大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トランプ氏はかつてシリアへの軍事介入を批判していた

2017年04月08日 | 日記

 アメリカのシリア軍事施設へのミサイル攻撃についてメディアではさまざまな論評がおこなわれているが、なかには「?」と思う論評もある。

 たとえば、2013年にアサド政権が化学ガスで多くの市民を殺害した際、オバマ大統領が最終的に軍事介入を避けたことについて、かねてからトランプ氏がこの対応を批判していたという論評である。

 しかし、トランプ氏はもともと人道目的で他国に軍事介入することを(アメリカにとって無駄な出費として)批判しており、オバマ氏が軍事介入を避けたときもトランプ氏はツイッターで「シリアを攻撃するな、アメリカの問題を解決しろ」とつぶやいている。

 これはバノン氏の立場とも一致している。意外と思われるかもしれないが、バノン氏も(アメリカに利益がないとして)中東への軍事介入に反対で、中東でのアメリカの積極的な役割を模索するクシュナー氏とするどく対立している。

 ティラーソン国務長官(=外務大臣)が「シリアの問題はシリア国民が決めることだ」とシリアへの介入放棄を示唆するかのような発言をしたのはこの延長線上にある。

 問題はティラーソン氏の発言の数日後に化学ガスが使われた(可能性が高い)ということである。

 これではトランプ政権の面目はまるつぶれである。

 そこで外交的、国内的ダメージをさけるため、国連などによる十分な検証をへることなくシリアの軍事施設へのミサイル攻撃が拙速におこなわれることになったというのが真相ではないかと思う。

 攻撃の2時間前にはロシアに攻撃対象基地から退去するよう事前通告がなされたということで、攻撃の実効性は限定的で、今回の攻撃はあくまで象徴的なものだったと思われる。

 なお攻撃の後、トランプ氏はいつものように、以前から2013年のオバマ氏のシリア不介入を批判しており、今回の化学ガス使用もオバマ政権に責任があるかのような(事実と異なる)コメントを発表している。

 さすがにアメリカのメディアはその問題点を指摘しているが、そんなフェイクニュースをそのまま事実のように報道している日本のメディアが多いのにはびっくりする。



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