私はKABAに夕食をキャンセルする旨を伝えた。彼女は不満そうな顔つきでこう言った。
「日本から連絡が入ってましたね。それは構いませんよ。ごゆっくり、どうぞ」
言われなくてもそうするつもりだ。大きなホテルに着いた時には既に暗くなっていた。ロビーで私を待つ旧友2人に気づき軽く会釈した。急いでチェックインして部屋に荷物を置く。無駄に広い部屋があてがわれていた。
ここからカモにされるツアー客とは別行動になった。友人らは台北のブルジョワ階級が利用するようなレストランに連れて行ってくれた。再会を祝して紹興酒で乾杯することにした。寒かったので燗をつけてもらう。
台湾人のRさんが湯のみにカリカリの梅干を入れて紹興酒を注ぐ。12年振りに言葉を交わすRさんは非常に元気そうで安心した。わざわざ日本から別ルートでかけつけてくれたTさんの厚意が何より嬉しかった。
まずはカラスミをつまみにして酒を酌み交わし、昔話に花が咲いたのである。甘い梅風味の酒が旅の疲れを癒してくれた。