よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
カテゴリーが多岐に渡りすぎて整理を検討中。

57:第17章:ケインズの貨幣論-貨幣はコントロールできるのか?

2021年02月28日 | 一般理論を読む
  表題の問いの正解は「できることもある」である。21世紀にもなって金価格が高騰しているのをみると難しいなあと思う。ケインズもそう思っていたに違いない。 この章のここまでの節の結論は面白いので全文掲げる。こうして、貨幣-利子率が上昇しても貨幣の生産量を刺激することはなく(貨幣の生産は完全に非弾力的だと想定されている)、その上昇は生産が弾力的なあらゆる生産物の産出量を抑止する。貨幣-利子率 . . . 本文を読む

58:第18章 雇用の一般理論:ケインズ自身の手になる一般理論の要約

2021年02月25日 | 一般理論を読む
 この本は「雇用・利子および貨幣の一般理論」である。雇用量の決定要因を探るために書かれた。つまり「第18章 雇用の一般理論」とは一般理論そのものである。 この章は、経済体系の操作可能性の探求である。と同時にケインズ自身の手になる一般理論の要約が出てくる。 まずは一般理論の要約を引用する。すなわち、これが「雇用の一般理論」でもある。ここでこれまでの諸章の議論を要約しておくことにしよう。ただし、〔これ . . . 本文を読む

59:第18章:「我々は、我々の住む社会を変えられる」というケインズの、静かな、しかし確固たる意志

2021年02月22日 | 一般理論を読む
賃金が下方硬直的であることは、経済体系の安定性のための必須条件である 雇用の一般理論の次に出てくるのは経済の固有安定性の話である。我々の経済が、貨幣よりも銃が幅を利かせ、一般的等価物が白い粉になり、公共インフラはとうに消滅してしまっている。そういう夜警国家ならぬ夜盗国家のような、マッドマックスの世界のような経済もあるにはあるが、おおむね安定しているのはなぜか。ケインズは四つの安定化要因を挙げる。① . . . 本文を読む

60:第5編 貨幣賃金と物価:「価格破壊」のナンセンス。賃金が下がって商品価格が下がって需要は刺激されるのか?

2021年02月19日 | 一般理論を読む
賃金と物価に関係はあるのか???   第5編 貨幣賃金と物価 に入る。 第5編は、労働組合関係者にもっと読まれてしかるべき箇所である。賃金と物価の関係について一般理論は何を主張しているのだろうか。労働組合の言う「所得政策」や「逆所得政策」は理論的に成り立つのだろうか?そもそも問題の立て方が間違っているのだろうか? 実は、賃金と物価はケインズにとって周辺的な問題であった。周辺的というより、 . . . 本文を読む

61:第19章貨幣賃金の変化:雇用量は賃金単位で測った有効需要と一意の関係を持つ

2021年02月16日 | 一般理論を読む
貨幣賃金の変化がもたらす帰結についてはもっと早い章で論じたほうがよかったかもしれない。というのは、古典派理論の想定する経済体系の自己調整的性格は貨幣賃金の伸縮性の仮定に基礎づけられるのが通例で、〔貨幣賃金に〕硬直性がある場合には決まったようにこの硬直性に不調整の責めが負わされてきたからである。だが自説を展開してしまうまではこの問題を十分に論じ切ることは不可能であった。貨幣賃金の変化の帰結は込み入っ . . . 本文を読む

62:第19章:伸縮的“賃金”政策か、伸縮的“貨幣”政策か

2021年02月13日 | 一般理論を読む
「固定費の変動費化論」「労働市場規制緩和論」の迷妄 ここからケインズは伸縮的賃金政策と伸縮的貨幣政策について論じていく。いわゆる「所得政策」「逆所得政策」を考える上でも必須だ。 長引く停滞やデフレが賃金の下方硬直性のためであるとされて「固定費の変動費化論」や「労働市場規制緩和論」が主張されてきた。いわゆるサプライサイダーの経済学であり現在正統派理論である。  現実に非正規労働者の増大で賃金水準が大 . . . 本文を読む

63:第19章:借り手のないカネは存在するのか? 古典派の最も強靭な表現:ピグー教授の『失業の理論』

2021年02月10日 | 一般理論を読む
 前項は、不況の原因は賃金の下方硬直性にある、といういまだに見聞きする議論への批判であった。 では、そもそも失業の原因はどこにあるのだろうか?これまで長々とピグー教授の失業理論を批判してきたが、それはなにも彼が他の古典派経済学者以上に批判を受けてしかるべきだからではなく、彼の試みが、私の知るかぎり、古典派の失業理論を正確に記述しようとした唯一の例だと思われるからである。要するに、古典派理論がその最 . . . 本文を読む

64:第20章 雇用関数:有効需要=完全雇用ではない の復習

2021年02月07日 | 一般理論を読む
産出量の弾力性を検討する 心が折れること必定の章である。ケインズすら「代数を好まない(それが当たり前)人は本章の第一節を読み飛ばしても失うところはほとんどないであろう。」などと嫌味なことを言っている。裏では「僕は得意なんだけど…」と言っている。 ご安心ください。ケインズの代数部分、数式の展開を、経済学説史上もっとも簡明に文章にしておきました。 ただ、簡明な分、失われることもあるので、 . . . 本文を読む

65:第20章:需要に対する雇用弾力性は物価のパラメーターとなる一方、雇用関数には非対称性が存在する

2021年02月04日 | 一般理論を読む
賃金・物価・利潤:あくまで需要⇒賃金・物価・利潤である ケインズの所論をまとめると 完全雇用下では労働の追加に対する労働の報酬は高くなり、他の生産要素の枯渇からも生産物の数量は減る。厳密な均衡条件のもとでは賃金・物価したがって利潤も需要と同じ割合で変化し、生産量と雇用量を含む「実物」ポジションは元のままであるなら、産出量は変わらないのでP=MVという貨幣数量説の世界となる。逆にいうと完全 . . . 本文を読む

66:第21章 物価の理論:貨幣数量説の権化たるリフレ派を根底から批判する

2021年02月01日 | 一般理論を読む
貨幣供給はデフレ問題を解決するのか? 物価は需給バランスで決まる、というのは当たり前のようだが何も言っていないに等しい。 さらに「失業のあるかぎり雇用は貨幣量と同じ割合で変化するが、完全雇用に到達すると、こんどは物価が貨幣量と同じ割合で変化する(命題Ⅰ)」と主張すると、無意味な内容が誤った内容に変わる。つまりここでケインズが展開しているのはリフレ派批判である。 一般理論の有効需要の原理では、収穫逓 . . . 本文を読む