2019年9月17日、アメリカで国債などを担保に短期資金を貸し借りするレポ取引の金利が10%まで急上昇した。
この理由について、当初は税金の収納時期などがせまり一時的に短期資金が足りなくなったためと説明された。
しかし、ニューヨーク連銀は、それ以降も短期金利を安定させるためレポ市場に巨額の資金を供給し続けている。
たとえばニューヨーク連銀は先週だけでも
11月18日(月)に610億ドル(6.7兆円:1ドル=110円)
11月19日(火)に1024億ドル(11.3兆円)
11月20日(水)に744億ドル(8.2兆円)
11月21日(木)に1037億ドル(11.4兆円)
11月22日(金)に806億ドル(8.7兆円)
という巨額の資金をレポ市場に流し込んでいる(1日および14日レポの合計)。
この理由については、
(1)近年、ひとにぎりの機関投資家がレポ市場で短期資金の供給を独占するようになっている(少数の影響力が大きくなっている)
(2)この少数の資金供給者が、資産買い入れを増やし現金資産の比率を引き下げた結果、金融危機後の規制強化のためレポ市場への資金供給をしぼらざるをえなくなった
との指摘もなされている。
理由はともかく確実に言えるのは、いま短期市場で資金ショートがおきている-いまの短期金利では低すぎてお金を貸せない-という状況になっているということである。
米連銀は短期資金市場の安定化を目的に月600億ドル(6.6兆円)の国債買い入れもはじめている。
これにより来年には短期資金市場は落ち着くとの見方もある。
はたしてもくろみどおり、短期資金市場は安定にむかうのであろうか。
注意してみていきたい。
2019/12/9追記
NY連銀は先週も月曜から金曜まで毎日700億ドル(8兆円:1ドル=110円)を超える資金をレポ市場に供給した。
ところでFT紙によると国際決済銀行(BIS)は、ヘッジファンドからの現金需要が高まっていることもレポ市場の混乱の一因と指摘し、供給側だけでなく需要側にも混乱の原因があるとしている。
BISによると、国債を買うと同時に金利先物のデリバティブを売ってそのさやを取るようなトレードをしているヘッジファンドが、手元の国債をレポ市場で現金化し、それをまたトレードに使うといったことがおこなわれている。
しかしこれが本当だとすると、NY連銀は金融システムの安定化のためだけでなく、ヘッジファンドの利益追求のためにも巨額の資金をレポ市場に提供し続けていることになる。BISの指摘に対しNY連銀がどのような反応をみせるか(あるいは反応しないか)少し注意してみていきたい。