ。アイの2550というホイールベースはその中でも長い方じゃろ。」
助手 「そうですね。アイより長いのは、純粋なコンパクトカーとしてはノートぐらいですかね。」
所長 「アイの2550というホイールベースは最新のコンパクトカーとして十分な長さじゃと言えるじゃろ。つまり室内の居住性は十分あるということじゃ。」
助手 「はい。」
所長 「で、ホイールベースからはみ出る部分、つまり前後のオーバーハングを出来るだけ詰めて、可能な限り小さいクルマにしようとした訳じゃ。言い換えれば、居住空間を犠牲にしないで小さなクルマをつくりたかったということじゃ。昔にホンダが掲げてたマン・マキシマム、メカ・ミニマムっていうMM思想そのものなんじゃ。」
助手 「それがミッドシップレイアウトの採用で実現したということですね。」
所長 「そういうことじゃ。で、切り詰めていったら軽自動車枠に入るところまで小さくすることが出来た、という訳じゃ。」
助手 「ちょっと無理がありますけど。」
所長 「もちろん初めから軽自動車枠を睨んで開発しとったじゃろうけど、そういう風にも考えられると言っとるんじゃ。小さなコンパクトカーとして出すよりも、軽自動車として出す方がお客にとっていろんな恩恵に授かれるから、当然、軽自動車の規定に合せるわな。そうして出来上がったのがアイ、という訳じゃ。」
助手 「なるほど、そういうことですか。」
所長 「そう考えると価格が高い、高いと言っとるが、出来のいいコンパクトカーとして見れば、許容範囲じゃろ。割高な分は小ささと言う武器を考えると十分戦えるじゃろ。」
助手 「そうですね。それに軽自動車登録なら維持費は安く上がりますし、ランニングコストを含めて考えるとお買い得かもしれませんね。」
所長 「そういう訳じゃ。」
助手 「なんかとっても魅力的に見えてきました。」
所長 「単純な奴じゃな。」
助手 「これは売れそうですね。」
所長 「どうじゃろうな。お客が軽自動車だと見れば、高く感じるから難しいかもしれんな。まあ営業マンの腕の見せ所じゃな。長い間売るクルマがなかったから、売りたくてウズウズしとるじゃろうからな。あと輸出もするらしいから、海外での方が評価されるかもしれんな。」
助手 「売れるといいですね。所長もどうです、一台。いつも小さいクルマが好きだって言ってるじゃないですか。」
所長 「ワシはいらんわ。」
助手 「どうしてですか。」
所長 「軽自動車枠に合せてつくっとるから長さに対して幅が狭いじゃろ、それがダメじゃ。あと虫みたいな格好も気に入らん。」
助手 「しょ、しょちょぉ、・・・なんだったんですか、今までの話しは。」
参考資料
三菱i(アイ)(三菱自動車工業株式会社)
Yahoo!グループ 轟クルマ文化研究所
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