蓬莱の島通信ブログ別館

「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

台湾万歳!(2)─民主化の成熟と深化─

2006年06月03日 | メディアから見る台湾社会
1.搖れ続ける政局:台湾の民主化・本土化の行く方は、私の滞在時期でわけると李総統時代の第一期、陳総統第一回目の第二期、そして昨年末の地方選挙以来、第三段階に入ったように見える。昨年末の記事は以下。
 台湾統一地方選挙の分析─Taiwan News財經˙文化周刊から─
 今年の春の様子は以下で紹介した。
 二人の指導者のアメリカ行き─始まった2008年総統選挙─
 台湾万歳!(1)─説的對(よくぞ言った)─
 日本のニュースでも既に流れているが、陳総統関連のスキャンダルのニュースは、秘書・陳哲男氏から陳総統夫人の疑惑を経て、今回の娘壻・趙建銘氏の逮捕へと連続して、陳総統の支持率は、野党・国民党系の調査では、以下のような結果になった。(全文引用に問題がありましたらお知らせください)
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台湾総統支持率、最低に 2006年 5月27日 (土) 10:02
 【台北26日遠矢浩司】台湾の陳水扁総統の娘婿、趙建銘容疑者(33)がインサイダー取引容疑で拘束された事件は、支持率が低迷する陳政権を直撃、26日付の有力紙「聯合報」が掲載した世論調査では総統支持率は17%と過去最低を更新した。各メディアは事件を大々的に報じ、同容疑者の新たな疑惑を指摘するなど台湾社会に衝撃と波紋が広がっている。
 野党・中国国民党寄りの論調が目立つ聯合報は同日、1面から11ページにわたって事件を報道。台北市郊外の拘置所に収容された趙容疑者の様子や政界反応、海外での報道などを伝えた。
 世論調査では、陳総統の満足度はこれまでの最低だった20%(5月18日付)を更新。不満は67%に上った。しかし、総統の責任問題については、「辞任すべきだ」が37%、「辞任の必要はない」40%。野党の一部が主張している総統罷免についても賛成33%、不賛成46%と辞任要求が大勢とはなっていない。国民党の馬英九主席も現段階では罷免案を提出する考えがないことを表明した。
 一方、同紙や台湾紙「自由時報」は、趙容疑者と家族に薬品会社など11社から2300万台湾元(約8300万円)の手数料が支払われた疑いが浮上、捜査当局が家宅捜索や関係者の事情聴取を行ったと報じた。
=2006/05/27付 西日本新聞朝刊=
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 また、陳総統は端午の節句の休暇だった5月31日、国民に以下のような発表を行った。
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台湾 陳総統、権限委譲 相次ぐスキャンダル 政権浮揚狙う
 【台北=長谷川周人】台湾の陳水扁総統は5月31日夜、内政の政策決定権や閣僚人事権を行政院長(首相)に委譲すると表明した。選挙運動を含む党務も党執行部に委ねる。総統周辺に噴き出すスキャンダルを受け、自ら権限を制約して政権浮揚のきっかけをつかむのが狙いだ。しかし野党側は「権限委譲は過去の職権乱用を認めるものだ」(馬英九国民党主席)と批判、辞任を迫る構えを崩しておらず、陳総統は2年の任期を残して苦しい立場に追い込まれつつある。
 1日付台湾各紙によると、陳総統は31日、呂秀蓮副総統、蘇貞昌行政院長、游錫●民進党主席らを招集。(1)「第一家庭」(総統一家)の公共事務への関与を許さない(2)権力構造を変え人事面から革新を実行(3)総統職権以外の権限を放棄。政策決定と閣僚人事は行政院長が全権をもって決定する。党務運営に干渉せず、選挙活動にも参与しない(4)言ったことは実行する-などの内容を盛り込んだ「3つの決定、1つの決意」を決めた。
 陳総統は今後、憲法が定める「外交」のほか軍事、中台問題に関する権限は保持するが、閣僚人事などは蘇行政院長の決定を追認する形となるとみられる。毎週開催していた行政院(内閣)との協調会議も打ち切り、政策決定への関与も制限する。
