空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「悲しいまでに凡庸」であればこそ

2019-04-25 17:36:27 | ノート


 この「安倍さんが凡庸なのは支持者ですらわかってる」について、私は「然り」というであろう。しかし恐らく、私が反アベ主義者と呼ぶ類の人々が想定するアベ支持者というのは、アベ氏の有能さを疑わない・妄信する類の人たちであり、それゆえにそうした反アベ主義者は繰り返し「アベは馬鹿だ」、多少穏当さを加味して「アベは凡庸だ」と言い募ることになる。

 で、まあ。
 安倍氏の有能さを積極的に信じる人々(積極的支持者―10%前後とでも思っておこうか、反アベで売ってる政党の支持がそんなもんだし)に「おめーが信じてる政治家、それ、馬鹿だから」と言うだけでは説得も何もなく、単に反発を食らうだけであろう。
 これは自分の支持政党なりなんなりについて同様のことを言われたときにどう思うか、ということで納得してもらいたい。

 で、まあ。
 おそらく10~20%くらい、さしあたり目先の景気のまあ一応の改善にプラス評価を下して支持するような向きがあり―外交政策でもなんでもよい、その人の評価する指標で安倍氏がまあ少なくともはっきりマイナスにはなってないと思う向きがいるだろう。
 この人たちは、程度の濃淡はあるが、安倍氏が有能であるが故に支持しているわけではない理屈である。
 この人たちにむけて「アベは馬鹿だ」と言っても、「うんまあ、あのひと、アタマよさそうではないよね」くらいで納得してもらえるだろうし、そして次に、「…その当然の事実を、なんでこのひと、ドヤ顔で言ってんだろ?」と疑念を持つだろう。つーか持った。

 別に安倍氏が空前絶後の絶望的低能でもいいのだ。
 反アベ主義者が言うように、そんな人であってもかまわない。
 だが第一次安倍政権の失敗を反省する程度にはミソがあったっぽいし、重要ポストは重みのある人を配置して仕事を任すと言うことができるくらいには―根っからのパーだとしても、自分の分をわきまえて大人しく神輿を演じることができるくらいにはパーフェクトではない。
 まあ、そんなもんじゃねえの? という位に消極的に、いやこれ、支持してるってゆーのかこれ、という「支持層」が20%くらいあろう。

 岩盤の10%は動かない。浮動層の30~40%をこそ崩すべきだが、そのためには「アベは馬鹿だ」と言っていてはたりない。ただこれだけのことなのだ。

AERA 「悲しいまでに凡庸」だった青年が日本政治の頂点に君臨し、この国の姿を変容させるまで 安倍晋三氏のルーツを探る 2019.4.23 17:00 中島岳志・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

実は、この問いに対して正確に答えることは難しい。国会議員になる前の発言や思想信条は、ほとんど文章として残っておらず、どのような考えを持っていたのかが判然としないのだ

 それでは普通の文献学的方法では無理ではないか、おお、どんな手法で立ち向かうのだろうと思ったら

本書はこの謎に、父子関係の問題から迫る

 で「…さようなら。あ、無駄金、つかわずに済むようにしてくれたことに感謝する」というのが、なんというか、好意的な評価になりはしないか。
 妄想小説かよ。なら楽しくいこうぜ。

 2ページ目

晋三は目立たない子どもだった。凡庸な「いい子」で、これといったエピソードが皆無に近い。「特に感性が研ぎ澄まされ、よかれ悪しかれ既存秩序への懐疑や反発なども強まる少年期から青年期にかけての逸話が、晋三にはほとんどない」

勉強ができたという印象もない。スポーツが際立っていたという印象もない。特別な印象が残っておらず、首相になる器とは思えなかった。関係者はそう口を揃える

 3ページ目

高校・大学時代の関係者にも取材をするが、やはりほとんどの人の印象に残っていない。どこを調べても若き日に自らの意志によって政治意識を育んだ形跡は見られない。ましてや現在のような政治スタンスは見られない。せいぜい垣間見えるのは、祖父・岸信介への敬慕のみ。「人間としての本質が空疎、空虚なものなのではないかという疑いすら生じさせる」

