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名古屋のど真ん中、新栄のヤマザキマザック美術館が、表記の特別展を実施しているので、久しぶりに訪問した。
この美術館は4階と5階に展示室があるが、4階で特別展を実施していて、5階は通常のフランス美術展示であった。
特別展の内容は、以下のようなもの。
1、江戸の名勝負
・将軍家と朝廷のツバキ対決
・東大寺大仏殿で披露 高さ12メートルの巨大いけ花!
・桜と牡丹 江戸の花番付
2、朝鮮人参との取組・・・尾州徳川の薬草畑
・朝鮮人参の畑がひろがる名古屋市東区葵の地(美術館の場所)
3、東西朝顔対決 ガレを魅了した日本の変化朝顔
・江戸の朝顔ブームの仕掛け人は名古屋の三村森軒
・桔梗咲の朝顔 エミール・ガレ《朝顔ランプ》
4、世紀末の饗宴 アール・ヌーヴォーと日本文化
5、平成の花相撲 アール・ヌーヴォーとボタニカル・アートの饗宴
本当の特別展示としては1と2、3の一部の歴史的図録の展示でそれほど多くなく、3以降は基本的にこの美術館の特徴であるガレ等のガラス器展示、また家具展示に歴史的図録や最近のボタニカルアートを組み合わせたものだった。
ここでは、特別展のみの概要を示す。
1.花相撲の由来と、江戸の名勝負等
花相撲とは、本気の勝負ではなく興行をショーアップするものと現在では扱われているが、由来は奈良、平安時代に遡るそうだ。
その頃の宮中行事の相撲節会で、東方力士が勝つと朝日を受けて咲く葵の花、西方力士が勝つと夕日を受けて咲く夕顔の花を自分の髪に差して退場した。持ち帰った後、その花を食料品や衣類に交換することができたそうだから、当時の経済はたいしたものである。
そして江戸時代、花をテーマに競争が始まった。
もっとも上流では、将軍家と天皇。将軍家光が江戸城にツバキを集め、椿好きの後水尾天皇に椿の図譜『椿華帖』を贈りました。ところが帝は、家光よりもずっと椿を知っているぞ!といわんばかりに、庭内の椿などそこに描かれていない他品種を加えて、『椿花図譜』を作ったとのこと。
後者は宮内庁管理だが、前者の『椿華帖』を下記に示す。丁寧に花姿が描かれている。成立は1640年代。
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その後ツバキの品種改良と一般への普及が進み、1700年には花屋さんが、100種にもおよぶツバキの花見本(「はなくらべ」)を作っている。
また1692年には奈良の大仏の開眼式のため、池坊の高弟に非常に大型の生け花を競わせている。高さ12mだから、かなり育った木を切り倒してドンとそこに置いたのだろう。安定して立たせることが大変だっただろう。
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また江戸時代には、草の部、木の部を東西に見立て、相撲のように花番付を作っている。草の部ではボタン、木の部ではサクラが大関となっている。
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それぞれ、多くの画集が作られて出版されているが、下記にボタン、サクラの図を示す。特にサクラの図は実物大で、丁寧に描かれている。
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そして江戸の頃、非常に有名だったアサガオの品種改良の競争。今回の展覧会がここで開催されたのは、名古屋の老舗の花屋さんが集めた資料に寄っているが、その中で、江戸でのアサガオの品種競争(1800年~40年)よりも早く尾張でアサガオの本が出版され(1723)品種改良が進んでいたことが示された。下記はアサガオの例である。
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そして、尾州の薬草園が朝鮮ニンジン等非常に充実していて、この地域が植物に関して先進地域だったことが示された。
多分これをアピールしたいために、展示会名に「尾州徳川の」と入ったのだろう。
2.ガレそしてアールヌーボーと、日本文化のうち特に花の図集
アールヌーボーに対して葛飾北斎の画集など影響が大きいとされているが、日本で作成された花の画集も多数ヨーロッパへ持ち出されていることが示された。特にガレの周辺には多数の本が集まり、それを参考に製作がなされていることが示されている。
ガレの花に関わるガラスの作品群を、下記に4例示す。それぞれが日本の画集からヒントを得ている。
左は変わりアサガオのランプ。そして右は菫の花器。
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左はモクレンの鉢、右はニオイアラセイトウの花器。
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また、ガレは家具も製作している。そしてその意匠に花や植物を描いている。その例を幾つか示す。
左はタンス。下部にはがっしりとした松、上に鳴き方を教育されている小鳥たちが象嵌されている。そして右はチューリップが象嵌された文函。構図が日本の画集にある。
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左は飾り棚。左下に花の象嵌がある。右はトンボの机。脚がトンボをアレンジしたものだが、テーブル面に花が象嵌されている。
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以前北斎とジャポニズム展で、北斎漫画が印象派など西洋美術の新展開に大きな影響を及ぼしたことを実感したが、非常に詳細に丁寧に描かれた植物の絵など、北斎漫画以外に多くの日本の画集がヨーロッパに行っていて、江戸時代の文化全体が素晴らしいものとして大きな影響を与えたことを認識した。
そしてそれを育てた庶民を含むその頃の文化度の高さを誇りに思った。
なお、5階の通常展示のフランス美術も素敵だが、全体が通常展示になった時に示す。
ところで下記の図は、最近の花相撲の番付。東西の大関にピースというバラ、そしてユリのカサブランカがなっている。
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お久しぶりです。
東京にご出張されたとか、猛暑の中疲れが残らなければ良いのですが・・・
また私のブログにコメント有難うございましたm(__)m
所でヤマザキマザック美術館花相撲の記事、興味深く拝見させて頂きました。
お仕事柄も有るのでしょうが、何時もてんちゃんの博識には感嘆させられております。
将軍家と朝廷との椿自慢も面白いです(^○^)
朝顔の花比べは私の事務所近く台東区入谷の朝顔市は元々この珍しい朝顔を咲かせる花比べが起源とか・・・
朝顔市そのものは戦後からのモノで有り、今年で66回目だそうです。
因みに現在入谷で朝顔や植木を栽培している所は有りませんが、江戸時代には栽培していた好事家も住んでいたそうです。
私自身美術には疎いですが、歴史や雑学も興味深いですね(^O^)/
かつて数年東京で仕事をしていました。
その時朝顔市もちょっと覗いたことがありますが、あまりにも変形した(細い花びらがついているような)アサガオには、らしくないなって思っていました。
それが今回の展覧会で、名古屋で原型が作られていたということを知り、おやおやと思いました。
日本の場合は、美術は独立峰のようになっていますが、アメリカなんか博物館に工業デザインが並んでいるし、写真展示も充実していてとても敷居が低いですよ。
もしかして、何度もいかれているかもしれませんが・・・