空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

追及と追求

2007-02-18 16:39:33 | 国語
「追及」を広辞苑第三版1590dに見れば「①後からおいつくこと。②(責任などを)どこまでも責めること」とある。追い払いする「追給」,後を追いかけ求める「追求」,尋ね究める「追究」乃至「追窮」,事の済んだ後に咎める「追咎」と同音。

「追及」,「後からおいつくこと」の例は,例えば:

 最高の仁者とは仁の境地に達し安心している者のことを言い,次に位する知者とは仁の長所を知ってそれに追及したいと工夫する者のことを言う。(宮崎市定『現代語訳 論語』岩波現代文庫,57頁)

「責任を追及する」などはほとんど慣用表現のように用いられているようである。
「どこまでも責める」の例は:

 ヒムラーは私に,国家行政に服従しない党大管区指導者たちの責任を追及することを約束していた。(品田訳,シュペーア『第三帝国の神殿にて』下巻115頁)
 一方,不合理を追及する知性派の抵抗運動は…(ヘーネ『SSの歴史』下巻348頁)

 以下の例の場合,「責める」意味で「追及」の方が相応しいかと思われる:

「いや」隊長はおだやかに「しかしわたしに会ってもらった方が得だぞ。もし,大使殿が,市の総督に,デレマー・レドロとのかかわりを追求されたくなければな」(井辻朱美訳「<固定>されたもの」『魔法都市ライアヴェック2 緑の猫』121頁)

 ちなみに該当箇所の原文は:... to inquire about his dealings with Deremer Ledoroである。個人的な関係を第三者に追い求められても困る。三角関係だろうか。
「追求」の例としては,例えば:

 また私は,核分裂を追求することによって,私たちの誰もが,深い意味でそこから多くのものを学び取ったとは感じていません。(オッペンハイマー『原子力は誰のものか』美作・矢島訳,中公文庫,10頁)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« レグルスと活字の魔力 | トップ | 総統のワイン »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国語」カテゴリの最新記事