 総統周辺で、昨年発覚した総統府前副秘書長の汚職事件に始まり、呉淑珍総統夫人が百貨店の金券を受け取った疑惑が浮上した。5月25日には長女の夫で医師の趙建銘容疑者が、インサイダー取引容疑で検察当局に拘束された。
 相次ぐスキャンダルを受けた今回の決定は、世論の批判をかわし、レームダック状態からの脱却を目指すものだ。
 だが、台湾メディアは「問題のすり替え」「責任転嫁」などと繰り返し伝え、政権批判を沈静化できるかは予断を許さない。
 野党側は、親民党の宋楚瑜主席が国民党に罷免要求での連携を呼びかけ、3日には総統府前で辞職を求めるデモ行進を計画。国民党も「(就任から)過去6年の(総統職権を逸脱した)違憲性を認めた。罷免要求の可能性も排除しない」(馬主席)と陳政権への攻勢を強めている。
●=埜の木を方に
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 台湾国民の民主化は今後、どのような方向に向かうのだろうか?
 一つの見方は、台湾生活新聞さん「陳政権支持率低迷って言うけれど」「これは駄目かもしれないね」のように、本土派を支持し続けて奮起を促すようなものである。言ってみれば、”スキャンダル攻撃は国民党の世論操作による罠である。もし国民党政権になれば中国との繋がりがますますひどくなり、事実上中国に支配されてしまうので、汚職政権でも本土派のほうを応援するべきだ”という戦略である。『台湾日報』にも同じ主旨の意見がよく投稿されている。以下は『台湾日報』の2006年6月3日の社説である。
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【社論】泛藍節節進逼,權力鬥爭舖天蓋地而來,台灣人民要團結一致,鞏固領導中心國親一再升高抗爭層次,黔驢技窮故技重施,逼人太甚,怎會得到台灣人民的支持?
(国民党は次第に迫り権力闘争は全国を覆っている。台湾国民は団結せよ。指導部を国民党の党争の高まりに対して固め、知恵を尽くしていかにして国民の支持を得るか?)
 在台開案糾纏不清下,黨內外掀起一股逼退陳水扁(新聞)總統聲浪,陳總統展開危機處理,從權力下放到核心幕僚馬永成、林錦昌准職,都是做了反省,採取的改革措施,可是泛藍仍是節節進逼,展開舖天蓋地的權力鬥爭,親民黨(新聞)除發動罷免活動外,今天下午還要重回凱達格蘭大道集會,向陳總統嗆聲,國民黨則有倒閣、知所進退的提議,在這個關鍵時刻,民進黨(新聞)要團結一致,鞏固領導中心,讓罷免案無法推動,陳總統也要認真做自我反省與管理,在任期的最後二年,力促執政團隊推動改革,以振衰起敝,重拾人民的支持與信任。
 在2004大選敗選以後,泛藍進行一波波的抗爭行動,沒有得到民心的支持,無功而退,轉而採取抹、造謠、誣衊的「文攻武鬥」,手段之狠毒,是中國古代抄家滅族模式的翻版,也是文革式政治鬥爭的復辟,使得陳總統面臨從政以來的最大危機,採取必要的危機處理,馬永成、林錦昌被視為陳總統的左右手,過去一起打拚天下,卻雙雙請辭獲准,象徵總統失去得力的助手,就像是斷了雙臂,陳總統並宣布權力下放,讓中生代可以放手一搏,推動各種改革,拋下弊案等負面影響,重新領軍營出發,為2008大選備戰,正是民進黨化危機為轉機的契機。
 陳總統採行這一連串的措施,完全不顧個人利益,是以國家與社會的安定為出發,相信民進黨痛定思痛,檢討省思,一定可以在短期內重新出發,恢復戰鬥力,拾回原始的核心價值,如果能夠做到這一點,目前發生的諸多事件,不但不會對營造成重大的影響,反而會是民進黨轉機的希望。
 泛藍陣營以打垮本土政權為目標,面對陳總統釋出善意,不但沒有退讓,反而是節節進逼,展開舖天蓋地的權力鬥爭,親民黨一再升高抗爭的層次,不論是發動罷免,或重回凱達格蘭大道集會,都是以前玩過的政治老招式,2000年大選陳總統初就任不久,在野黨即有罷免之議,2004敗選又有凱道鬧事抗爭之舉,這次又玩罷免、群眾抗爭的政治鬥爭,一再重演固定的鬥爭模式,泛藍明知罷免案不會過關,仍一再強行推動,黔驢技窮故技重施,怎會得到人民的支持呢?
