
助手 「この間のRAV4とおんなじ日に出た、日産のウイングロードですけど、どう思われますか。僕はムチャクチャカッコ悪いと思うんですけど。」
所長 「そうじゃな、確かにあれは不細工じゃな。」
助手 「そうでしょ、ライトのカタチも変ですし、ルーフも途中でおかしなことになってますからね。でもてっきり所長はカッコいいとか言いそうな気がしてたんですが、安心しました。」
所長 「どういう意味じゃ。」
助手 「だっていつも、僕が言うことの反対ばっかり言うじゃないですか。天の邪鬼というか、偏屈というか。」
所長 「馬鹿モン、なんでワシがお前の反対ばっかり言わなきゃいけないんじゃ。それだけお前の見方がなっとらんと、いうことじゃ。」
助手 「す、すいません。・・・でも今回は所長と意見が一致しましたから、僕の見識もまんざらじゃないと言うことですね。」
所長 「どうしてお前はそんなに短絡的なんじゃ。やっぱりお前に研究員は向いとらんようじゃな。」
助手 「えっ、どういうことですか。所長とおんなじ意見なのに。」
所長 「正直言って今度のウイングロードの格好は、ワシには意味がよくわからんのじゃ。」
助手 「どういうことですか。カッコに意味なんてあるんですか。」
所長 「もちろんあるわ。どういうお客に、どう思わせたいか、それを表現しとるのがデザインなんじゃ。それが今度のウイングロードからは読み取れないんじゃ。ワシもモウロクしてしまったようじゃ。」
助手 「寂しいこと言わないで下さいよ。いつも自信過剰なとこが所長のいいとこなのに。」
所長 「自信過剰は余計じゃ。ただ、ウイングロードのターゲットは20代の若年層じゃろ、ワシが思うに今の若モンは昔と違ってクルマに対して、興味がないと言うか夢を持っとらんと思うんじゃ。」
助手 「そんなことないでしょ。VIPカーとかスポコンとか、流行ってるって聞きますよ。」
所長 「それもホンの一部じゃろ、大部分の人の興味の対象から、クルマが外れとると思うんじゃ。ワシの若い頃なんて、男は決まってクルマ好きじゃったモンじゃが。」
助手 「趣味の多様化ですか、それは確かにあるかもしれませんね。」
所長 「多様化というよりもモノに対して執着心がないように思えるんじゃ。そういう世代を相手にクルマを売ろうとしとるから、ワシなんかからすると理解が出来ないんじゃ。」
助手 「そういうことですか。僕の世代ではまだまだクルマ好きは多かったような気がしますが、確かに今の若い子はあんまりクルマに対して熱くなったりしないような気がしますね。」
所長 「で、ひとつの回答がクルマそのモノの格好良さよりも、そのクルマをどう使わすか、という部分にまとを絞っとるように見えるんじゃ。つまりいろんなシチュエーションにフレキシブルに対応出来るクルマじゃ。それをカタチにしたのが多人数乗れるミニバンやモノがたくさん積めるステーションワゴンなんじゃろう。」
助手 「確かに若い子に人気があるカテゴリーですね。」
所長 「レガシィやステージアなんかの高いのはクルマ好きが買うんじゃろうけど、このクラスはあんまりクルマに興味がない奴でも手を出しやすいんじゃろう。トヨタのプロボックス/サクシードやホンダのエアウェイブなんかもおんなじ狙いなんじゃろ。」
助手 「確かにライバルはプロボックスやエアウェイブになるんでしょうけど、方向性が全然違うように見えますけど。」
所長 「アプローチの仕方が違うんじゃ。プロボックスは商用バンのハイエースやマークⅡバンなんかを格好よく乗りこなす感覚、つまりプロの道具や産業資材を生活に取り入れるスタイルを訴求したモンじゃし、エアウェイブは反対にステーションワゴンの商用バン的な生活感を払拭して、広くて便利な荷室を持ったカジュアルなコンパクトカーに仕立てたもんじゃと思うんじゃ。どっちも突き詰めればクルマに興味をなくした若モンに、クルマの使い方や、それによってそ生み出される暮らしをわかり易く提案したモンじゃと思うんじゃ。」
助手 「何だか大変ですね。まあそれだけ若い世代にクルマを売るのが難しいということなんでしょうけど。」
所長 「で、ウイングロードのアプローチは、従来のステーションワゴンの範疇の中で、より使い勝手の良さを特化させたというところじゃろうな。荷室から助手席と後部座席を倒せる機能とか、ラゲッジ部分に腰掛けが出てくるのとか、アンダーボックスに濡れたモンを入れられるところとか、ある想定したユーザー像のライフスタイルに、より便利な機能を付けたといったところじゃろう。まあ、エクストレイルがウケたんで、それをワゴンに置き換えたといったところじゃろ。」
助手 「エクストレイルですか、確かに売れてますよね。」
