訪問日 2016年8月
<スミソニアン協会 国立航空宇宙博物館の外観>
先日、ワシントンのナショナルモールについて記載したが、今回と次回は周辺の施設の内 国立航空宇宙博物館について紹介する。
今回は特に、ライトフライヤーをテーマとして書く。
スミソニアン博物館群の中でもこの航空宇宙博物館は人気スポットで、周りにたくさんの観光バスが止まっていた。そして中もどこへ行っても混んでいた。
私はいくつか航空宇宙関係の博物館に行ったが、一般には趣味にこだわっていたり派手に見せようとの意図が強かったりだった。この博物館の特徴は展示物の豊富さもあるが、大学へ入る前の子供たちが興味を持てば徹底的に理解させようとの強い意志が感じられた。
もちろん大人にとっても十分魅力的なものだった。
興味ある人へ説明の豊富さということで、ライトフライヤーの展示を例に説明する。
ライトフライヤーはライト兄弟が製造し、1903年に世界で初めて固定翼機(飛行機)として空を飛んだ機体である。実は1908年に着陸に失敗して大破し、これまた世界初の飛行機による人身事故を起こした。その機体が修復されて展示されている。ただし翼に使用された帆布はさすがにボロボロだったので、ある時期修理のさいに、交換された。
30m角?くらいが区切られ、その真ん中にドカンとその機体がおかれている。そしてその周辺に説明用の資料が展示され、上部からライト兄弟が準備実験に使用した機体形状の凧が釣り下がっている。以下 私の知識も含めて面白そうな説明を書いてゆく。
<ライトフライヤー号の展示エリア>
兄弟は自転車屋さんだったそうだが、何を思ったか空を飛ぶ機械を作ろうと考えた。彼らが偉いところは、飛ぶ仕組みを考えるのにまず世界で初めての風洞(筒状の中でいろんな速度の風を吹かせることができる実験装置)を作って実験したことである。それで主翼の形状などを決めるデータを蓄積した。
<ライト兄弟が作り実験した風洞の再現模型>
それで決めた翼の帆布の形を決める木製支持部材を以下に示す。
<ライト兄弟が製作した主翼の帆布を形作る桁 前縁部 および 後縁部>
このカーブが重要。木の材質は、北米で最も強く折れにくい木を選定。
それとともに、操縦の重要性を理解し、飛行する機械に初めて上下左右、そして傾きの機能を持つ機構を採り入れようとした。飛行機はライト兄弟の前に他の人が開発したという話が時々でるが、それらの機体はこのような操縦機構はない。
これらの検討をもとに、構造を製作し搭載するエンジンやプロペラを決めた。そして飛行の条件や操縦性を確認するために、機体とほぼ同一形状の凧を作り、それに乗って操縦性の機能を確認した。
<ライト兄弟が乗って、操縦性を確かめた凧>
構造は徹底的軽量化を図るために、木と針金で骨組みを作り、帆布で翼を作っている。全体の重さが273kg。飛ぶときにはそれにパイロットの重さが加わる。
この飛行機は翼の幅12.3m(翼端間の距離)で2階建て(複葉)になっているが、現在の一葉の飛行機にならばその倍の幅にするか、後ろに向かって2倍にする必要がある。(要するに翼面積を2倍)
そんな一葉の羽根を構造的に持たせるにはごつい構造になるので、2段の羽根とし所々に木の柱を立て、翼の長手方向および幅方向に柱の間を✖印に針金を張ることで、上下が動かないように固定させた。これは後述する操縦性にもちょうどいい剛性だった。
<主翼、上下に翼を作り、木製の柱で間を広げる。左右前後の柱の間に✖に針金を張る>
<針金の取り付け部 頑丈な金具がついている>
この主翼の中にエンジンがあり、プロペラを後ろに向けて回す。小さなエンジン一つで、2つの大きなプロペラをゆっくり回していたようだ。
<パイロットを後ろから見る>
パイロットの右 黒丸がエンジン。そこから左右にチェーンでプロペラに回転を供する。パイロットの足の左右に、当て板があるのにも注意
そして操縦性。
パイロットの眼の前に水平向きの羽根がある。 これが現在の飛行機なら水平尾翼兼昇降舵に相当するもの。全体を上へ傾けると上へ行くし、下に傾けると下に行く。後ろに垂直尾翼兼方向舵に相当する垂直向きの羽根があって、これを、前を向いた状態で右に後縁を動かすことで右、左に動かすことで左に向かう。機体を傾けるのは、大きな主翼をねじる。ねじって右の前縁が下で左の前縁が上にくると右の主翼が下がる。左の主翼を下げるのはその逆にする。
<水平翼の支持状況>
<水平翼を動かすチェーン>
上記の操作を実施するのが、まるでツィスターゲーム。パイロットは腹ばいになって操縦席につく。
<飛行時のパイロットの状況>
左手にレバー、腰はスライド固定。
身体の左に 風速計(速度計測)と圧力計(高度?)があるのにも注意。
目の前の水平翼を動かすのが手に持っているレバー、垂直翼を動かすのが、たぶん足の当て板。そして主翼をねじるのが、なんと腰のスライド。
手と足、そして腰を振って、一生懸命操縦することになる。すべて風を受けて力がかかっているのを、自力でしか動かしたり固定したりできなかったから大変だっただろう。特に主翼のねじり。構造の剛性と風の抵抗に逆らって動かさなくてはいけないから、ツィスターといっても、ぱっと動くのではなく、うーんと力をいれてよたよたと動く状況だったのではないか?
