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アコースティックの優位性

2004-10-01 21:31:47 | 音楽一般
ズーッと音楽を聴いてきて、ある一つの結論めいたものというか・・・・・アコースティックとエレクトリックを比較した時に、エレクトリックでは遥かに及ばない要素がアコースティックには確実に存在していると僕は思うようになったのね。
エレクトリックはアコースティックには及ばない。
で、今までその「及ばない要素」ってのが一体なんなのか、ハッキリと解らなかったんだよね。
優れているか劣っているかではなくて、要するに好みの問題なのかと思ったこともあったんだけど、そうじゃないんだって事が、色々な人の発言を聞いたり実際に音楽をナマで聴く機会が増えていくにつれて、ここ最近ハッキリと解ってきた。
やっぱりこれは優劣の問題。アコースティックの方が確実に優れてるよ。

友人のピアニストと話していて「なぜエレクトリックの音は平板に感じるんだろう?」という質問をぶつけた時に、「音が出力されてから聴衆の耳に届くまでの環境による影響を除外してみても、電気的に作られた音を用いる楽器は出てくる音がいつも同じ波形になる。対してアコースティックの楽器は、その楽器が置かれている場所の環境や演奏者の微細なコンディションによって常に波形が変わってくる」って答えが返ってきた。
「それは演奏者の弾き方だけでなく、湿度だったり、打鍵する手の質量や爪の長さだったり、極端に言えば弾いている人の服装によっても違う。演奏者によるコントロールに、ある程度の決められた反応を返してくるのがエレクトリック。より繊細に細部まで反応してくれるのがアコースティック。エレクトリックは臨場感という点でアコースティックには遥かに及ばないし、出せる音のニュアンスの幅も確実にアコースティックの方が広い。これはピアノだけじゃなくて、どんな楽器にも言える事だと思う。例えそれがギターやベースのような弦楽器であってもね」だって。
これを聴いて「さすが」と思った。音楽を生業にしている人は常に音楽のことを考えているんだなと。
エレクトリックに対するアコースティックの優位性って「臨場感」だったんだ。

・「アコースティックもエレクトリックも、自分の中では特別に区別しているわけではなく、方法論のひとつに過ぎない」
・「アコースティックのピアノはやっぱりシンセサイザーが出せる音より優れている。やってみてね、アコースティックの音には間違いなくエレクトリックでは届かない領域がある」
・「アコースティックは線で描いた絵画、エレクトリックは例えて言えば点描画なんだ。線画も点描画も離れて見れば同じだけれども、近づくと全然違う。線で描いた絵はどんなに近づいても絵だけれど、点で描いた絵は近づいたらただの点だよ」
・「ただし、エレクトリックもまたやるよ」
このいくつかの発言は、Herbie Hancock(ハービー・ハンコック、p)があるインタビューで話していた事で、僕は記憶を頼りに引用しているので細部は違っているかもしれないけれど、内容は概ねこんな感じ。
ああ、友人のピアニストと同じ事を言ってるんだなぁと。
Herbieくらいのアーティストになると音に対する感性は半端じゃない。
それでも、アコースティックの優位性を認識しつつも、「エレクトリックもまたやるよ」と言っているあたりがHerbieの才能の幅広さなんでしょうね。

アコースティックって「電気的な処理を加えていない」って事だよね。逆にエレクトリックは「電気的な処理を加えている」って事だ。
電気的な処理って色々あるよね。
1、音を増幅させる。
2、元の楽器の音色を変える。
3、始めから電気的に作られた音を出力する。
大まかにはこの3つかな。
例えばライブハウスやコンサートホールでの演奏で、演奏者は大抵はモニターを通してミキサー側が調整した自分の音を聴きながら演奏する事が多い。
聴衆側にはこれもまた調整された別個の音がスピーカーから出力されてる。(これは上記の1ね)
それぞれが別々に増幅された音を聴いてるわけだ。
これに演奏者側のエフェクトだったりミキサー側でかける音響効果が加わってきて(これは2)、各々が聴く音色が「作られる」。
さらにはシンセやエレキギターなんかの、もとからエレキな楽器が用いられてたりして(これは3か)・・・・・。
こういった電気的処理っていうのは、アコースティック思考で音作りがなされているはずのクラシックのコンサートでも、まったくないということはありえない。必ずマイクで音ひろってるもんね。
これがCDやなんかのメディアに記録された音源となると、録音の時点で上記のような処理が加わるのに加えて、録音した音にミキシング、マスタリングの時点でさらに手が加わって、音はさらに調整される。
何が言いたいかというと「完全なアコースティックというのは、現代の音楽シーンではありえないんじゃないか」って事ね。
もっと言っちゃうと、こういった電気的な処理が施される割合が多いほど「音の純度」は下がっていくのではないかという事。

もちろん、電気的な処理を施すのは音の純度を下げてでも余りある利点があるからなんだろうけどね。
エレキじゃないと出せない音色があったり、音響効果を意図して効果的に用いたり、大音量の演奏を可能にしたりとか、ね。
だから、Herbieが言っているように「エレクトリックは方法論」だ。
必要がないのであればアコースティックに越した事はないと思う。

贅沢な、というか独り善がりな言葉かもしれないんだけど、できうる限り純度の高い音を聴いていたいですね。

本日の安眠盤、Chick Corea(チック・コリア、p)の「Trio Music, Live In Europe」
ではでは。

2 コメント

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Unknown (ヨックタイ)
2004-10-02 00:41:00
コンサートホールなんかでクラシック・ギターを演奏するとき、独奏や小編成の演奏ではマイクを用います。当たり前なのですが、アタックと音が電気を介している分遅れて聞こえる(更に後ろから聞こえる)んですね。それが気持ち悪いし、すごくやりにくいです。
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クラシックでは (TARO)
2004-10-02 10:00:51
後ろから聴こえるということは、クラシックではモニター使わないんですね。

オーケストラなんかだと中央で宙吊りになったマイクが音拾ったりしてますよね。



この前ふとしたきっかけで、女子十二楽坊の武道館コンサートの模様をチランと目にしたんですよ。

ある曲のテーマ部分で、バックキングに全員が揃って遅れていくんですね。所謂モタりですか。

1人が遅れているというわけではなく、フロントの二胡が全員ソロって遅れてく(笑)。

あれは音の出力とモニターから帰ってくるタイムラグだったんでしょうね。

「危ない!」って思ったんですが、Bメロでピタッと合って建てなおしたのでホッとしました。

ハラハラドキドキな演奏ですね(笑)。
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