 國民黨深知親民黨發動的罷免、群眾抗爭,不得人心,因而改弦易轍,採取其他途徑,可是也都是極端的手段,並不符合社會中道的思想,要總統自行辭職,或是倒閣,都是見獵心喜,無限上綱政治鬥爭,只會使政局混亂,社會動盪不安,泛藍這一、二年來,一再升高政治鬥爭層次,是要搞垮本土政權,進而讓台灣失去國家意識,讓共產極權跨海而來,泛藍由於國家認同問題,陷入大中國意識的執著,甘為中國的馬前卒,自2000年政權移轉以來,泛藍一路追殺陳總統以及執政團隊官員,從不手軟,這次更赤裸裸暴露了奪權的野心,從罷免、知所進退到倒閣,都是想要鬥倒陳總統進而搞垮本土政權,已成為台灣的最大亂源。
 陳總統以國家利益為至上,置個人榮辱於度外,展現誠意與決心,下放權力、准辭親信,也不再介入黨務與選務,都是他深切反省,回應外界期待的作為,朝野都應給予合理的評價,不該還要落井下石,或雪上加霜,趁火打劫,大發政治財,泛藍錯估形勢,一味升高政治抗爭,與本土政權對抗,如果引發泛選民的不滿,進而奮身捍衛本土政權,可能延伸成為族群對抗,不是國家之福,相信也非認同這塊土地的人們,願意看到的現象,政黨政治抗爭應該適可而止,不能無限上綱,是台灣人的共同期待與心願。
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 終わりの二段落が結論だが、「国民党系はこの一、二年、政治党争を強め、本土派政権を越え、台灣の国家意識を失わせ、共産党に海を渡らせようとしてきた。国民党系には国家アイデンティティー問題があり、大中国意識に執着して、中国の鉄砲玉に甘んじている。2000年の政権交代から、国民党系はひたすら陳總統と執政官吏を標的にして手をゆるめず、今回は赤裸裸に政権奪還の野心を示した。罷免から進退問題、倒閣にいたるまで、みな陳總統の本土派政権を倒そうとしてきた。これが台灣の最大の乱源である。
 陳總統は国家の利益を至上とし、個人の栄辱は度外視して、誠意と決心を示し、権力を手放し、側近を辞任させ、党務と選挙に介入しないことを決めた。みな彼の深い反省であり、外界の期待への回答である。朝野ともに合理的評価をすべきで、これ以上責めてはいけない。政治の力を発揮して、国民党系が形勢判断を誤り、政治抗争を高め、本土派政権に対抗するとき、もし本土派の選挙民の不満を高めれば、進んで本土派政権の防衛にあたり、族群の抗争はつづくことになる。これは国家の福祉に反する。この土地の人々が見たいのは、政党政治の抗争が適当なところでおさまり、無限に続かないことで、これが台灣人の共同の期待と心願だと信じる。」
 陳政権のスキャンダル(官職売買、株式のインサイダー取り引きなど)を放置すればおそらく国家の法治的基礎(信頼)が崩壊して、台湾国家はアフリカなどの国家のように自壊するかもしれない。かといって、国民党系内の親中派(総統辞任などと騒いでいる人達)が次期政権をとれば、今度は外からの介入(中国共産党の間接支配から直接支配につながる)でやはり台湾国家は崩壊するだろう。台湾の未来を本当に考える人であれば、政治の隘路(内からの崩壊か外からの崩壊か)をどう乗り越えるか、心身をすり減らす毎日かも知れない。

2.yahoo世論調査の結果から
 では、その他の選択肢は?世論は操作されているのはどこでも当然なので、私のような一介の一外国人市民には分かりようもないものだが、あくまでご参考までに、最近のyahoo世論調査から、関係のありそうな質問を拾ってみた。
①有人認為貪污、收賄、買官、賣官、關說等行為係「人之常情」,請問您是否認同這種說法?(贈收賄、官職売買、口利きなどは人の常と見る人も居ます、認めますか?)投票期間:Mar 31 2006 12:00 ~ Jun 1 2006 12:00 總投票數:14705 票
