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チリチリリン

風にゆれる風鈴のように
こころ休まる音を届けたい

和紙から生まれる祈りの世界

2015年06月04日 | 展覧会

 

 

初めて天王洲アイルという駅に降りることになったので、どんな場所か知りたいと予定より早く行って歩いてみることにしました。ネットを見ると、堀木エリ子さんによる「和紙造形の世界」と寺田倉庫株式会社が可能にした「保管」と「展示」のコラボレーションがみれるイベントがあったので、寺田倉庫株式会社本社ビルへ行ってきました。

りんかい線駅は「天王洲アイル 寺田倉庫本社前」という名前なので、寺田倉庫は知る人ぞ知る会社みたいです。美術品の保管をしているようで、和紙造形作家の堀木エリ子さんの作品を保管するにあたり、展示をしながら保管するのを試みたそうで、広い倉庫の中に作品が置かれています。すでに展覧会で展示されたものですがどれも大作で見応えのある作品で、無機質なコンクリートの倉庫の中でも柔らかな和紙独特の光を放って大変美しいものでした。

別の倉庫では文化庁が買い上げた優秀美術作品が展示されていたので、そちらも見せてもらいました。寺田倉庫はArt作家の育成に力を入れているようで、Art Awardなども企画しているそうです。

天王洲アイルの街並みは、工事のパネルにはベインとアートが描かれていたり、運河沿いには広いウッドデッキが作られていたり、絵のような港のレストランがあったり、とても洒落た場所で、隠れたデートスポットらしいです。運河の対岸に海洋大学の帆船が置かれているのも素敵でした。

 

  

  

 

 


ボストン美術館浮世絵名品展「北斎」

2014年11月05日 | 展覧会


上野の森美術館の「北斎」を観てきました。入場待ちの行列ができて入場制限されている人気の展覧会です。140点余りの作品が展示されています。これほど多くの北斎が米国に渡ってしまったのかととても残念な気持ちになりますが、ボストン美術館の浮世絵コレクションは5万点もあるそうです。

北斎は世界中で最も知られている浮世絵画家だそうです。大波の向うの富士山を描いた「神奈川沖波裏」や赤富士と呼ばれる「凱風快晴」は、私たちも子どもの頃から親しんできた絵で、大胆な構図とうつくしい色彩はよーく知っていると思ってました。ところが本物を観て驚かされたのはその「緻密さ」です。さほど大きくもない紙の上に、本当に小さな木の一本一本、遠くの人物の一人一人が本当に細かく描かれていて、本当にこれが版画なのかと驚かされます。

版画はアウトラインの線を描く下絵師、版画を彫る彫り師、何枚もの版木から刷り上げる刷り師の合作です。北斎が最初に描いた原画はこの通りなのか、原画に興味がわきました。肉筆画も何点か出品されてましたが、それは浮世絵版画の原画とは違っていました。

北斎は90歳で没するまで70年間描き続けたそうですが、実に精力的に仕事をしたのだと、この作品の種類と数に圧倒されます。近年まで公開されたことがなかったため保存状態も良く、いま摺上がったかのような色彩の美しさです。世界に誇れる日本人です。


「影の王国」

2014年09月05日 | 展覧会
フィオナ・タンの映像作品の一つです。
写真家、写真コレクター、普通の人を訪ね歩き、その人にとって「写真はどういう意味を持つか?」を問いかけるドキュメンタリーで、同時にタンは自分自身にも「自分はどのイメージ(写真)を選ぶか」と問いかけています。

写真は世界を断片的にとらえた、現実とかけ離れた影に過ぎず、そこに何を見いだすか、あるいは見落とすかは見る者自身によるもの、イメージはそれを鑑賞する者によって創造されるもの、と述べているようです。50分のこの作品を3回鑑賞し、やっと、頭ではなく感覚として理解したような気がします。「観るものによって創造される」というのは、鑑賞者にはうれしい感覚です。

