京阪電鉄「膳所本町駅」から緑色の車両に乗った私はぼんやりと物思いに耽っていた。
人の道から大きく外れた結果、民衆の面前で虫けらの如く仕置きされた罪人は死の間際に何を言い残したのであろうか。己のような蛆を生み出す政(まつりごと)を非難し強がってみせたのか、あるいは悪行の数々を後悔して母の名を叫んだのか、興味は尽きない。
悪事に手を染める連中は幼い頃から不幸な境遇に育った者が多い。残念なことに人間はこの世に生を受けた瞬間から既に不平等である。平等なものがあるとすれば、万人に死が訪れるという一点のみだ。
恨みや妬みの感情を抱き続けた罪人は身体が無くなった後も成仏できずに刑場跡を彷徨っているのかも知れない。旧大林村を完全に離れたところで、初田餅菓子店で買った「みかさ」を取り出し頬張った。甘いはずのどら焼きが噛んでいるうちに複雑な味に変わり舌を刺した。