1.非常認同 (大いに認める)10% 1484票
2.還算認同 (大体認める)9% 1292票
3.不太認同 (余り認められない)8% 1134票
4.無法認同(認められない) 73% 10795票
②當人民對政府元首的道操守有所質疑時,是否適合發動罷免?(国民が元首の道徳節操に疑義を抱いたとき、罷免すべきでしょうか?) 投票期間:May 30 2006 12:00 ~ May 31 2006 12:00 總投票數:19048 票
1. 非常適合(そのとおり) 73% 13990票
2. 還算適合 (だいたいそう)14% 2602票
3. 不太適合 (あまりそうではない)7% 1407票
4. 很不適合(とてもそうではない) 5% 933票
5. 不知道/沒意見 1% 116票
【コメント】この二つは、投票数も一万以上で台湾の庶民の感覚をよく表していると個人的には思う。”巨悪を嫌う”人が台湾人の庶民だ。民主国家の国民なら誰でも同じだ。不正に対する感覚は、非常に鋭い。以下も同じ。
③請問您認為總統的親家應該受到什麼程度的道標準檢驗?(お伺いします。総統の縁戚にはどの程度のモラルが必要ですか?) 投票期間:May 15 2006 12:00 ~ May 16 2006 12:00 總投票數:15429 票
1. 與第一家庭相當(総統一家と同じ) 67% 10290票
2. 與政治人物相當 (政治家と同じ)12% 1865票
3. 比一般民眾稍高 (庶民より高い)12% 1840票
4. 與一般民眾相當 (庶民と同じ)9% 1367票
5. 不知道/沒意見 (わからない)0% 67票
④請問您認為國內目前的證券投資,內線交易情形嚴不嚴重?(お伺いします。国内の証券投資ではインサイダー取り引きがひどいでしょうか?) 投票期間:May 17 2006 12:00 ~ May 18 2006 12:00 總投票數:11742 票
1. 很嚴重(非常にひどい) 87% 10160票
2. 還算嚴重(かなりひどい) 10% 1120票
3. 不太嚴重(あまりひどくない) 1% 128票
4. 很不嚴重(まったくひどくない) 1% 162票
5. 不知道(わからない) 1% 172票
【コメント】台湾では個人投資家が多い。噂は火のように広がる。特に後者は、台湾の国際的信用を失墜させかねない問題で、内からの崩壊の最大要因のひとつになりかねない。

3.政権への信頼度と台湾意識
 以下の2問は、政権への信頼度を試す質問らしい。 
⑤就您自己的使用習慣,請問您會以「罄竹難書」形容正面或負面的事物?(あなたの慣用では、「罄竹難書」はいい形容ですか悪い形容ですか?) 投票期間:May 23 2006 12:00 ~ May 24 2006 12:00 總投票數:16312 票
1. 正面(いい)3% 544票
2. 正面與負面(両方) 6% 963票
3. 負面(悪い) 91% 14805票
⑥整體而言,請問您會為陳水扁總統這次「興揚之旅」打幾分?(全体的に見て、総統の今回の外遊は何点ですか?) 投票期間:May 11 2006 12:00 ~ May 12 2006 12:00 總投票數:25375 票
1. 100分 8% 2030票
2. 90分 3% 700票
3. 80分 3% 699票
4. 70分 2% 394票
5. 60分 2% 572票
6. 50分 4% 966票
7. 40分 3% 835票
8. 30分 5% 1147票
9. 20分 4% 974票
10. 10分 7% 1667票
11. 0分 61% 15391票
