オーストラリアはとってもユニークな動物たちがいます。彼等とほぼ自然の中で出会いました。ほぼというのは、出会った場所が動物園であっても放し飼いもしくは放し飼いに近い状態で飼われているため。
多分日本では、衛生とか安全にうるさいから、こんな動物との出会いは難しいでしょう。
<動物達のご挨拶 ケアンズ紀行(その3)>
1.ワライカワセミの朝
うーん うるさい!
鳥の鳴き声で、眼が醒める。
窓を開けると、眼の前の枝に止まったワライカワセミが鳴き止み、不思議に頭を傾け、私の様子を探る。
鶴が頭上を隣の植物園の池へと、ゆったりと舞い降りていくのと同時に、元気な笑い声で飛び立った。
そうか、池に鴨、朱鷺、そしてオウムやミツスイ、いろんな鳥達が集合し、僕達の朝の散歩を待っているのを伝えにきたのだね。
<ワライカワセミ。 首をぐっとまげて、これで眼が合っています。>
2.屋上のコアラ
カジノのエレベータを上がると、そこは可愛い街中の動物園。
子供が、コアラダッコにチャレンジする。
1日に3時間有毒のユーカリを食べつづけ、それを分解消化するため20時間弱の睡眠が必要なコアラは、残りの短時間を、オスならば数頭のメスを対象としたハーレムに費やすという。
何が起こっているかわからないという夢見ごこちの無表情で、ガラスの眼をパッチリと開けたコアラが連れてこられた。
子供がどっこいしょと数kgの塊を抱き、配偶者が補助して記念撮影。
あーっ、コアラの見事なカメラ目線、そして2人揃った素晴らしい笑顔。
彼は存在だけで人々を幸せにするのかもしれない。
珍しく 嫉妬した。
<睡眠中のコアラ。しっかりと木に爪を立てています。>
3.ロックワラビーの昼下がり
地面に近づけるように低いところから、餌を載せた手を差し出した。
岩陰から様子を見ていたロックワラビーは、おずおずと近づき、後ろ足と尻尾で立ち上がり、前足をちょこんと掌に乗せ、食べ始める。
「いてー 前足の爪が痛い…・・」
「なめられた……・」
「手をかまれた…・」
子供もなかなかうるさい。
しかしお構いなしに、清んだ眼で、一心不乱に食べつづける。
<ロックワラビー:岩場にいる50cm位のカンガルー。希少種とのこと。>
4.蝶のアフターヌーンティー
キュランダの網に覆われた館に、キラキラと色とりどりに輝くたくさんの蝶がいる。
そこここに置かれた砂糖水に集まるそれらの乱舞を、呆然としばらく眺めた後、館を出た。
外の花にも、やはりたくさんの蝶が舞っている。
中ではおとなしくしていた子供が、追いかけ始めると、集まり、高く高く登っていった。
あたかも館の中の蝶達に、その自由さを見せつけるかのように。
ときどき、青色がキラリと光るあの雲には、ユリシスが紛れ込んでいるのだろうか。
(ユリシス:青色に輝く羽根を持つ大型の蝶、森の中で見た人は幸運になるそうだ。)
<ユリシスの写真を撮れませんでした。他のカラフルな長の写真を並べます。>
5.エミュとの行進
エミュウォークと書かれたドアの向こうには、2羽のエミュが立ってこちらを見ていた。
私が鍵を開け、子供が「本当に入っていいの?」といって心配そうに入っていくと、「やあ待っていたよ」と首を揺らした後、振り返ってゆっくりと歩き出した。
子供は慌てて、2羽の間に入り、手を肩より上に挙げて、それぞれの胴体を触った。
一羽が子供の顔を見下ろしたが、いやそうな素振りを見せず、大きな胴体を揺らし、強靭な細い足を上げ、細い首の上に載った頭をゆらゆらさせながら、独特なリズムで歩きつづける。
子供を間に挟んだ2羽の後に、私達が続く奇妙な行進は、15m続いた。
<食事中のエミュ>
(ダチョウの次に大きな鳥。大人よりも背が高い。)
6.黄昏のカモノハシ
副官ガイドが、先ず口に指をあてシーッとする動作をして、斥候に立ち、川面の様子を探った。
手で、チョイチョイッと合図する。
ガイド隊長が改めてシーッとする動作を繰り返し、ツアー客約30名に静かな進軍を命ずる、本来なら匍匐前進といわんばかり。
隊長が指差したやや暗くなりかけた空を映す川面には、緩やかな円が描かれていた。
暫くすると、その中心から数m離れたところに、黒いものが浮上し新しい円が広がる。隊長がうなずく。
数秒程度で、身体をひねって、パチャーンと音を立て潜った。
隊長が、少しの移動を指示する。
また浮上してきて、今度は川面を少し泳いだ。鴨のようなクチバシや身体の輪郭がちゃんと見える。
パチャーン…・・ また潜る。そして暫くしてまた浮上。
潜るたびに数mの移動を繰り返した。
次で山肌にさえぎられると思ったとき、誰かが足を滑らせて音を立てた。
バシャッ、その音よりも大きな音を立てて潜り、もう私達の前に浮上してこなかった。
<カモノハシの潜った瞬間。浮上中の写真は撮れず>
7.オポッサムとの夕餉
キャンプ場での夕食の、バーベキューをかじっていると、子犬くらいの茶黒色の動物が、足元をうろつきだした。
「まだ,かまってはいけないよ、テーブルの上に上がってくるから。」
そう言っても、子供達は大騒ぎ。
頭上のテントの上をバタバタと走ったから、大人たちもそわそわし始め、噛みくたびれたか、夕食終了。
光の届かないところをすかし見ると、いつのまにか、オポッサムがぐるっと囲んでいる。木の上からも様子を覗っている。
子供達が、食パンを持ち外へ駆け出した。大人たちもそれなりに持って、後へ続く。
後はもう、手から餌取りの引っ張り合い。餌のためならどんなポーズでも平然。
しかし抱こうとしたら、猫のように後足で、ガリッと蹴られた。
<オポッサムの襲来。まるで忍者のよう>
8.光の中のホモサピエンス
高原からの夜遅き帰り道、ケアンズが見晴らせる場所で一時小休止。
星空から零れ落ちたかののように、しかし瞬かない尖った光の粒の集合体、片手で握りつぶせるくらい。
あれは、ホモサピエンスが創りあげた光。
私もあそこで一つ灯し、服と心地よい疲れを脱ぎ捨てる。
そして思い出を折りたたむために、消して眠りにつく。
<キュランダ高原からケアンズを望む>
2つの動物園、蝶苑、夜行性動物ツアー等の思い出を構成したものです。この他バロン渓谷の魚、口にテープを巻いたクロコダイル、野生のオウムや大型こうもりが印象に残っています。