 それは、好意的に書けば、「恐らくはその思いを容易に口に出し、ただ周囲の耳目を引くという程度のことに浪費はしなかったものだろう」「その思いは内に秘められたまま、後に政治家となったときに噴出することになる」とか書くもんだろう。

 …いやまあ、そう書けば、今現に、ポジションも権力も影響力もろくろくなくとも大上段に天下国家、首相の資質や憲法の大義を声高に大いに日々論じてそれを誇りとするようなひとたちの胸が痛くなって本が売れなくなるかもしれないが。

 しかし、そうであってもちゃんと安倍氏を批判することはできるわけであり、まーそんな思いのたけを野放図に噴出した結果、せっかく天下(第一次)とったのに、あえなく討ち死にしましたねーまーお坊ちゃんには調整とか待つこととか人を信じて任せるとか、難しすぎたんですかねーと草を生やせばよい。まあ第二次で反省のあとが見られるねとプラス評価せざるを得なくなるが。

 ともあれ、気楽なぼっちゃんが右派政治家への道を歩み始まったのは議員としての同期のせいじゃないかという疑いもかけることができるようで、いくら今の右派政治家としてのアベがきらいだからといって、生まれや育ちまで空虚だのなんだのいわんでいいだろうにと思うが:

 4ページ目

安倍晋三の歴史認識は、この野党時代に歴史・検討委員会に参加する過程で構成されていったと見ていいだろう。晋三の発言が記録されているのは、1994年4月21日に開催された第9回委員会のもので、天皇陛下が真珠湾攻撃の慰霊施設・アリゾナ記念館での献花を予定していることへの不満を述べている。そして天皇陛下の行動が、細川首相の「侵略発言」からの「一連の流れ」の中で位置づけられているのではないかと懸念を示している。彼が急速に右派的価値観に傾斜している様子がうかがえる

本書は、安倍晋三のルーツを丹念に探り、関係者への取材を重ねることで、その思想の軽薄さを明示することに成功している。父の呪縛から解放された時、その存在に反発するようにして接近したのが右派イデオロギーだったことが明かされている

しかし問題は、そんな「悲しいまでに凡庸」な人物が、長年にわたって日本政治の頂点に君臨し、この国の姿を変容させているという現実である

 あー。なんというか。
 そう言われるまでに基本的に凡庸な人であればこそ、周囲の状況に流されるままにこうなっちゃっているという仮説があるべきだろう。
 強烈な右派イデオロギーに凝り固まっていれば、彼は改憲のためにもっと力を尽くしたはずだろう、と思えはしないだろうか。
 もしはっきりした右翼なら、せめてもっと自衛隊の地位を―などと思えはしないだろうか。
 右派政治家としても、なんつーか、軸がぶれてるといえないだろうか。

 じゃあ、そんなブレブレ凡庸政治家をブレさせる主要なパワーとは?
 トランプとはいえない。トランプはわりと最近の現象だ。
 アメリカ合衆国か? そうともいえない。自衛隊の強化云々はそれなりに息の長い要求ではあった。
 ならば、いま、安倍政権の頃でこそ、アメリカ合衆国をして日本・自衛隊との連携を強化したいと思わせる要素が発してきたのだということになる。

 ―そうして、そこまでの強力な実体=中華人民共和国に言及しない・できない一群の人々がいるようで、これが安倍政権を維持させ続ける奇妙な動因であり続けているわけだろう。

 これを揶揄していわく、「左翼は安倍応援団」。
 思うに、こーした”ゆとり政治家”を超越するしっかとしたひとが出てくれば、安倍政権支持率はそこそこさくっと落ちることになる。



 あとなあ、「悲しいまでに凡庸」だから職に不適格、と言いたいらしいが、そうまで有能な方々には、凡庸なふつーの人々がどのように政治を見ているかとか、お分かりになれないほどに低能なんですかという気もするんですが。

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