【コメント】信用を失い人気をなくすとみな同じ目に逢う。私のようなだめな田舍教師でも教室の反応は同じだ。⑤は文部大臣が古典「罄竹難書(文字に出来ないひどい悪事)」の用法を権力者の新説に合わせて答弁したことへの、皮肉。人気があれば、「おもしろい」「新しい言い方だ」となるが、信用がないと、結果は明白だ。⑥は外遊への評価。
以下の問題は、国家アイデンティティーの質問である。
⑦請問您是否贊成我國以「台灣」的名義加入世界衛生組織(WHO)?(お伺いします。わが国が台湾の名でWHOに加入するのに賛成ですか?) 投票期間:May 27 2006 12:00 ~ May 28 2006 12:00 總投票數:9921 票
1. 非常贊成(とても) 73% 7278票
2. 還算贊成(だいたい) 11% 1096票
3. 不太贊成(あまり賛成ではない) 4% 394票
4. 很不贊成(とても贊成しない) 10% 1005票
5. 不知道/沒意見 1% 148票
⑧根據《國旗國父遺像及元首玉照懸掛要點》,政府機關及公立學校集會場所要懸掛國父與現任元首肖像,請問您認為上述場所應懸掛何種肖像?(国旗国父元首掲揚規則によると、国父と元首の肖像をかける必要があります。何をかけていますか?) 投票期間:May 26 2006 12:00 ~ May 27 2006 12:00 總投票數:11467 票
1. 國父與現任元首(国父と総統) 20% 2323票
2. 僅國父肖像(国父だけ) 56% 6420票
3. 僅現任元首肖像(総統だけ) 4% 507票
4. 都不懸掛(掛けていない) 18% 2119票
5. 不知道/沒意見 1% 98票
⑨請問您認為我國目前的國歌是否有修改的需要?(お伺いします。今の国歌を変える必要がありますか?) 投票期間:May 16 2006 12:00 ~ May 17 2006 12:00 總投票數:18266 票
1. 需要全新的國歌(新しい國歌) 15% 2730票
2. 需要大幅修改(大きく変える) 3% 531票
3. 需要小幅修改(少し変える) 10% 1892票
4. 完全不需要修改(変えなくてよい) 70% 12861票
5. 不知道/沒意見 1% 252票
 世論操作されて、国民党系の人だけがこうした投票をしているとすると、⑦の質問はかなり親中派には都合が悪い。一方、⑧⑨は「独立」派には都合が悪い。こうした質問から国家像を推測すれば、国号「台湾民国」で国父は「孫文」国歌は「三民主義・・・」 ということになってしまうが・・・。

4.信頼回復の道
 春秋の故事に学ぶとすれば、こんなエピソードはどうであろうか。
①斉の桓公
 春秋五霸の最初の王とされる。名宰相管仲(管鮑の交わりの主・桓公を殺そうとしたが、友人の助けで桓公の家臣になった)によって五霸の最初の王となったが、管仲の死後は以下のように、悲惨な最期だった。
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 管仲の死後
紀元前645年、国政の要であった管仲が亡くなると、国政を顧みなくなり放蕩に明け暮れるようになった。管仲が亡くなる時に引き立ててはいけないと言った佞臣たちをも登用し、国政は乱れた。桓公が病床に就くと、公子たちの後継者争いの中で息を引き取り、67日の間その遺体は放置されたままになり、その棺からウジが湧き出したという。斉はこの後もたびたび後継者争いが起こり、覇権は晋、楚へ移った。
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 桓公は名臣と佞臣を共に得た。桓公が管仲の死後重用した三人の臣には、すでに佞臣となるべき徴候がみられていた。そのために管仲はその重用に反対したのである。