フィオナ・タンは、次の作品も見てみたいと思わせる、静かな情熱をたたえたアーティストです。


バービー人形展

2014年08月16日 | 展覧会


  


バービー人形が出来て今年で55周年、デパートで誕生初期から現代までのバービーコレクションが展示されていました。子どもは従来の幼児体型の人形より将来の理想像を求めている事に気付き、理想的な大人のプロポーションを持った人形が誕生したそうです。初期のバービーは生産コストが低く、技術力の高かった当時の日本で作られていて、割り型の接合部分が目立たないよう1体ずつ手で磨かれた非常に精巧な人形だったそうです。

250体ものバービーが並ぶ会場は圧巻で、変わらないと思っていたあの顏も年代に応じて少しずつ変わっているのが見て取れました。一時はデザイナーとのコラボで、ディオール人形とかシャネル人形とか、高価なドレスの人形もあるし、職業衣装のスチュアーデス人形とか看護婦人形とかもあります。バッグやアクセサリーや連れている犬までも精巧に作られていて感心しました。

会場は少女や元少女がいっぱい!みんなお気に入りのバービーがあるみたいでした。そう言えば、ニコール・キッドマンって顏も体型もバービー人形みたいだなぁ!

      

最後のおでこと頬骨が目立つのが最新の顏です。ニコール・キッドマンからアンジェリーナ・ジョリーに変わったみたいです。


フィオナ・タン まなざしの詩学

2014年08月01日 | 展覧会


友人はクールシェアで喫茶店に行って涼しい中で本を読んでるという。わたしもどこかへ行きたいけど、我家の周りには適当な施設が無い。駅まで行けばドトールがあるが、駅ビルの中の狭い店で長居は出来そうにないなぁ。どこか入場料の安い美術展に行こうと探し出したのが、東京都写真美術館のフィオナ・タン写真展(?)

入場した第一番の感想は「また解らないものを観に来てしまった!」
入り口入ってすぐ、小さなテレビモニターに人の足が写っている。地面から20、30センチ浮き上がって進んでいる足だ。だんだんに上の方も写るのかと暫く見ていたが、いつまでたっても足だけなので、次の部屋に行く。壁一面に、たくさんの大きな風船に吊るされた人のモノクロ映像が写し出されている。それで、先ほどの足の意味が解る。風船で浮く人は、高い梢のあたりまで上がった。気持ちよいのだろうか?それとも怖いのか?微動だにせず、まるで人形のように吊るされている。次の部屋はカラー写真だ。あのたくさんの風船は実は真っ赤な風船だった。こんな風で、面白いけれど、作者の意図するものが理解できないのです。

同じ場所をいくつものカメラで多方向から捉えて大きな壁に同時に写したり、大きな肖像写真を小さなモニターでスクロールしながら見せたり、全体像をとらえるためには時間がかかるので、どの作品の前にもソファーやビーズクッションが置かれ、寝転がったり座ったり、ゆっくり鑑賞するので、くしくもクールシェアには最適な場所でした。更に2本の映像作品があり、おのおの1時間かかるので、映写室でゆっくり映画を観るように鑑賞出来ます。クッションのきいた椅子は座り心地がよくて、お昼寝だって出来ちゃいます。

作者の先祖は華僑の中国系インドネシア人で、政変でインとネシアを追われた華僑たちが流浪の民のように世界に散っている、そんな親戚たちを訪ね、いまでも中国人であると思うか、その時に中国に戻った親戚には、中国を故郷と感じたか、などを聞いて歩く自伝的作品は、とても面白くて、もう少し作者の事や華僑の事を調べて、もう一度見に来ようと思いました。

もうひとつ、「写真は刹那を写しているけれど、その前も後も写してはいない、だから写真は『事実』を写す事は出来ない」という作品の中で話される言葉が気になりました。私は写真こそがすべてを語れると思っていましたから。これに関しても、もう一度聞きたいです。