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ボサノバってなんなんだ?

2008-10-29 00:59:02 | 音楽一般
さて、ずいぶんと間が空いてしまいましたね。
もう最後の投稿をしてから何ヶ月経つのだろうか(苦笑)
今でもね、毎日20人チョイの方がここを訪れてくれているというのは、ちょっと驚異的な事だなぁと・・・・・有り難いことです。
このブログはね、なくなりません。
なぜなら、僕にとってここが大切な場所だからです。
僕が、大好きな音楽について、感じたこと、言いたいこと、思いの丈のすべてを言い尽くしているのが、この場所だからです。
そして、音楽を好きな、様々な知己と、ある時はお互いに共感し合い、ある時は胸倉を掴まんばかりに口角泡を飛ばし、交誼を結んできた、とっても大事な場所だからです。
だからここは、たとえ何年僕の書き込みがなくても、僕が音楽を好きでいる限り、なくなりません。
んで、約束もしてしまったことだし、ボサノバ史感、そしてGetz / Gilbertoについて、ちょこっと書くことにするか。

ボサノバってなんだろうね。
音楽のジャンルを語るときに常についてまわる問い。ジャズってなんだろう?、ロックってなんだろう?、ブルースってなんだろう?。
それらとおんなじ問いだよねこれは。
音楽のジャンルをあらわす時、いくつかの傾向があったりするもので、例えばそれはメディアによって括られたムーブメントを表す言葉だったり、ある民族固有の演奏スタイルを指す言葉だったり、純粋な演奏法を指す言葉だったりするんだけど・・・・・結局ね、その最終的な答えは、それらの特徴を総合して、最終的な「潮流」としての、その総体を指す言葉なんだという結論にしか行き着かなかったりする。
んじゃ、ボサノバの特徴ってなんだろう。
以前にも書いたけど、最大の特徴は、そのシンコペートされたリズムにあると思う。そしてウエストコースト・ジャズのボイシングに影響を受けたクールなコード進行と、感情を迸らせない抑制された歌唱法。
んで、それらの各要素のルーツが、それぞれどこにあるかということを詳らかにしていくことで、ボサノバって音楽の正体は明確になっていくんだと思うんだ。

ボサのリズム、その原型は、これはもう当たり前だけど、サンバにある。
サンバのリズムは基本的にスルドという大太鼓がダーンドーンダーンドーンと2ビートを鳴らしてて、タンボリンなんかがシャカシャカシャカシャカと16をキープする。で、同じくタンボリンやアゴゴ、ホイッスルなど高音担当の楽器が8と16が複雑にシンコペートされたパターンをポリリズミックにキープして、全体として16なんだけど、不規則な躍動感のあるビートに聴こえてくる。それらの複雑なポリリズムのそれぞれバラバラだったイントネーションが、数小節毎にバチッと合ってジャキッ!とブレイクしたりする。そこら辺にサンバの楽しさがあるよね。
ドラムスでこれを叩くときは、シンバルが2ビートをキープ。バスドラが「ドッツド、ドッツド、ドッツド、ドッツド」みたいな感じで、リムショットで「タッタッタタッタッタッタッタタッ」みたいな感じになる。
で、ボサギターってのは、サンバから2ビートと16ビートを差っ引いて、サンバの高音担当のパーカッションの不規則なリズムを刻んでるわけだね。いわゆるバチーダというギター奏法。
この原型を創ったのは誰なんだっちゅうと、そもそもこれはギターの奏法であるからして、Laurindo Almeida(ローリンド・アルメイダ、)、Garoto(ガロート)とか、Baden Powell(バーデン・パウエル)といった、50年代にブラジルでギターの巨匠とされていた人たち辺りということになるのでしょう。
でね、サンバってのはどっちかというと、ってよか極端にリズム中心の音楽で、コードだのメロディだのってのはないに等しいでしょ。でもボサノバってのは洗練されたメロディとコード進行が大いにものを言っている音楽であって、その旋律と響きにおいてサンバとは一線を画してる。んじゃボサノバの成立に関してリズム以外の側面に大きく影響を与えたブラジル音楽はなにかっていうと、それはショーロとサンバカンソンね。
ショーロってのはヨーロッパから伝わった歌謡音楽が元になっていて、ギターやアコーディオン、小型のギター(cavaquinho、なんて読むかわからん)なんかを使って、躍動感のある演奏を繰り広げる・・・らしい(現存する音源が少ないので、僕ぁ聴いたことがない)。
サンバカンソンってのは、MPB(ムジカ・ポプラ・ブラジレイロ、つまりブラジリアン・ポピュラー・ミュージックの略)以前のブラジルの大衆歌謡で、サンバをスローテンポにして、所謂「恋歌」を朗々と歌い上げるような音楽。
ボサノバのレパートリーは、メロディに関してこれらの歌謡音楽の影響が大きくあったって事は間違いないらしいね。
あと、ボサノバの歌唱法に顕著に見られる「抑制」ね。ノンビブラート、声量を抑えてダイナミクスの振幅が極端に小さい、とか。
これはなにも歌ものに限ったことではなく、ボサの演奏全般に言えることだと思う。
ドラムはシンバルやスネアを強打しない。ピアノは単音で、静かな水面に雫を落としていくかのようにポツリポツリと最小限の音だけを出す。
僕はあんまブラジル音楽詳しくないけど、こういうセンスはあんましそれまでのブラジル音楽にはないように感じる。
これは明らかに白人のセンスだよね。
こういう、グッと抑えて抑えて、あくまでも涼しげにクールにやってくってのは、どこから来たスタイルなのかよく分かんないんだけど、物の本ではやっぱウエストコーストの影響とか、中でもChet Baker(チェット・ベイカー、to、vo)やらAnita O'day(アニタ・オデイ、vo)なんかの白人ボーカルの影響があるんじゃないかーなんて書いてあったりする。
この「抑えて抑えて~」のスタイルをいっちゃん突き詰めたのが、Joao Gilberto(ジョアン・ジルベルト、vo、g)なわけだね。ギター1本の弾き語りで延々と呟くように歌っちゃうんだから(笑)。