所長 「という具合に、内容的なことはだいたいわかるんじゃが、それと格好が結びつかんのじゃ。ワシが思うに日産もユーザー像が掴みきれんで、手探りしとるんじゃないかと思えるんじゃ。かといって他社の後追いは出来んから、自分のところの持ち駒の中から、当りそうなのをみつくろった、といった印象じゃ。」
助手 「そんなぁ、バクチみたいなことするわけないでしょ。」
所長 「市場は生きモンじゃから、絶対なんてことはないんじゃ。じゃから新しい試みをするのは、みぃんな半分バクチみたいなモンじゃろう。その中でも若い世代を市場にしたこのクラスは、一番読みにくいんじゃろ。」
助手 「そんなモンですかね。それじゃあ、キープコンセプトというか、今までのウイングロードとおんなじテイストにした方が、確率が高いように思いますけど。」
所長 「確かに旧型のプレーンなスタイルは、良かったしマーケットにも受け入れられとった。じゃが、これから4、5年先まであのデザインのままでは辛いじゃろ。なんせ登場から6年も経っとるんじゃから。」
助手 「それはそうかもしれませんね。」
所長 「それにあのデコボコしたライトも、フーガとか今度出るシルフィーとかとおんなじ流れじゃし、ウェーブド・ドリップ・ラインじゃったかな、途中でラインが変る窓枠にしても、アメリカで売っとるアルマーダに採用して実績のあるモンなんじゃ。セレナなんかの窓枠も含めて、曲線を組み合わせたラインを日産のアイデンティティーに育てようとしとるんじゃろう。」
助手 「そう考えると最近の日産って、うねったラインが目につきますね。確か北米モデルのクエストもそうでしたよね。」
所長 「じゃが、それでもウイングロードのデザインは、どうかと思うんじゃ。もっとパッと見ぃの格好良さを出した方が、より有効じゃと思うんじゃ。Zやムラーノ、キューブなんて説明不要じゃろ。ああいうわかりやすさこそ、クルマに興味がない世代にアピール出来ると思うんじゃが。」
助手 「そう言う意味では、ウイングロードは訴求力は弱そうですね。」
所長 「はじめて見たときはリバティかと思ったぐらいじゃからな。じゃが、ターゲットはワシらじゃないから、あのクルマの評価はターゲットのお客が決めるじゃろ。」
助手 「そうですね。販売台数や顧客層で成否がわかりますからね。」
所長 「それにお客とズレとっても、マイナーチェンジで合わせてくるかもしれんしのぉ。先代のように。」
参考資料
日産 ウイングロード(日産自動車株式会社)
Yahoo!グループ 轟クルマ文化研究所
所長 「そうじゃな、確かにあれは不細工じゃな。」
助手 「そうでしょ、ライトのカタチも変ですし、ルーフも途中でおかしなことになってますからね。でもてっきり所長はカッコいいとか言いそうな気がしてたんですが、安心しました。」
所長 「どういう意味じゃ。」
助手 「だっていつも、僕が言うことの反対ばっかり言うじゃないですか。天の邪鬼というか、偏屈というか。」
所長 「馬鹿モン、なんでワシがお前の反対ばっかり言わなきゃいけないんじゃ。それだけお前の見方がなっとらんと、いうことじゃ。」
助手 「す、すいません。・・・でも今回は所長と意見が一致しましたから、僕の見識もまんざらじゃないと言うことですね。」
所長 「どうしてお前はそんなに短絡的なんじゃ。やっぱりお前に研究員は向いとらんようじゃな。」
助手 「えっ、どういうことですか。所長とおんなじ意見なのに。」
所長 「正直言って今度のウイングロードの格好は、ワシには意味がよくわからんのじゃ。」
助手 「どういうことですか。カッコに意味なんてあるんですか。」
所長 「もちろんあるわ。どういうお客に、どう思わせたいか、それを表現しとるのがデザインなんじゃ。それが今度のウイングロードからは読み取れないんじゃ。ワシもモウロクしてしまったようじゃ。」
助手 「寂しいこと言わないで下さいよ。いつも自信過剰なとこが所長のいいとこなのに。」
所長 「自信過剰は余計じゃ。ただ、ウイングロードのターゲットは20代の若年層じゃろ、ワシが思うに今の若モンは昔と違ってクルマに対して、興味がないと言うか夢を持っとらんと思うんじゃ。」
助手 「そんなことないでしょ。VIPカーとかスポコンとか、流行ってるって聞きますよ。」
所長 「それもホンの一部じゃろ、大部分の人の興味の対象から、クルマが外れとると思うんじゃ。ワシの若い頃なんて、男は決まってクルマ好きじゃったモンじゃが。」
助手 「趣味の多様化ですか、それは確かにあるかもしれませんね。」
所長 「多様化というよりもモノに対して執着心がないように思えるんじゃ。そういう世代を相手にクルマを売ろうとしとるから、ワシなんかからすると理解が出来ないんじゃ。」
助手 「そういうことですか。僕の世代ではまだまだクルマ好きは多かったような気がしますが、確かに今の若い子はあんまりクルマに対して熱くなったりしないような気がしますね。」