 易牙は本来は料理人で、自らの子を烹殺し料理に出して気に入られた人物であり、公子開方も衛の公子であったが、父に背いて斉に仕えるようになった人物、豎刁も君主に近づく為自ら去勢してに宦官になった人物である。
 こうした人と管仲の違いはどこであろうか。管仲は、桓公を自分の主君のために殺そうとしたことがある。つまり、自分の主君のために全力を奉げる人だった。しかし、三人も非情さでは管仲と同じだが、対象が違っていた。権力の座のために手段を選ばなかっただけである。政治は権力の魔物である。その位置につくと、過去には出なかったその人の内面が出てくる。側近政治の失敗は、信長、秀吉も同じであろう。

②楚の荘王
 人を選ぶ点では、以下の荘王の話は、含蓄に富んでいる。
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鳴かず飛ばず
父の死により即位した直後、まだ若い王であったため、公子の一人・燮(しょう・言の字の両側に火、その下に又の字)が謀反を起こした。一旦は首都と王室を完全に支配下におき、自ら王を名乗ったが反対勢力の拡大に身の危険を感じ、王である荘王を拘束して、北方へ逃げた。晋と秦と楚の国境近くの商密というところで反攻を開始しようという狙いからであった。ところが途中の盧(ろ)という町で燮は殺された。荘王は解放され首都にもどった、ということがあった。それ以降、荘王は全く政治を見ず、日夜宴席を張り、諫言する者は全て誅殺すると宣言した。家臣達は呆れ返ったものの諫言も出来ずに見守っていたが、三年目に伍挙(伍子胥の祖父)が「謎かけをしたいと思います。ある鳥が三年の間、全く飛ばず、全く鳴きませんでした。この鳥の名は何と言うのでしょうか?」と言い、荘王は「その鳥は一旦飛び立てば天まで届き、一旦鳴けば、人を驚かせるだろう。お前の言いたい事は解っている。下がれ。」と言った。その後も淫蕩に耽ったが、太夫蘇従が死を恐れずに諌めたので、これを期に荘王はそれまでの擬態を解いた。
荘王は、三年間、愚かな振りをする事で家臣の人物を見定めていたのである。伍挙と蘇従に国政を取らせ、目を付けておいた者を新たに数百人登用し、悪臣を数百人誅殺した。この故事からじっと機会を待つ状態の事を「鳴かず飛ばず」と言うようになった。(ただし現在では長い間ぱっとしないと言う意味で使う事が多い。また斉(田氏斉)の名君の田氏斉も荘王と似たケースが見られた。)
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 今、こうして人を選び、「泣いて馬謖を斬る」覚悟でなければ、時間的猶予はもうあまりないだろう。


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2 コメント

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「周辺事態」も色々・・・・ (tsubamerailstar)
2006-06-04 13:01:48
台湾も韓国も色々訳判らん状態になっているようですが、藍色陣営というのは「ポーズとしての親中」てな感じで、実際政権奪還したら米国ベッタリの路線に戻るような気がしないでもないですよね。

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やはり混沌としています (蓬莱の島通信ブログ別館)
2006-06-06 08:25:53
ニュースを見ていてもお互いに模様眺めという感じで、総統の婿もおそらく”無罪釈放”になるでしょう。簡単ではないという印象ですが、台湾単独で何かが決められる時代はもう終わっているのかもしれません。
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