大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トルコ、ステルス利上げ

2018年08月16日 | 日記

 フィナンシャルタイムズによれば、トルコ中銀は従来からある1週間単位での貸し出し(利率17.75%)を中止し、一日単位での貸し出し(利率19.25%)に誘導することを決定した。

 これは、実質的に1.5%の利上げを意味する。

 このまわりくどいやり方は利上げを批判するエルドガン大統領に配慮した措置だと思われるが、問題は市場がこれをどう評価するか。

 ここ数日はリラ高が続いているが、トルコによる報復関税の決定などもあり、トルコ問題はまだまだ予断を許さない情勢が続きそう。

 


トルコ発の世界恐慌?

2018年08月13日 | 日記

 トルコ通貨リラが暴落している。

 2018年8月10日(金)、リラはアメリカの対トルコ関税引き上げをきっかけに対ドルで16%近く下落。今年に入ってからリラの対ドル下落率は70%に達した(1ドル3.8リラ⇒6.8リラ)。

 こうした通貨下落にエネルギー価格の高騰がかさなり、2018年6月のトルコのインフレ率は15.4%。人々の生活を直撃している。

 しかしより深刻なのは、外貨とくにドルで大量のお金を借りている企業である。

 トルコは新興国のなかでも外貨建ての借金が多い(資金を国内でまかなえていない)。ニューヨーク・タイムズ(2018/8/11)によれば、トルコの外貨建て債務はGDPの約70%に達している。

 ドルでお金を借りている企業は、リラが70%下落すれば、返済(あるいは借り換え)のコストが70%アップしてしまう。

 トルコでは、世界的な低金利を利用して過剰な借り入れをおこなっていた企業も多いとみられ、こうした企業で債務返済が重荷になるところが多数出てきている(フィナンシャル・タイムズによれば為替ヘッジしていた企業は少ない)。

 ちなみに、資金のおもな貸し手はヨーロッパとアメリカ。

 前掲フィナンシャル・タイムズによれば、スペイン、フランス、イタリアの銀行はリラ建ておよび外貨建て合わせて、それぞれ833億ドル(9.2兆円)、384億ドル(4.2兆円)、170憶ドル(1.9兆円)の債権を有している。

 また前掲NYTによれば、アメリカの投資家は既発債の25%、公開株式の半数以上を所有している。

 トルコで大規模な債務不履行がおこれば、欧米の銀行、投資家も大きな痛手を被ることは必至である。

 NYTの記事は、トルコ発で世界金融恐慌が生じ、その規模はリーマンショックを上回ると予想するアナリストを紹介しているが、最近、米英の経済メディアではトルコが世界的な景気後退の引き金を引くとする記事をよくみる(トルコを、炭鉱のカナリアに例えることが多い)。

 もっともトルコがこのまま無策で経済危機に突入する可能性は小さく、あとから見れば、これまで多くあった「一時的な経済混乱」に過ぎない可能性が高いように思うが、しばらく注意してみていきたい。


アメリカの州地裁、農薬ラウンドアップの発がん性を認める判決:がんの原告に320億円の賠償命令

2018年08月12日 | 日記

 欧米の主要メディアによれば、2018年8月10日(金)、カリフォルニア州裁判所の陪審員は、モンサントの農薬ラウンドアップなどに発がん性があることを認め、がんを発症した原告ジョンソン氏に2.89億ドル(約320億円:1ドル=110えん)の賠償を命じる判決を下した。

 原告の弁護士は、モンサントがグリホサート(成分)やラウンドアップ(製品名)ががんをひきおこす可能性があることを何十年も前から知っていたことを示す内部文書があり、陪審員はそれをはじめて見たと述べている

 これに対し、モンサントはグリホサートに発がん性はなく、控訴するとの声明を発表した。

 なお、2016年、モンサントはドイツのバイエルンに625億ドル(6.8兆円)で買収されている。

 ラウンドアップは日本でも販売されており、私も実家の除草に使っている。実は最近もアマゾンで希釈用のラウンドアップを2本買ったばかりだ。

 モンサントが控訴するということで、裁判はまだ最終決着していない。

 そういう意味で本当に発がん性があるかどうかまだ決着していないのだが、私個人としてはもう同製品を使うことはないだろう。

 気になるのは日本のメディアでの扱い。日本製品の場合、製品事故があっても通常メーカー名は出ない。明日のメディアでどう伝えられるか(あるいは伝えられないのか)気になるところである。