一般に平均的なボサノバのイメージは、大体こんなところだと思う。
Tom Jobim(トム・ジョビン、p、g、vo、com、arr)、Joao Gilberto、Tamba Trio(タンバ・トリオ)、Roberto Menescal(ホベルト・メネスカル、g、vo)なんかの、ボサノバの草分けには、大抵共通しているスタイルだよね。
つまり、Joao Gilbertoがボサノバの創始者って言われてるのは、あんまし的を得ていないんじゃないかな。
Joao Gilbertoがボサノバの象徴みたいに言われるようになったのは、ボサノバムーブメントの潮流に乗って祀り上げられたという側面と、あの弾き語りのスタイルを貫き通して、ある意味虚無僧的な孤高のイメージがあったこと、これは本人の意図なのかどーなのかわからないけどね。あとは、「Getz / Gilberto」のヒットで、世界中に「これがボサノバというものだ!」みたいに大々的に打ち出されてしまったという事があると思う。
ただね、んじゃ「ボサノバのアーティスト」と括られている人たちが、どれだけ上記のような演奏スタイルに当てはまるのかって考えると、うーん、なんだか締まらないんだよ。Joyce(ジョイス、vo、g)やDjavan(ジャヴァン、vo、g)はボサなの?、それともBPM?。Elis Regina(エリス・レジーナ、vo)は感情むき出しで歌うけど、あれはボサノバ?。Sergio Mendes(セルジオ・メンデス、p)は?、あれはもうサンバだよね。
「演奏スタイルとしてのボサノバ」って、思ったより実態がつかめなかったりするんだよね。
これは現代のジャズだってそーなんだよ。
ジャズっていうスタイルはもうないに等しい。イコールジャズってのは、もうインプロヴィゼーションだけだったりする。
音楽でおよそ「ジャンル」と括られてるものは全部そうだったりするんだけど、ジャズに比べてボサがあまりにも実態がないように感じられるのは、これはもうボサノバの歴史の短さ(50年くらい?、ジャズの半分だね)に尽きるんだろうね。

とまあ、こんなところが僕の持っているボサ史観、ってかボサのイメージだね。
んで、ここから以前にも書いた「Getz / Gilberto」についてちょっと書こうかと思ってたんだけど、思いのほか長くなっちゃったんで、次回に譲ります。
近いうちに書けると思います。

ではでは~。


3 コメント

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WHY! (penkou)
2008-11-09 23:42:31
tatoさん
お元気そうで!心配はしていないのですが、やはり時々は書き連ねて欲しい。
ボサ論。まあそうなんですけど、何故つぶやくように詠う(唄う)のでしょうかね?とても気になっています。
次回を是非早めに(笑)期待してます。
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はじめまして。 (ぼくおおくぼ)
2009-04-14 17:11:10
初めてこのブログを読ませて頂き、いくつかの記事を拝見させていただきました。
当方、ジャズトロンボーン奏者を目指して修練している身でございます。


自分が音楽を表現しようとする上で最も大事にしたい部分を、感覚的かつ、論理的裏付けをとられた形で文章化されていて、とても勉強になりました。

音楽を志すものこそ、こういった音楽を自分の言葉によって体系的に表す作業を全員するべきだな、といつも思います。
言葉で語れる部分には言葉以外のもので太刀打ちできるわけもなく、聴覚のみによる、ある意味"欠落した"ジャンルである"音楽"のフィールドを開拓するには、常にこういった思想、表現の最前線にいるべきですよね。

素晴らしい文章をありがとうございます。
これからも是非拝見させて頂きます。
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Unknown (北野)
2010-06-26 18:08:23
なるほど
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