大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

GMのUAW組合員、労働協約を承認: 40日間のスト終結

2019年10月27日 | 経済

 2019年10月25日(金)、GMのUAW組合員は過半数の支持で4年間の労働協約承認した(技能労働者56%、専門労働者66%が賛成)。これにより40日間続いたストライキは終結した。

 労働協約の内容は、先のブログで書いたとおり

 ニューヨークタイムズによれば、この労働協約によりGM労働コストは1年あたり1億ドル(110億円:1ドル=110円)増加するが、数千億円という純利益の規模からみれば小さな変化である。

 一方で、ストライキによるGMの損失約2千億円とされている。

 ところでオートモーティブニュースによれば、日系を中心とした移転工場の労働コストは時間当たり約50ドル(5500円)。

 これに対しGMの時間当たり労働コストは63ドル(7千円)に上昇するとみられている。

 コスト競争上、GMは日系メーカーより不利な立場におかれることになる。

 この点を危惧する米メディアは多いが、私は大型車ブームが続く限り経営への影響は小さいと考えている。

 現在アメリカでは、低価格で利幅の小さい小型車市場はおもに日本と韓国メーカーが支配し、米メーカーの撤退が進んでいる。

 一方、米メーカーは利幅の大きい大型車市場に資本を集中し、利益のほとんどをそこから得ている。

 日本や韓国メーカーも大型車を投入しているが、米メーカーのブランド力は強くRAV4など一部車種を除き苦戦をしいられている。大型車市場では、低い労働コスト(価格)よりもブランド力の方がはるかに重要なのである。しかも、大型車市場は拡大をつづけ、小型車市場の3倍の規模になろうとしている。

 この状態が続く限り、ビッグ3の経営がゆらぐことはないと思われる。

 GMの次はフォードで労使交渉がおこなわれることがきまった。

 ふつうであればこの後、フォード、FCAでGMと同じ内容の労働協約が締結、承認されることになる。

 

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