そして多分微調整はきかなかっただろう。現在の翼は固定された翼の後縁のほうに少しの面積の補助翼がついて動くのに、こちらの場合は翼全体が動くのだから。少し動かしていきすぎたら、今度は逆の方向に動かすといった不安定な操作を繰り返すことになっていただろう。
パイロットになってみる。
この機体の脚はそりで摩擦が大きいから、今の飛行機のように地上を滑走して飛び上がることは出来ない。そこでレールの上に載せ強引に綱を引っ張って、離陸速度まで上げることで飛行を始める。
いきなり大きな力が加わり空中に放り出されたら、大慌てで操縦を開始。なんとか安定させようとじたばたツイスターのように手足や腰を動かしていたら(最大59秒、距離260m)、すぐドスンと衝撃の大きな着陸を迎える。途中で失敗すると墜落の恐れ、命がけのとんでもないツィスターだったとおもう。
この展示を見ていると、ライト兄弟の新鮮なアイデアと実証主義に感心した。
勉強になるという意味では、時間をテーマにした展示もなかなか面白かった。確かに飛行時間を知るということだけでなく経度が変わった時の時間など、航空機にとっては重要なテーマと思うが、あまり写真を撮っていなかったのでやめる。
次回は、ここでその他の特に興味を持ったもののアラカルトを示すつもりです。
私がワシントンに行ったのは1日だけだったので、駅からホワイトハウスに行き、ナショナル ギャラリーで絵画を観賞していると、時間がなくなり、連邦議事堂近くを通って駅に戻りました。遠くにワシントン記念塔が見えました。
スミソニアン博物館をじっくり見てみようと思うと、3日くらいかかるでょうね。
ワシントン・ナショナル交響楽団の公演が大阪、堺で今年3月予定されていましたが、新型コロナの影響で来日しなくなり、中止になりました。
梅雨で熊本県南部は大雨です。大阪はさほど強くは降っていません。来週はずっと雨ですね。
私の場合ちょうど、民主党の大集会の前でいくつかの博物館が閉じたり、部分的に制約があってりして残念な状況でした。こことナショナルギャラリーをメインに見てきました。
現在思い出しながら書いていますが、あの時はワシントンに行けるということだけで舞い上がっていました。もう少し事前勉強しておけばと残念です。
ご無沙汰致しておりました。
早速私のブログにご訪問、またお気遣いのコメントまで有難うございましたm(__)m
白内障の手術ですが、発症は丁度コロナで自粛の期間中、ただ左目は正常だったのでそれ程気にもならなかったのですが、5月の半ばになり頭痛等状態が悪くなり、主治医の先生の紹介で眼科の検診を受けたところ、白内障以外にも緑内障も発症しており、先月末手術を受けた次第です。
以前の様には参りませんが、撮影以外でも画像処理等PCで作業する時間も長く、半分は職業病で、しょうがないとは思っておりますが、まあこれからはボチボチやって行こうかと思っております(^_^;)
ところでDCの記事、とても懐かしく拝見させて頂きました。
私がDCへ行ったのは2回でどちらも20年近く前、前後して1回は家内と母、それにNYで暮らしている従姉妹家族とアムトラックで、もう1回は撮影スタッフと一緒にレンタカーでNYから往復の旅でした。
勿論目的は主にスミソニアン博物館群、それでも見られたのは極一部、勿論国立航空宇宙博物館、真っ先に見てきましたが・・・(笑)
9.11.前でしたし、大きなテロや選挙等の行事も無く穏やかなDC見物が出来ました(^o^)
こちらをお取り挙げて頂き、重ねてお礼申し上げます_(_^_)_
私も緑内障の目薬をずっとさしています。白内障は手術で治るけど、こっちのほうが爆弾ですね。
私が行った時は、テロ対策のためか入場のチェックが非常に厳しく、カバンの中をひっくり返して見られました。でも技術をちゃんと説明しようという意思が感じられ、興味を感じた子供たちにはいくらでも情報を提供するよという姿勢が大したものと思いました。 今後もアメリカは技術立国であり続けるでしょう。