所長 「で、ひとつの回答がクルマそのモノの格好良さよりも、そのクルマをどう使わすか、という部分にまとを絞っとるように見えるんじゃ。つまりいろんなシチュエーションにフレキシブルに対応出来るクルマじゃ。それをカタチにしたのが多人数乗れるミニバンやモノがたくさん積めるステーションワゴンなんじゃろう。」
助手 「確かに若い子に人気があるカテゴリーですね。」
所長 「レガシィやステージアなんかの高いのはクルマ好きが買うんじゃろうけど、このクラスはあんまりクルマに興味がない奴でも手を出しやすいんじゃろう。トヨタのプロボックス/サクシードやホンダのエアウェイブなんかもおんなじ狙いなんじゃろ。」
助手 「確かにライバルはプロボックスやエアウェイブになるんでしょうけど、方向性が全然違うように見えますけど。」
所長 「アプローチの仕方が違うんじゃ。プロボックスは商用バンのハイエースやマークⅡバンなんかを格好よく乗りこなす感覚、つまりプロの道具や産業資材を生活に取り入れるスタイルを訴求したモンじゃし、エアウェイブは反対にステーションワゴンの商用バン的な生活感を払拭して、広くて便利な荷室を持ったカジュアルなコンパクトカーに仕立てたもんじゃと思うんじゃ。どっちも突き詰めればクルマに興味をなくした若モンに、クルマの使い方や、それによってそ生み出される暮らしをわかり易く提案したモンじゃと思うんじゃ。」
助手 「何だか大変ですね。まあそれだけ若い世代にクルマを売るのが難しいということなんでしょうけど。」
所長 「で、ウイングロードのアプローチは、従来のステーションワゴンの範疇の中で、より使い勝手の良さを特化させたというところじゃろうな。荷室から助手席と後部座席を倒せる機能とか、ラゲッジ部分に腰掛けが出てくるのとか、アンダーボックスに濡れたモンを入れられるところとか、ある想定したユーザー像のライフスタイルに、より便利な機能を付けたといったところじゃろう。まあ、エクストレイルがウケたんで、それをワゴンに置き換えたといったところじゃろ。」
助手 「エクストレイルですか、確かに売れてますよね。」
所長 「という具合に、内容的なことはだいたいわかるんじゃが、それと格好が結びつかんのじゃ。ワシが思うに日産もユーザー像が掴みきれんで、手探りしとるんじゃないかと思えるんじゃ。かといって他社の後追いは出来んから、自分のところの持ち駒の中から、当りそうなのをみつくろった、といった印象じゃ。」
助手 「そんなぁ、バクチみたいなことするわけないでしょ。」
所長 「市場は生きモンじゃから、絶対なんてことはないんじゃ。じゃから新しい試みをするのは、みぃんな半分バクチみたいなモンじゃろう。その中でも若い世代を市場にしたこのクラスは、一番読みにくいんじゃろ。」
助手 「そんなモンですかね。それじゃあ、キープコンセプトというか、今までのウイングロードとおんなじテイストにした方が、確率が高いように思いますけど。」
所長 「確かに旧型のプレーンなスタイルは、良かったしマーケットにも受け入れられとった。じゃが、これから4、5年先まであのデザインのままでは辛いじゃろ。なんせ登場から6年も経っとるんじゃから。」
助手 「それはそうかもしれませんね。」
所長 「それにあのデコボコしたライトも、フーガとか今度出るシルフィーとかとおんなじ流れじゃし、ウェーブド・ドリップ・ラインじゃったかな、途中でラインが変る窓枠にしても、アメリカで売っとるアルマーダに採用して実績のあるモンなんじゃ。セレナなんかの窓枠も含めて、曲線を組み合わせたラインを日産のアイデンティティーに育てようとしとるんじゃろう。」
助手 「そう考えると最近の日産って、うねったラインが目につきますね。確か北米モデルのクエストもそうでしたよね。」
所長 「じゃが、それでもウイングロードのデザインは、どうかと思うんじゃ。もっとパッと見ぃの格好良さを出した方が、より有効じゃと思うんじゃ。Zやムラーノ、キューブなんて説明不要じゃろ。ああいうわかりやすさこそ、クルマに興味がない世代にアピール出来ると思うんじゃが。」
助手 「そう言う意味では、ウイングロードは訴求力は弱そうですね。」
所長 「はじめて見たときはリバティかと思ったぐらいじゃからな。じゃが、ターゲットはワシらじゃないから、あのクルマの評価はターゲットのお客が決めるじゃろ。」
助手 「そうですね。販売台数や顧客層で成否がわかりますからね。」
所長 「それにお客とズレとっても、マイナーチェンジで合わせてくるかもしれんしのぉ。先代のように。」
参考資料
日産 ウイングロード(日産自動車株式会社)
Yahoo!グループ 轟クルマ文化研究所
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