感情を秘めるという事

昨日またテレビで美空ひばりの特集みたいなのをやってたね。
美空ひばりの事に関しては以前にも書いた事があったけど、やっぱり音楽愛好者としてはあの人をリスペクトする部分が凄くあるのね。
やっぱ上手いよね。
音程から発声、音色の幅の広さやステージでの立ち振る舞いまで、日本の他のどんな歌手と比べてもピカイチだ。あんな天才的な歌い手が日本にいたんだなぁって思う。
だけど個人的にはあんまり好みじゃないんだよね。アクが強いというか、平たく言うと品がなく感じるのね。気持ちをストレートに出しすぎるというか・・・・・。

感情を秘めるっていう事。
これがないと音楽は単調になる。いや、これは単純に好みの問題なんだけどね・・・・・。
例えば、ある人に対して「好き」っていう内容の曲があったとするじゃない。それをね「好き好き好き好きーーーっ！！！」って言っちゃう表現は、僕はダメなのよ。
ヒネリがないってのかな・・・・・それじゃ半分も伝わらないように思う。「好き好き好き好きーーーっ！！！」って言いたいのを我慢して言わない。もしくは言いたくても言えない。
感情ってさ、抑えれば抑えるほど想いが深くなるもんでしょ。
気持ちはたくさんあるんだけどそれを出さないもどかしさ、出せないもどかしさ。「ウワーーーッ！！！」って、思いっきり外に出しちゃったらどんなにか楽だろうってくらい、両手に抱えきらないくらいの思いと想い。
気持ちは募って募って深くなる。
募り募って、隠し切れずに端々から覗いてしまって、やがてそれが自然にあふれ出てくる。滲み出てくるって言った方が合ってるかな・・・・・。
これは好いた惚れたの恋愛ものだけでなくね、表現って何でもそう。
伝えたい気持ちを開けっぴろげに「ドカーーーーン！！！」ってぶつけちゃうのは、結構感じるところは単純で淡白な表現になってしまうように思う。
なんつうかな・・・・・わびさびっての？。これは僕の音楽的な嗜好が骨の隋まで日本人という事なんだろうか？（笑）。
わかります？。
「好きーーーっ！！！」とか「ウワーーーッ！！！」とか「ドカーーーーン！！！」とかって・・・・・こんなんじゃわかんないかな？（笑）。
だからね、やっぱり表現って最初から「ドカーーーーン！！！」じゃダメなのよ。「秘めて秘めて秘めて」自然にあふれ出てくるタイミングを待たないとね。

ジャズでいえば、４０年代のバッパーにはこの「ドカーン」タイプが圧倒的に多いよね。なんも考えずに能天気に一発かましてやろうってタイプ。その場その場のインプロビゼーションで一瞬にしてアツーく燃え上がる・・・・・バップは閃きの音楽なんだね。
でもバッパーでも「秘めて秘めて秘めて」ってタイプもいるよ。
すぐに出てくるのがMal Waldron(マル・ウォルドロン、p)だったり当時のMiles Davis(マイルス・デイヴィス、tp)だったりとか・・・・・そのちょっと先の時代だとArt Pepper(アート・ペッパー、as,ts)だったりとかね。
ジャズもね、時代が進むにつれて、ドアタマから「ドカーーーン」とは行かないバランス感覚がドンドン培われてきて、瞬間の閃きであるアドリブと、気持ちを表現する事においての秩序というかね、そういったものとのバランスが取れてきているように思う。
過剰なフレージングを排して、不要なところはあっさりとしたロングトーンで流す。アドリブもいきなりアクセル全開にはしない。即興であっても頭から終わりまでの構成をきちんと作ってみせる、そして「ドカーン！！！」って行くところは行く。
僕が好きなアーティストとか音楽って、この「秘めて秘めて」と「ドカーン」のバランスが取れているものに多いんだって、このごろわかってきた。
表現にするにあたっての必然性と、その必然性を壊さないバランス感覚。これは大事だよ。
現在のシーンの超大御所、Chick Corea(チック・コリア、p)、Wynton Marsalis(ウイントン・マルサリス、tp)、Pat Metheny(パット・メセニー、g)、Michael Brecker(マイケル・ブレッカー、ts)・・・・・名前を挙げるといかにも月並みだけど、やっぱり彼らは大御所といわれるだけあって、バランス感覚がズバ抜けてるんだよ。音楽のバランスがきちんと取れてる。
大御所が大御所たる所以はここにある。ただ上手いだけじゃないんだね。

はい、またとりとめなく一貫性のない文章を書いてしまいました。
しょうがないじゃん、語るの好きなんだもん（笑）。
ではではーん。