米政府はメキシコがアメリカへの不法入国者数を大きく減少させなければ、2019年6月10日(月)からメキシコからの全輸入品に5%の関税を適用する予定になっている。
メキシコが十分な措置をとらない場合、関税は7月1日に10%に、以降1か月ごとに5%引き上げられ10月1日には25%に達する予定(背景の説明はこちら)。
ところでこれに対し一部で、①中国との貿易紛争ほどの影響はでない、②トランプ大統領の思いつき、脅しで実際には関税を引き上げない、という見方がでているがはたして実際はどうなのであろうか?
出所:Census Bureau
上はアメリカの国別輸入額(月)の推移である(サービスを除く)。
2018年10月までは中国からの輸入がダントツに多かったが、それ以降、関税引き上げや貿易赤字を気にするアメリカへの配慮などからか中国からの輸入が急減。
2019年3月にはメキシコが中国を上回って、アメリカの輸入第一位におどりでている。
アメリカのメキシコから輸入額は月300億ドル(3.3兆円:1ドル=110円)、年3600億ドル(40兆円)に達するもので、経済への影響が小さいとはとても言える規模ではない。
さらに工業製品についていえば、メキシコからの輸入品には中国からの輸入品より多くのアメリカ製部品が使われているため、関税引き上げの影響は中国より大きく出る可能性も指摘されている。
②については、関税引き上げがツイッターでの突然の発表だったため、まるでトランプ氏が思いつきをそのままツイッターしてしまったような印象を与えた。
しかし、ニューヨークタイムズは、実際には関税公表までホワイトハウスで数週間の議論があった末の発表であり、発表時には税関当局の実務的準備もすでに進められていたことを明らかにしている。
もっとも、前のブログで書いたようにメキシコは実は今年2月ごろから不法移民の取り締まり強化にすでに政策転換しており、トランプ大統領の関税引き上げ発表をうけ、先週からはさらに取締りを強化している。
また、メキシコをサプライチェーンに組み込んでいる産業界からの強い反対や世界的な株安の進行などの問題も発生している。
こうしたなか最終的にどのような判断がくだされるのかは最後の瞬間までトランプ大統領にしかわからない。
どうなるか注目している。
出所:同上