ジープ・グランドチェロキー

所長　「グランドチェロキーが新しくなったそうじゃけど、知っとるか。」

助手　「へぇ、そうなんですか。正直な話、先代のカタチすら思い浮かばないんですけどね。」

所長　「話にならんの。ま、ワシも詳しくはないんじゃけどな。」

助手　「グラチェロって言えば、やっぱりアレですよね。初代でしたっけ、90年代のヤツ。あのカタチのイメージが強くって、最近のの印象は薄いですね。」

所長　「ま、そんなトコじゃろうな。実際、街でもほとんど見掛けんしの。」

助手　「ですよね。チェロキーにしてもやっぱり初代のイメージが強いですしね。それも赤いヤツの。」

所長　「よく売れたしの。ちなみにあれは2代目じゃけどな。チェロキーは次の代で丸目にしたのが、裏目に出た感じじゃったの。」

助手　「ああ、そうでしたね。せっかくの人気モデルだったのに大失敗って感じでしたよね。」

所長　「2代目の飾りっ気のなさと言うか、シンプルなところが、フィアット・パンダやボルボのワゴン的な人気につながったと思うんじゃ。それを次の世代でオモチャっぽくデザインしてしもたから、お客にそっぽ向かれてしもたんじゃろうな。」

助手　「そんな感じですよね。」

所長　「グランドチェロキーの方も似たような道を辿っとったんじゃが、ここに来てぐっと精悍なデザインを採用してきたんじゃ。」

助手　「そうなんですか。」

所長　「90年代から2000年代の初めごろまでかのぉ、その頃のアメ車って、どれも新しいデザインを模索しては躓いとった感じがしたモンじゃ。それが先祖帰りしたマスタングの成功ぐらいから、変わってきたような気がするんじゃ。」

助手　「どう変わったんですか。」

所長　「うーん、なんて言うか、小難しいコトを考えんと、素直に格好いいと思うデザインを、採用するようになったって感じかのぉ。」

助手　「うーん、確かに理解不能なデザインはなくなってきたような気も。オーバル・デザインのトーラスなんか酷かったですよね。」

所長　「リンカーンのタウンカーにも凄いのがあったじゃろ。」

助手　「ありましたね。あれを見るとばつ丸を思い出しませんか。」

所長　「なんじゃ、それは。」

助手　「サンリオかなんかのキャラクターですけど。」

所長　「知らんの。ま、日本車を初めとする輸入車に散々市場を荒らされとったから、なんとか売れるクルマをつくろうと足掻いてたんじゃろうな。」

助手　「でしょうね。実際、日本で一番売れてるクルマが輸入車になってしまったらえらいコトですよね。」

所長　「そういうコトじゃな。ま、わかり易いデザインになった分、個性が薄れてしまったのも事実じゃけどな。」

助手　「言えてますね。最近の欧州車のようなアメ車では、選ぶ理由がなくなってしまってるのかもしれませんね。」

所長　「かもしれんの。じゃが、見方を少し変えてみると、面白いと思うんじゃがの。」

助手　「どういうコトですか。」

所長　「今の日本の輸入車市場って8割方ドイツ車じゃって言ってたじゃろ。」

助手　「ですね。」

所長　「確かにいいモノかもしれんが、メカニズムや信頼性なんかも、そんなには変わらんと思うんじゃ。」

助手　「ま、昔に比べれば差はなくなってきてるでしょうね。」

所長　「じゃが販売台数ではひと桁以上も差がついてしもとるじゃろ。それはやっぱり名前とかブランド力の差じゃろ。」

助手　「でしょうね。」

所長　「ベンツやBMWの年間販売台数が3万台以上、フォルクスワーゲンで4万台に対して、ジープってたった2,000台ほどなんじゃ。多分ゴルフの1か月分の方が多いんじゃないかのぉ。」

助手　「かもしれませんね。ま、ラインナップの違いもあるんでしょうけど、大きく差がついてますね。」

所長　「グランドチェロキーって、ベンツで言うたらMクラス、BMWじゃとX5、あとアウディはQ7、ボルボでXC90、フォルクスワーゲンのトゥアレグ辺りのクルマじゃろ。」

助手　「サイズや性能からするとそんなトコでしょうね。他にもカイエンとかディスカバリーなんかがライバルになるんでしょうね。」

所長　「一番安いグレードで比較するとじゃな、安いのがトゥアレグの623万で、一番上がMクラスの814万なんじゃ。」

助手　「はい。」

所長　「ドイツ車とかヨーロッパのクルマはだいたいその当りに集中しとるんじゃが、これがアメ車になると400万を切るところから選べるんじゃ。」

助手　「200万以上も差があるんですか。」

所長　「もっとも国産になると、あと100万ぐらい下るんじゃがな。」

助手　「そう思うとヨーロッパのクルマって、高い値段が付いてますよね。」

所長　「たかが自動車メーカーの名前や生産国にそれだけの価値があるんじゃろうかのぉ。正直ワシは、今言った車種の中で、グランドチェロキーが一番格好いいと思うしな。」

助手　「まぁ、好みはヒトそれぞれでしょうけど、販売台数ほどの差がつくとは思えませんよね。」

所長　「じゃろ。それに欧州車がどれだけ優れとるか知らんが、この分野においてはまだまだ新参モンじゃし、ジープとタメを張れるのって、ベンツのゲレンデヴァーゲンとかランドローバーぐらいじゃろ。」

助手　「ですよね。考えてみれば、ネームバリューも満点ですよね。」

所長　「じゃろ。ま、この手のクルマを買うモンが、200万安いからといって飛びつくとは思わんし、まして一番安いグレードで比較するコトがそもそもあり得ん話じゃけどな。」

助手　「それもそうですね。」

所長　「ワシが思うに今、この手のクルマを買っとるお客には、グランドチェロキーの姿が見えとらんのじゃと思うんじゃ。」

助手　「見えてない、ですか。」

所長　「そうじゃ。クルマを選ぶときに候補にすら入っとらんのじゃから、選びようがないってコトなんじゃないかのぉ。」

助手　「かもしれませんね。」

所長　「じゃからまずこのクルマがあるってコトをもっともっと知って貰うトコから初めんとイカンのじゃないかのぉ。お前も知らんかったぐらいじゃしの。」

助手　「悪かったですね。」

所長　「ま、時代背景を考えると今、この手のクルマを買うモンがどれぐらいおるか知らんが、このまま埋もれさせるにはもったいないからの。」

助手　「えらく入れ込んでますね。」

所長　「うーん、このクルマがいいっていうよりは、このクルマより価値のないクルマが、よぉ売れとるのが面白くないって感じじゃけどな。」


参考資料
ジープ・グランドチェロキー（クライスラー日本株式会社）
ジープ・グランドチェロキー（初代）（Wikipedia　ウィキメディア財団）
ジープ・チェロキー（XJ）（Wikipedia　ウィキメディア財団）

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