釋超空のうた (もと電子回路技術者による独断的感想)

文系とは無縁の、独断と偏見による感想と連想と迷想!!

及び釋超空のうたとは無縁の無駄話

雑談: 『心中』(森鴎外)

2013-06-06 11:04:13 | その他の雑談

相変わらずの雑談である。
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長年愛用していたPCが壊れたので新機種を買うことにした。新しいPCが届く前にマイ・ブログの整理をしている。いい加減、飽いたので鴎外の『心中』を久しぶりに読んだ。昔、古本屋の店ざらしで、鴎外の此のテの短編を集めた薄い文庫本を売っていた。確か50円程度だったと思う。早速、買った。既に古色をおびた古本そのもので、私は暫く愛読していたものだが、数年前、『身辺整理』時に捨ててしまった本の一つだ。
その時、いろいろな本を捨てたが、今から思えば早まったと後悔している。『百物語』とか『心中』とかは、やはり古色をおびた文庫本で読むのが雰囲気として良かったのだが…
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私は子供の頃より気が小さいくせに怪談話や怪異譚が好きであった。中学校の図書室から『猿の手』等を集めた短編集を借りたり、超心理学という言葉自体に意味もなく魅力を感じ、その類の本を借りて読んでいた。勿論、江戸川乱歩や横溝正史の探偵小説のファンでもあったし、そもそも私が数学に魅力を感じたのは (今でもそうなのだが) 、そういう私の好みのヴェクトル上にあって、決して「学問」としての魅力ではない。
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これも随分昔のことになるがテレビ番組で『世にも不思議な物語』という毎週一話の、こわ~い番組があって、楽しみにみていたものだ。日本のものではなくアチラのものだが、今でもタイトルを覚えているものもある。『叫び』とか『染(し)み』とか『グライダー』とか、いずれも、今で言うJホラーの恐怖心理劇ショートショートであった。松竹映画の『怪猫もの』は、余りに直裁過ぎて流石に敬遠していたが、しかし背筋を冷たい手がそっと触るような感触なモノは、映画でも小説でも何でも興味があるのは私は今でも変わらない。
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これも随分昔になるがNHKの『日曜美術館』で、作者は忘れたが、鉛筆の細密画で、気味悪い絵画が紹介されたことがあった。たしか、この番組でのタイトルは『異形を描く人』というようなものだったと記憶しているが、凝りに凝った異様な其の鉛筆細密画は実に気味悪いもので、私は数ヶ月は其の毒気から抜けられなかった。
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前段の話が長くなったが、この鴎外の『心中』もJホラーのショートショートと言えるだろう。
天下の鴎外の噺であるから文章としても面白い。例えば、

『それから先きは便所の前に、一燭しょくばかりの電灯が一つ附いているだけである。それが遠い、遠い向うにちょんぼり見えていて、却かえってそれが見える為めに、途中の暗黒が暗黒として感ぜられるようである。心理学者が「闇その物が見える」と云う場合に似た感じである。』

という文章。夜中に、ある店やの女中が便所へ行く個所の描写である。
このテの話が好きな人には一読を勧める。